このポンコツ達ぃ
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魔法都市マジルカ。
あらゆるものが魔法で賄われており、最新技術の粋を集めたらこの都市になった、といっても過言ではない。
光魔法を駆使して映像を遠隔地に送受信するテレポートビジョン、略してテレビ、水魔法を用いて衣類を自動で洗う洗濯器、氷魔法で食べ物の鮮度を保つ冷蔵壺などなど。現在の世界で当たり前のように使われている現代魔術具は全てこの地の発祥なのである。
「でぇ? まずどうするつもりなのぉ?」
「王様に話を聞く!」
取り敢えずシンプルにね!
あれ、でもここ王様とかいたんだっけ?
「マジルカは君主制を執ってないわよぉ。……簡単に言うとぉ、偉いヒトを一人立ててるんじゃなくってぇ、この都市部全員で決めてるのよぉ」
サンダラは頭に?マークを浮かべているユーミルとリリスに向けてざっくばらんな解説を付け加えた。
「ん、じゃあこの街全員の人に話を聞く!」
「何年掛かるのよぉ……」
「じゃあ僕もそこの人に何か聞いてくるね」
「私はあっちの人に当たってみるわ!」
「待ちなさぁい、このポンコツ達ぃ」
今にも飛び出して行きそうな2人の首根っこを掴んで制止するサンダラ。
「リリスも少しは落ち着きなさぁい。王様は居ないけど、ちゃんと今回の戦争に関して取り決めてる人っていうのはちゃんといるからぁ……」
なんでこんなのについてきちゃったんだろ、とサンダラは早くも後悔モードに入りつつあった。
「まず何を話すかの整理をしましょう? リリスちゃんはなにを話すつもりなのかなぁ?」
まるで子供をあやすようにリリスに問いかける。
しかしリリスは特に気にしていない様子で、
「交渉に決まってるでしょ。マジルカに代わってダマスを降伏させるから、戦争が終結しても高額な賠償を要求しないこと、それと魔法陣を無効化させた直後にすごい魔法を打ち込むの禁止!」
と言い切って見せた。
サンダラも、そしてユーミルも思っているだろう。
そして言っている私自身が一番思っている。
なんだかなぁ……。
勢いでここまで来てしまったけど、段々と心配というか不安の方が大きくなってきた。
ダマス城の魔法陣を取り除くのはいい。だがその時にマジルカがつけ上がらないように今のうちに釘を刺すという作業を行うために今、3人はマジルカまで跳んできた。
仮にダマス城を無力化したところで、マジルカがダマスに済む住民を虐殺などし始めたりしたら目も当てられなくなる。
だから事前にマジルカはどのような心持ちでいるのかという確認だ。もしも、うぉーもうダマスは絶対に許せん! みたいな気概であれば一方的にマジルカに肩入れしても、平和とよぶにはほど遠い結果になってしまうだろう。
……果たしてこんな子供じみた発想でうまくいくんだろうか。
「なるほどねぇ。まぁリリスなりにやってみなさぁい。この都市の代表に連絡をつけにいくわよぉ」
サンダラもこの作戦がうまくいくかどうか、ある程度察しているのだろう。
それでもこの恐るべき人脈と情報を駆使して私を支えてくれている。
そして何も文句を言わずに付き合ってくれているユーミルにも感謝するべきだ。
だったら。
泣き言を言うのはお門違いだ。
無茶だろうが、なんだろうが、私だけは私のお花畑の如き理想を信じてやるしかない。
あわよくばなにかしらの結果を得られれば重畳だ。
「よし、頑張ろう!」
リリスは気合を入れるため、自分に言い聞かせた。
「ここは?」
「マジルカの駐屯地のひとつねぇ」
ちゅうとんち?
……ってなに?
「戦う人が集まっている場所ってことよぉ。こんなことまで説明させないでくれるぅ?」
「いやぁ」
こちとら田舎娘なもので。
でもこの煙の集合が駐屯地?
地上であるというのに、目の前には雨雲と見間違えるほどの煙が立ち込めている。
だが、煙が晴れている部分もある。
そこは門が拵えられており、その中央に一人の制服を着た男が仁王立ちしている。恐らく兵士なのだろう。
「……ここは?」
目の前に広がる不思議な光景にリリスはもう一度説明を求めた。サンダラはそんなリリスを無視し、その番兵にツカツカと歩み寄った。
「今回の戦争に関してモノ申しにきたわぁ。サンダラ、リリス、ユーミルが会いに来てるって上に伝えなさぁい?」
口調はいつもどおりゆったりとしたもの、しかしはっきりとお前は格下であると言外に言っているような態度であった。
「……お言葉ですが、誰もお通しするなという通達がございまして……」
その門番を務めている兵士は先頭に立つサンダラ、その背後に立っているユーミルとリリスを見てぎょっとした様相を見せた。だがはっきりと拒絶してみせた。
「もう一度言うわぁ! 魔王を討伐した最終パーティのマスターシーフのサンダラ=マグスタス、かの地にて大天使の洗礼を浴したリリス=ヴァレンシア、エルフ七賢者の4位ユーミル=クレヴィンが会いにきてるのよぉ? アナタ程度が私達を止めるなんてぇおこがましいわぁ?」
今度ははっきりと分かるように、最初から相手にしていなかったかのようにサンダラは言い放った。
ちょ……そんな言い方していいの? などと思って見ているリリスであったが、自分も最近似たようなことはしたばっかりだ。
結構傲慢な態度であるが、何かと便利なのである。無理をすれば道理引っ込むというやつか。
申し訳ない、そこの兵士さん。
そんなことをリリスは思っているが、ここでへらへらしていても格好がつかないことを知っていた。
リリスは極めて真面目な表情を保っていた。
「し、失礼致しました! ……中へどうぞ」
「分かればいいのよぉ」
兵士は道を開け、頭を下げた。
その開いた道を踏ん反り帰りながら通るサンダラ。それに続くリリスとユーミル。
「あ、そうだぁ。んふぅ」
かと思えば踵を返し小走りでサンダラは戻っていった。
一体なにをするつもり? とリリスもユーミルも振り返り――、
サンダラは兵士と熱い口付けを交わしていた。
「物分りのいい坊やにサービスよぉ」
何が起きたのか、まるで分かっていなさそうな兵士にサンダラは最後に投げキッスを寄越した。
「……不潔」
「やぁねぇ。そんな目で見ないでくれるぅ? これがアタイの情報網の力よぉ?」
情報網?
「マジルカの兵隊さんとはぁ、コネクションがなかったのよねぇ。でもこれで安心ねぇ」
なるほど。
これからあそこのウブそうな兵士を篭絡して、情報を吐かせるというのか。
そうやって色々な場所に情報源を持つサンダラの事をリリスはある意味ですごいとは思っている。
それでも直感的な感想はこれに限る。
「不潔」
「いやぁん」




