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ここでネタバラシ

毎日更新が途絶えましたが、3月中は出来る限りやってみたいと思います。

「全く! なんで心配して助けに来て上げたっていうのに、そんな顔をされなきゃいけないわけぇ?」

 ごもっとも。

 本当はもっと感謝感激で、サンダラに頭を下げたっていいと生まれて初めて思ったかもしれないのに、タイミングが悪すぎた。

「でも人がおしっこをし終えたタイミングで話しかける!?」

「やだもぉ、おしっこだなんてぇ。リリスったらハレンチ」

「話を反らさないで!」

 なんでも盗賊としての技術を駆使し、人知れずこの部屋に侵入していたらしい。

 扉が開けばいくらなんでも気付くと思っていたが、そこはマスターシーフの技量をほめるべきか。

 そして部屋に入ると、私が便器で座っていたと。

 コトが終わるまでじっくり視姦した後、話しかけてきたというわけだ。

 実はもっと最初の方から気配を殺してこの部屋にいたんじゃないか、というのは考えすぎか。

 だとしたら恥ずかしすぎる。

「でも助かったんだしぃ、いいじゃない」

「まだ途中だけど」

 結局リリスは独房のような場所に閉じ込められていたことが分かった。

 白い壁に囲まれた廊下に出ると、リリスの部屋にあった同じ扉がポツリポツリと並んでいた。

 その廊下を足音を殺しながら疾走する。裸足で走るとペタペタと音がしてしまうため、サンダラが持ってきた靴下を今は履いている。

「にしてもどうして私がここにいるって分かったの?」

「んふふぅ、秘密ぅ」

 ん?

 まぁなんでもいいけど。

 でも盗聴とかされてるとしたらなんか嫌なんだけど。してないよね?

「あとここどこなの?」

 走り回っているというのに、なかなか廊下の奥に突き当たらない。それなりに広い施設だというのは分かる。

「それもぉ、秘密ぅ。でもそれはすぐに分かるわぁ」

 イタズラっぽくウインクするサンダラ。

 ……。

 イライラするのは後にしよう。

「あ、まずいかもぉ」

 リリスの一歩先を走っていたサンダラは曲がり角の手前で直前、停止した。

 勢いのまま、私だけが死角から飛び出すという間抜けなことはしない。

「……え?」

 いや、しないはずだった。

 背中を優しく、ポンと押された。

 見えない一時停止ラインをがっつりとオーバーランした私は、

「そこで何をしている!」

 ここの施設の警備員だろう。巡回していた二人組みの男にリリスの姿は晒される形になった。

「え! あ! えーと!」

 どうすればいいの!?

 というか助けに来たんじゃないの!?

 なんで身代わりにされてるのぉおおお!?

 リリスは本能で逃げる道を選んだ。

 こうなったらサンダラも巻き込んでやれ! という下心で来た道を引き返す。

 走ってどこへ行こうか、と考え――。

 サンダラが一緒に逃げていないことに気付いた。

 丁度振り返ると、警備兵が曲がり角から姿を現した頃であった。

「はぁい」

 不意をつく形で、サンダラがその2人の前に立ちふさがった。



―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・


警備員Aが あらわれた!

警備員Bが あらわれた!


しかし 敵のむれは 

おどろき とまどっている! 


サンダラの こうげき!

警備員Aに 198の ダメージ!


警備員Aの からだがしびれて

うごけなくなった!




サンダラの こうげき!

警備員Bに 207の ダメージ!


警備員Bの からだがしびれて

うごけなくなった!


警備員Bは からだがしびれて うごけない!




サンダラは にげだした!


―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・


「はぁ、アタイも歳ねぇ」

 頬に手を当て、はぁ、とため息を吐いていた。

 一体今のやりとりのどこに不満があるというのか。

 リリスから見れば、現役の頃と遜色がないように映っていたのだが。

 だが、戦闘以外ではリリスは不満が残っていた。

「ちょっと! 今私をおとりに使ったでしょ!」

「やぁねぇ。でもお陰で無傷でのりきれたでしょぉ?」

「結果論でしょ!」

「ケッカロンってなぁに? しらなぁーい」

「馬鹿女め……結果論っていうのは――」

 脱出しながら、リリスは結果論という言葉に関してサンダラに教え説いていた。

 だが、話をはぐらかされていることに気付くのはしばらく後のことである。

 馬鹿女なのはリリスの方であった。

 不法侵入、脱出のエキスパートである伝説のマスターシーフがついてのミッションである。以降は大した苦労もなく警備員をやり過ごし、誰にも見つかることなく脱出することに成功した。

「ま、ここまでくれば安心ね」

 建物から出た後、その敷地内の庭にあった井戸にもぐりこみ、地下を伝って脱走することに成功した。

 勿論、途中で鉄格子の鍵もあったが、目の前のサンドラにかかればないも同然だったようだ。

「良かった……。一応お礼を言っておくわ」

「素直じゃないわねぇ。助け甲斐もないわぁ」

「……別に」

 リリスとしては感謝していない訳ではない。

 ありがたいものだし、仲間でいてくれてよかったと心の奥底から思っている。

 それでもサンダラの顔を見るとどうしても素直になれないのである。

 これは理屈とかじゃない。冒険時代の頃からの感情だ。

 今回は確かに助けられたけど、色々と悶着を起こしていた間柄である。これだけで精算できるほど、簡単な付き合いを私達はしていないのだ。

「それにサンダラじゃなくてもユーミルが助けに来てくれたわよ」

「うぅーん、それはどうかしらぁ?」

 確かにユーミルにはサンダラ程の器用さはない。

 それでも腕力でごり押しするくらいはできるだろう。

「ここでネタバラシ。後ろ振り返ってみてぇ? あそこにリリスちゃんは閉じ込められてたのよぉ?」

 後ろ?

 …………。

 いやいや。嘘でしょ。

 …………、いやいやいや。

 頭で否定をしてみるが、内心では薄々と気づいていた。

 アレだけの施設を整えられる場所とお金があるのなんて、栄えているこの国といえどもたったひとつしかない。

 それでもこんなことをする理由がないからとその可能性を否定していた。

 それが今、目の前に答えとして突きつけられている。

 ダマス城。

 私達の最初の目的地として設定していた、その雄大な城が今、眼前に広がっていた。


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