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リリスちゃんがどんな下着穿いてるのかなーって

「あれ、どうしたんそのトマト。あんた仕事いってきたん?」

 久々に実家に帰れた気がする。

 昨日の昼にミッドベジリアでスピーチをしてから、夜はサンダラと一緒にお酒を飲んだ。

 朝目が覚めたら、何故かイスカルに居た。そこでベズリーシアと久々に再会して山賊退治をして、その山賊を引き渡しにその領地を治めているドクまで跳んだ。ドクで騎兵を相手に久々の攻撃魔法を発動させ、そして何故か軍に勧誘されるというトラブルつき。

 難なくやんわりとお断りをしてから、こうして実家に帰ってくることが出来た。

 なんだろう、すごく長い1日だった気がする。

「いや、今謝ってきたところ」

 無断で欠勤してすみませんでした、と頭を下げつつお詫びのトマトを教会の人たちに差し上げてきた。

 お酒で酔っ払って気付いたら杖を無くして別の土地にいました、なんていう言い訳を笑って受け入れてくれる優しい人たちであった。信じてくれているかは微妙。

「もう、明日はしっかりせんと駄目よ?」

「分かっとるよお母さん」

 もう、うるさいなぁ。とにかく晩御飯ができるまで部屋でゆっくり休んでおくことにしよう。

 2階に上がり自室のドアを開け――、

「やぁ」

 ドアを閉じた。

 …………。

 疲れているのか。目頭を揉んでからもう一度ドアを開く。

「お帰りリリスちゃん」

「…………どうもこんにちは……」

 私のベッドに座っていたのは、かつて冒険を供にしていた仲間、ユーミルであった。

 銀色の長髪をキザに後ろに流しており、そのかきあげた髪から尖った耳が突き出ている。

 その肌は極度に白く、端整な顔立ちをしている。

 エルフにはイケメンが多いとまことしやかに噂されているが、それは相違ないのだと目の前の男の存在が語っていた。

 だけどイケメンだと思っても生理的に受け付けない理由が隠されている。

「何やってるんデスカ……」

「ん? リリスちゃんがどんな下着穿いてるのかなーって思って」

 そしてあろうことか、私の下着をずらりと並べて、ひとつひとつ物色しているのである。

「……ぶっ飛ばしていいデスカ?」

「え? 嫌だなぁ。僕はぶっ飛ばされたくないんだけど。理由を聞いてもいいかい?」

「勝手に女の子の部屋に入って、勝手にベッドの上に座って、勝手に下着を漁っているからデス」

「そうなのかい!? それは失敬。ごめんごめん。人間界にはまだ疎くてね」

 そう言って手にしていたショーツをぽいっと手放した。

 私の下着が宙に舞い、ぺにゃんと床に落ちた。

 ……本当にコイツ殺してやろうかな。

「でもリリスちゃん、聞いてくれ。やっぱり女性の下着というものをいくら見ても、これっぽっちも、全く興奮しないんだ」

 知らん。

「でもね! 勇者ちゃんの身体だけはばっちりと目に焼きついている! 一緒に水浴びをしていた時だ! あの鍛えられた体つきを見たとき、胸が高鳴って目は離せなくなった! そして僕の股に生えているチ――」

 バキっとその綺麗な顔を殴ってやった。

 いくら種族の壁があるといってもデリカシーがなさすぎる!

 だからコイツは嫌いなんだ!

「ちょ、ちょっと! リリスちゃん! 一体どうしたんだい!?」

「うるさいホモ野郎!」

「ホモ? あぁ。そうだった、美しい男同士の友情を人間界ではホモと呼ぶんだったよね。サンダラちゃんから学んだよ」

 またアイツか。

 ろくでもないことしかやってないな。

「それで、用件は何? わざわざ私の部屋まで来てたって事はよっぽど重要な用事なんじゃないの」

 立ち上がったユーミルを見上げながら、私はベッドの上に座る。ベッドの上に散らばっている下着は後で片付けることにする。

「そう、リリスちゃんが一番知ってるかなと思って聞くんだけど、勇者はどこにいったんだい?」

 知らん。

 というかなんで今更そんなことを聞いてくるんだろう。

「知ってたら会いに行ってるよ」

「そうか、行方不明というのは本当なんだね」

 知らなかったの?

 というか嘘だと思ってたの?

 まぁコイツが住んでる森まで情報が行き届いてないんだろう。つかコイツどこに住んでんの今。

 エルフはどこかの森の奥でひっそり暮らしている。というのは昔の考えらしくて、最近の若いエルフは普通に街中にいたりする。だがコイツの場合、若いエルフではないらしく、どこかの森の奥にいるとかいないとか。

 そりゃ人間の文明についてこれないよな。最近はようやくパンツを穿くレベルまで進化したんだろうか。

 まぁコイツに関しては興味が全くないので、その情報は全てどうでもいいのだが。

「よし、じゃあ一緒に探しに行こう」

「……」

 どうしてこうなる。

 勇者を探しに行くのは私の中で決めていたから、その点に関しては何も異議はない。

 ただ問題であるのは、何故わざわざコイツと一緒に行かねばならないのかだ。

「私には仕事があるし。ユーミルだけで行ってくれば?」

「そんな冷たいことを言わないでおくれよ。リリスちゃんだって勇者に会えなくて寂しいだろう?」

「別にそんなことないんですけど」

 本当のところはめっちゃある。

 だけどそんなことをコイツの前で言ってしまうと面倒になるのは目に見えている。

 取り敢えずシラを切ってやり過ごすことにしよう。

「いや、寂しいはずだよ。だってリリスちゃんも勇者ちゃんのことが好きなんだろ?」

「ぶ!」

 は、はぁ!?

 なんで知ってんの? アンタには教えてなかったはずなんだけど!?

 というか誰かに言った覚えもないんだけどさ! サンダラにはなんかばれてたけど!

「同じ勇者に恋するもの同士、仲良くしようじゃないか」

「アンタと一緒にしないでよ!」

 私のは正常な感情だけどアンタのは異常だから!

 つか恋敵同士は普通仲良くしないから!

 相変わらず常識が通用しないヤツである。

「はぁ、つかなんでばれてたのよ。嘘でしょ。アンタに人の感情が分かる日が来るとは……」

「全員気付いてたと思うよ?」

 まさかの追い討ちに、リリスの頭上から10キロの米俵が落とされたような気持ちになった。

「……それってもしかして勇者にも?」

「どうだろう? 抜けてるように見えて意外と物事を見極める審美眼は確かなものがあったからねぇ。あ、勇者のことを思うだけで勃――」

「はいそこまで」 

 口を封じるインスタント魔法を使った。

 おかげで部屋が静かになった。

 静かなのはいいことだ。次に騒がしいヤツを透明にする魔法さえあれば完璧に消去することができるというのに。

「……まぁいいわ。一緒に探しにいきましょう」

 なんでこんなヤツと、とも思ったがわりかしまるで使えないという訳でもない。

 人の言った事を鵜呑みにして騙されてくれる。

 それに危ない目に遭ったとしても、コイツの弓術に頼れば問題ないし、何かあればポアソントカゲの尻尾きりよろしく、ユーミルをおいていくだけだ。

 なんだ、コイツもしかして好物件だったのかもしれない。

 裏切っても罪悪感が痛まないヤツなんて世界広しといえどコイツくらいだし。

 それにこの魔法を掛けておけば静かに旅もできそうだ。

「じゃあこれからしばらくの間またよろしくねリリスちゃん」

 …………。

 勝手に呪文解除すんなや。

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