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SAVERS ―絶望の怪物と戦って助ける少年少女たち―  作者: 春坂 雪翔


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第四十話【君を待ちつつ 秋の音聞く】(一)

 新学期の朝だというのに、どんよりと薄暗い雲が空全体に広がり小雨が降っていた。下の階から聞こえる志保のモーニングコールを聞きながら身支度を整えた誠司が下に降りると、沙夜がダイニングテーブルで朝ごはんを食べていた。


「誠司兄ちゃんおはよ!」

「ああおはよ……早いな、沙夜」


 時刻は六時半。小学校の登校時間はまだだいぶ先である。しかし沙夜の身支度はすでに整っており持ち物も用意されていて、あとは歯磨きしたらすぐに出られるようになっていた。


「ここからだと小学校少し遠いから早めに出るつもりだったんだけど、雨が降ってるからおじちゃんが車で送ってくれるって」

「そっか、良かったな」


 トーストをかじりながら答える沙夜を横目に、誠司も自分の席に座る。自身の前に置かれた皿の上に乗ってるトーストにマーガリンを塗りながらテレビを見ると、朝のワイドショーが付いていた。


『続いてのニュースです。昨日夕方、神奈川県添川市にある早瀬キャンプ場から少し離れた場所に止められていた乗用車の中から、男女四人の遺体が見つかりました。警察によりますと、この車を見つけたのはキャンプ場のスタッフで、利用客からの通報を受けて付近を確認したところ発見したということです』


 ニュースキャスターの報道と共に、報道ヘリから映したであろう山間部の映像が流れる。朝から不穏なニュースだなと思いつつも誠司はテレビから目が離せなかった。


『車内からは練炭とみられる物が見つかっていることから、警察は無理心中の可能性もあるとみて、当時の状況を詳しく調べています』

「……誠司兄ちゃん、むりしんじゅうってなーに?」


 同じようにニュースを見ていた沙夜が誠司に聞く。

 どのように説明すれば良いかと誠司が眉を寄せて思案していると、キッチンから出てきた章吾がマグカップを片手にテーブルに着きながら代わりに答えた。


「無理心中って言うのはね、すごく苦しい気持ちになった大人が、自分だけじゃなくて、大事な人も一緒に連れて行こうとしてしまう、悲しい出来事のことだよ」

「連れてくって、一緒に死ぬってこと?」

「……うん、多分今回の事件は家族かな……その人の家族は『一緒に行きたい』なんて思っていなかったと思うんだ。だからとても悲しいことで、やったら駄目なことなんだよ」


 章吾の説明を聞きながら、沙夜は黙ってテレビ画面を見ていた。所持品等から身元が分かったのか、テロップで大人の男女の名前の下に『カナタ(五)、ハルカ(五)』と書かれている。名前の隣にある数字は、恐らく年齢だろうと推測出来た。


「……可哀想だね。だって、本当は生きたかったのに、大人の都合で生きられなかったんでしょ?」


 テレビ画面から目を離さずに、沙夜が静かに、憐れむようにそう呟いた。感傷に浸る間もなく、朝のワイドショーは次のニュースの話題に切り替わる。

 沙夜がトーストの最後の一口を食べて牛乳を飲んだのを見計らって、章吾がマグカップのコーヒーを飲み干しながら立ち上がった。


「沙夜、ちょっと早いけど準備が出来たならもう行くかい? 久しぶりの学校だろう」

「うん、じゃあ沙夜歯磨きしてくるからちょっと待ってて!」


 ガタンと椅子から降りてぱたぱたと洗面所に行く沙夜を見送りながら、誠司は沙夜の言葉を思い出していた。


「……そうだよな。死にたくて死ぬやつなんて、いないもんな」


 そう呟いて、先日のシェイド達との戦いを思い出す。

 消える直前、リリカは生きたかったと言っていた。

 彼女の場合は運の悪い事故だったから、そう思うのも当たり前かもしれない。

 

 しかしディオの場合はどうだろう。

 傍から見れば自ら死を選んだ様に見えるが、その本心は恐らく、生きたいという気持ちが隠れていたのではないか。


 物思いにふけりながら食べるトーストは、志保お手製の手作りした食パンなのにも関わらず、あまり味がしなかった。



* * *



 朝の予鈴が教室に響き渡り、担任の教師が入ってくる。

 久しぶりの学校だからなのかそれで教室が静かにはならず、担任がぐるりと教室を見渡してからパンパンと手を叩いた。


「休み明けだからって気を抜くなよー。えーっと欠席は……白崎以外全員揃ってるなー」


 軽く点呼を取った担任教師がホームルームを始める。

 今日の段取りの説明を聞きながら、癒月は明日香の席をぼうっと眺めていた。


 閉鎖病院での任務が終わる時、明日香はDSIの職員が呼んだ救急車に運ばれてすぐにいなくなってしまった。

 詳しい事は聞かされておらず明日香の意識が戻らないと連絡が来て以降、夏歩からも、誠司からも連絡は来ていない。

 明日香が今どんな状態なのか癒月は知らなかった。


「……づき……癒月ってば!」


 不意に癒月の肩が勢いよく叩かれる。

 驚いた癒月が顔をあげると、友人が癒月の顔を覗き込んでいた。


「大丈夫? 全校集会だから早く行こ」

「……あ、ああうん、ごめん」


 癒月が教室を見渡すと、いつの間にか人はまばらになっていた。殆どが体育館に移動したらしい。

 苦笑いしながら癒月は席を立ち、友人と共に体育館に向かった。


「白崎さん、どうしたんだろうね。癒月何か聞いてないの?」

「うん……夏休み半ばから、連絡付かないんだよね」


 嘘は言ってないが、友人にセイバーの事は話せない。

 眉を寄せる癒月を横目に、友人はそっかーと当たり障りない反応で返す。


「早く学校来るといいね。もうすぐ修学旅行の班決めあるし」

「え?」

「だって癒月、白崎さんと同じ班になりたいんじゃないの?」


 友人がきょとんとした顔で癒月の顔を覗き込む。

 明日香と友達なのは癒月だけで、友人にとっての明日香はただ同じクラスの同級生という関係だ。

 恐らく自由に組むことになる修学旅行の班決めに、友人から明日香を入れる前提で話を振られるのは意外だった。


「……いいの?」

「いいのっていうか、反対した所で癒月は頑固だから聞かないでしょ。私は白崎さんの事まだよく知らないけど、癒月と仲良いなら良い人って事は分かるし」


 あっけらかんという同級生に、癒月は面食らいつつも悪い気はしなかった。

 少なくとも、明日香が来るのを待ってる人が自分以外にいる。その事が癒月にとっては何よりも嬉しかった。


(……久しぶりに誠司君に連絡取ってみるか。明日香ちゃんの事、何か進展あったかもしれないし)


 そう決めた癒月の足取りは、少しだけ軽くなった。

この事件、美琴が知ったら一日中お通夜状態になるかもしれませんね。

ワイドショーのニュース原稿はAI(Claude)で出したのを部分修正したものです。

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