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SAVERS ―絶望の怪物と戦って助ける少年少女たち―  作者: 春坂 雪翔


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第十七話【明日香の告白】(四)

少し短いかもしれませんが、十七話はこれが最後です。

明日から十八話に入ります。

 DSI東京本部の裏口に、一台の車が止まる。

 運転していた白髪混じりの初老の男性が先に降り後部座席のドアを開け、先に降りた杏に続いて明日香は軽く会釈をしながら降りた。


「白崎さん、少々お待ちを」


 本部に入ろうとした明日香を男性が呼び止める。

 首を傾げて立ち止まった明日香の襟元に男性が手を伸ばした。


「失礼、糸くずが付いてたもので」

「あ、いえ……ありがとうございます」


 明日香は穏やかに微笑む男性に短くお礼を言うと、杏の後に続いて本部に入って行った。

 たった二週間程しか離れてなかったのに、随分と懐かしい気がする。少しばかり緊張の面持ちで明日香は杏に連れられて遅い足取りで裏口から建物内に入ると、正面から章吾が小走りでこちらに駆け寄ってくる。

 その後ろから追いかけてくるように誠司達も走ってきた。


「明日香っ!」

「明日香ちゃん!」


 喜びと不安を混ぜ合わせたような表情で出迎える誠司達を見て、明日香はバツが悪そうに視線を落とす。しかしそれも一瞬の事で、明日香はいつも通りの表情で顔を上げた。


「心配かけてごめんなさい。私はもう大丈──」


 その言葉は、最後まで続かなかった。

 顔を上げた明日香の表情が僅かに固まり、その視線の先を見た誠司達が、全員眉をひそめて硬い表情をする。


 かつかつと複数の革靴の足音が、無機質な廊下に響く。

 杏が舌打ちをしながら「やっぱり流されたか……」と苦汁を飲んだ様な顔で睨む。


 ピシッと整えられたスーツを身にまとった男性が複数人こちらに向かってきて、その中の五十代くらいの一人の男が、明日香の前で立ち止まった。

 

「白崎明日香。君に聞きたいことがある」


 明日香の肩が僅かに跳ねる。

 誠司が明日香を庇うように男の前に立った。


「ちょっとしつこいんじゃねえか? あんたらが明日香を勝手に連れて行って何日経ったと思ってんだ」

「どの口が言って……まあいい。言わなくても分かってるとは思うが、予定外の事が起きてね。私達は直接本人から話を聞いてないんだ」


 男は杏の方を恨めしそうに睨むが、気付いてないのか杏は涼しい顔をして反応する事はなかった。

 

「何の事を言ってるのか分かりかねますが、中央の人は他にもいるでしょう。話を聞いた人から聞けば良いじゃないですか」

「だよなあ。その方が二度手間にならずに済むと思うんだけど。違いますか、中央機関さん」

「せや。そんな怖い顔で一人の女の子に詰め寄って、おっちゃんらおもんないで」


 美琴と和真、空美も誠司に加勢する。奏は無言で傍観してる様に見えるが、その視線は明らかに敵意を向けていた。中央の一人の男のこめかみに青筋が走って空美を睨みつけるが、それ以外は気付いてないのか誰も気にとめなかった。

 明日香はその様子を見ながら、別の事で戸惑っていた。


 誠司達が中央の人達を敵視するのは理解出来る。

 しかしその人達は杏の身内だと自分は知ってるから、そこまで敵意を向ける対象では無い。


 なのに何故、自分はこの人達を少し怖いと思っているのだろう。身内であるはずの杏がいつもの様に対応しない所を見るに、杏も強く出れない立場の人なのかもしれない。


 だが埼玉支部にいた中央の人達には、そこまで恐怖心を感じる事は無かった。この人達も同じはずで、直接的な関わりは無かったが今まで何度か章吾が相手にしてるのを見ていて初対面では無いし、その時に威圧感を感じても恐怖心を抱いたことは無い。


 初めての感覚に明日香は不安を覚え始めた時、中央の男が顔色を変えずに再び口を開いた。


「第三者から聞いて齟齬があるといけないだろう。本人に直接聞くのが早い」

「まだ言ってんのか。いちいちそんなの確認しなくても明日香は」


 誠司の言葉を最後まで聞かず、明日香は誠司の肩を掴む。相変わらず少しばかりの恐怖心を抱いてはいたが、誠司がそばに居るならそこまで怖くない。


「いい、いいよ誠司、ありがとう。大丈夫だから」

 

 納得がいかず訝しむ誠司を少しよけ、明日香は男の前に出た。


「聞きたいこととは、何でしょうか?」

「君がロストという怪物を生み出してるのかそうでないのかだ。イエスかノーで答えられるだろう」


 冷たくそう言い放つ男の言葉に、章吾が僅かに前に出ようと身体を動かすが、明日香は少しだけ笑みを浮かべて首を横に振る。

 そして静かに口を開いた。


「直接ロストを生み出したという証拠はありませんが、私は……」


 そこまで言って少しだけ間を置き、目の前の男の目を真っ直ぐ見て続きを話す。

 

「ロストを生み出す、ロストファクターを創った黒幕の、アリダを生み出した……ロストファクターです」


 その言葉に、杏と明日香以外が息を呑む。

 長年の敵を見つけたような冷たい視線で、男が明日香を睨んでいた。

どうして中央機関が明日香をここまで目の敵にしてるのかのヒントとしては、セイバー全員、セイバーになるって決めた時主に身内からいい顔をされていません(明日香だけ例外)

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