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CODE-D  作者: ryu8
1章 終わりの始まり
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1-8.事件レポート

 惨劇の起きた広場での事情聴取が終わり、クロード・アズベイルは特殊部隊の執務室にて事件の整理を行っていた。

 彼が今担当しているのは『怪奇殺人事件』。

 本来であれば一般の警察に任せてしまうのだが、クロードは事件の内容を見て捜査の協力に申し出たのだ。捜査の協力に申し出た理由は2点。


 まず1点目。

 都内で見かけられた喰いかけの人の死体。

 初期に見かけられたのは、綺麗に胴体と分離した腕や足が現場に散らばっていたようだ。

 警察内部では放し飼いされた肉食獣によるものだと噂されていたが、その線は薄いようにクロードは思えた。なぜならば、ただの肉食獣がこんな綺麗に腕や足を切断できるとは思えない。

 一度は現場に残されていた腕や足の断面を写真越しに見ていたが、少しの乱れはあるものの、綺麗な切断面をしていた。

 ただの肉食獣ならば、腕や足を切らずにそのまま急所に噛み付いたり、力で仕留めにかかるだろう。

 その点から見て、彼は異世界にいるといわれている化け物『魔獣(ビースト)』の仕業ではないか、と過程している。奴らを相手にするならば、世界から隠匿されている技術・魔術(・・)を扱える者を集めた特殊部隊が適している。


 次に2点目。

 2回目の事件からは魔獣の死体も出てきたことだ。

 初回に比べて人間の死体は少なかったが、代わりに魔獣の死体が出てくるようになった。

 人の被害が少ないというのは喜ばしいことではあるが、新たな謎が生まれた。

 それは…魔獣に対しての対抗手段を軍の外に知っている者がいるということ。

 魔術を扱える特殊部隊は万年人手不足な部隊だ。

 この事件を通して隊員としてスカウトしておきたい。


 以上の2点が事件を特殊部隊で巻き取った理由となる。

 クロードは『怪奇殺人事件』と題名の付けられたファイルを手に取り、右開きにページを開いた。

 最初に事件経緯が描かれている。


 事件が発生し始めたのは4月初旬。

 1回目の事件現場は港近くの工場の中だった。

 現場には人の腕や足が辺りに散らばっており、そこから漏れる血の海状態にあった。

 一般の警察がその場を見た瞬間、嘔吐する者が多かったらしい。

 残された人の手足を見て、警察は大きく狂ってしまったサイコパスのせいだと仮定した。


 4月中旬、2回目の事件が発生した。

 人の死体が少なくなり、正体不明の生物の死体も一緒に辺りに転がるようになった。

 散らばっていたのは切っ先の鋭い爪を備えた腕と筋肉質な足。

 警察の検視官が言うには、見たことの無い動物らしく、ここまで狩猟(ハンティング)に特化した体は無いと言われている。事件2回目にして分からないことが多くなった。

 この事件を偶然目にした帝国軍特殊部隊の隊長、クロード・アズベイル大佐直々に調査をしたいとの通達が来た。警察としてもちょうど特殊部隊に捜査協力を依頼しようとしていたところだったから、丁度良い。


 ファイルを受け継いだのは事件を特殊部隊で受け入れてからであり、警察関係者の考えがちょくちょく入っている。自分が介入したのは相手にとっても都合の良い話だったのか。

 クロードは自身の提案が簡単に通ったことに対して納得をする。

 彼はパラパラとファイルのページをめくり、今までの事件を読み返した。


 事件は何も分からないまま起こり続けて5月に入る。そして、5回目の事例にてようやく重要な証拠が手に入る。

 勇気ある青年が惨劇の現場を動画で撮影してくれたのだ。彼は興味本位でカメラに状況を映していただけであり、命がかかっていたとは微塵にも思っていなかったらしい。

 その行為に対してクロードは愚かだと感じた。

 猛獣が目の前で暴れて人が襲われていく様を見てなんとも思わなかったのだろうか。

 まるで台風で海辺が危ないのを知っていて波止場に行くようなものだ。

 少々不愉快ではあるが、何はともあれ勇気ある行動のお陰で、映像越しに『魔獣への抵抗手段』を持つ少年の存在を知った。

 その後、1週間ほどは頻繁に魔獣が出ていたらしいが被害者はいなく、代わりに魔獣と思わしき死体が辺りに転がっていた。恐らくあの少年の手によるものだろう。


 そうして14回目、調査は新しい一歩を踏み入れる。

 惨劇からの生存者がついに生まれたのだ。彼らはとても精神的に病んでいる様子ではあったが、正常な時に話を聞くことに成功した。この話の中で『魔獣への抵抗手段』を持つ少年についての情報を新たに仕入れることに成功する。


 ■『魔獣への抵抗手段』を持つ少年について得られた情報

 ・『レイジ』と呼ばれている

 ・学生服を着ている

 ・金髪の女性と同行している


 魔獣への対抗手段を持つ少年は金髪女性と組んで行動しているようだ。

 なんとなくではあるが、疑問の輪郭が浮き上がったような気がした。これは大きな進歩だ。

 現在、得られた3つの情報を元に絞り込みを行っている。

 特に学生を中心に検索が始まっている。

 その結果、1人の少年が当てはまった。

 少年の名は『神原礼二』。

 ようやく見つけた魔獣への抵抗手段を持つ存在。

 近々、私自ら彼に接触を試みる。話の通じる相手であれば良いのだが、私たちの考えに賛同してくれる子であってほしい。彼と接触すれば自然にもう1人の金髪女性へと辿りつくだろう。


 日誌のようなレポートに記述を済ませたクロードは、近くにあったコーヒーを飲みながらほっと一息つく。

 楽しくなってきたじゃないか。

 自分の思惑通りに事が進むのは、犠牲者たちには申し訳ないがとても気持ちが良い。

 後は優秀な補佐が捜査結果を持ってくるのを待つだけだ。

 数分後、コンコンとドアを叩く音と女性の声が部屋の外から聞こえてきた。

「大佐、エリゼ・ライン中尉です」

「よし、入れ」

 クロードはエリゼを執務室への入室を許可し、彼女を招き入れた。

 彼の言う優秀な補佐官の手にはA4サイズの茶色の封筒がある。

「特定はできたか?」

「はい、現住所の特定も完了しております」

 エリゼは封筒の中から資料を取り出し、ソファーの前にある机の上に広げた。

 資料には『魔獣に対抗する少年について』とタイトル付けれたファイルがあった。

 クロードはそれを手に取り、1枚1枚さらっと読み始める。

 細身で長身な少年が映された写真、彼が出生してからの歴史、現住所、家族構成など少年に関する情報がまとめられてあった。

 一通り目を通したのか、一度ファイルを閉じて不気味に微笑みだす。


「……よし…少年とコンタクトを取ろうじゃないか」

「待ってください! 大佐が直々に出向くものでは―――」

 彼の考えを制止するようにエリゼは反対する。

 なぜならばクロードは普段から特殊部隊の執務室にて各部署の決定事項の承認、外部に対しての交渉事に忙しくしているからだ。

 それに加えて1つの事件を調査しているのだから、これ以上の仕事を抱え込むのはキャパシティオーバーであると彼女は判断しているのだろう。

 しかし、クロードは部下の心配を他所に反論する。

「いや、魔術が扱えると思われる少年だぞ。部隊内で一番上の階級にいる私が説明しなければ、本人も納得しないだろうに」

 彼にとっては特殊部隊の戦力増強のチャンスである。相手は中学生とはいえ、1人でも多く魔術師を引き入れたい。

 それが彼の考えである。

 やると決めたら納得がいくまでやりきる―――この言葉を信条にして生きるクロードを知っているエリゼは彼を制止することを諦めた。

「そうですか…では、一通りの段取りを決めましょう」

「あぁ…ありがとう」

 部下が納得してくれたことに感謝し、クロードは少年をどうやって特殊部隊に引き入れるかを考え始める。

「魔獣に対抗する少年『神原礼二』、会うのが楽しみじゃないか」

 クロードは不気味な笑みを浮かべながら、外の光景を見晴らした。

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