4-4.前進
バトラから「無茶な訓練をしている」と指摘を受けた礼二は、彼の指摘を気にせず調査の合間を使って訓練に勤しんでいた。
「ほら、少し力が入ってる!」
「は、はい!」
屋外訓練場には、剣の素振りをしている彼と、そんな彼を見つめるアイラの姿があった。
彼女には礼二から「訓練を見てほしい」と頭を下げて頼み、まずは剣の使い方から見て貰っていた。
訓練場でアイラの怒鳴り声が響き渡る。
ただ怒られている訳ではないが、それ程礼二の剣の扱い方がなっていないことを示していた。
「神原さぁ…あんた、いつもこんな感じに振っていたわけ? これじゃあ長く振るうのが辛くなるわよ」
「は、はい。すみません!」
アイラの声は普段聞く声に比べて荒々しく、ドスが効いているように感じられた。
普段の雰囲気と若干違うなおい…
確かに彼女は口の悪いところはあるが、ここまで酷いようには感じられなかった。
「シューさん…あなたって、こんな感じの人でしたっけ…?」
「えっ? こんな感じってどんな感じだよ?」
彼女自身、今の自分が普段と比べて過激な発言をしているようには感じていないようだ。
本人は全く変わっていないと思っているようだが、まるで気が付いていない。
アイラに言われるがままに剣を振り続けて30分。
彼女からちょくちょく「力が入っている」や「腰が入っていない」等と口出しされてしまうが、振り続けている内に注意される頻度は少なくなっていった。
同じような得物を扱っている人から直接レクチャーを受けると、言われていることがイメージしやすくて体に入れ込みやすい。
「よし、一旦休憩だ」
「えっ、もうですか?」
ようやくノリに乗ってきたところで中断するよう命じられた。
剣の振り方が体に慣れてきそうなところであったが、現在コーチとして動いている彼女の言うことは聞いておいた方が良いだろう。
「そうだ。体が疲れているにも関わらず剣を振り続けていると、いつの間にか予定よりも変わった振り方になるからな」
先日、バトラから聞いた理由と同じだった。
しかし、バトラから止められた時間よりも、アイラから止められた時間は明らかに短い。
礼二自身は大して疲れを感じていないのだが、何故彼女はわざわざ止めろと言ったのだろうか。
「あの、シューさん。私はまだ疲れていないんですけど、何故止められたのでしょうか? まだまだ動けます!」
「あのね、動けるか動けないかの問題じゃないの。私はあんたが無茶しないようにペース配分を考えてるんだ」
ペース配分を考えていると言われても、礼二の体を分かっているのは、ほかでもない自分自身だ。ただ自分を見ているアイラには、細やかに礼二にとって良いペース配分というのが分かる訳がない。
礼二はそう思いながら彼女を見つめた。
自身に文句を言いたそうな眼差しで睨まれていると感じたアイラは――
「あんた、自分が体のことをよく分かっているなんて思っていそうだけど、あまり思い上がらない方が良いわよ?」
目を細めながら礼二を睨みつけた。
「自分の体は自分自身が分かっている。そんなの当たり前じゃないですか」
自分が抱いていたことを言い当てられていい気になっているアイラに苛立った礼二は、条件反射で言い返していた。
少し尖った言い方になってしまったが、彼女は礼二の切り返しを予想していたような様子だった。
「分かっているなら、あんたは自分の持つ力の恐ろしさには気付いているのか?」
唐突に礼二自身が持つ力について、アイラは話題に出してきた。
何故この自分が持っている力を話題に出されたのだろう。
急にこのような話を振ってきたアイラに対して、礼二は疑問を抱いていた。
「何故私の力の話になるんですか?」
「それは、あんたが持っている力の危険性を理解しているのか? って聞いてんの。あんたの体はあんた自身がよく知っているんでしょ?」
要約すれば、自分自身の体のことを分かっているなら、力の危険性についても知っている筈だという根拠なのだろう。
「そんなことは知ってます。上手く扱いきれなければ周りの人を傷つけてしまうし、いろんな人に迷惑が掛かります」
「ただそれだけじゃない」
礼二が反論をしたところで、アイラは間髪を入れずに言い返してくる。彼女の目を見ると、何を言っても論破しようと目をギラつかせている。
確かに、あの力を扱う際には礼二も手を焼いている。
頭には殺意の籠った声が響き渡り、無理矢理自分の体を動かそうとしている。
使用する際には毎回あの声たちと戦い、精神的に消耗した後での戦いとなる。礼二の中でも、黒い魔力のコントロールも訓練事項の一つとなっている。
「そうですね…力を使った後は、体の力を使い切って倒れてしまいます」
「分かっているならよろしい。あんたは自分や周りが危なくなったら、あの黒い魔力を使おうとする。できるだけそうならないように、自分自身の限界を知っておくんだ。無謀に突っ込んで、無意識に使用する流れになるのも、仲間としてはとても怖い」
てっきり怒られる流れかと思っていたが、アイラは優しめな声色で礼二を諭した。
彼女はただ単に無理するなと言っている訳ではない。
礼二に無理をされることによって生ずる仕事が増えないようにと、自己管理をしっかりしろと言っているのだ。
これまでの動きを見ていても、黒い魔力を使った後は全て倒れてしまっている。
やむを得ない状況で黒い魔力を使用した後で、簡単に倒れてしまえば、自然と仲間の負担になってしまう。だからこそ、自分の限界を知った上で戦いの流れをコントロールする必要があるのだ。
「そうでしたか…いつもすいませんでした…」
「分かってくれれば良いさ。今のところ倒れているのは2回ぐらいだし、限界を知らずに力を使い果たして倒れるなんて戦力として数えるのが難しくなるからね」
「あぁ…戦力として数えられなくてごめんなさい…」
アイラの皮肉染みた言葉に、礼二は腹に刃物を突き刺したような感覚に見舞われた。
彼女は何も悪気があって言った訳ではないと思うが、ここまで言われてしまうととても死にたい気分になる。
礼二がガックリと溜め息を付くと――
「すまん、言い方が悪かった。とりあえず素振りを連続して行うにも、体を労わりながらやるんだぞ?」
「は、はぁ…」
アイラは戸惑いながら礼二を励まし始めた。
彼女としても、礼二があそこまで落ち込むとは思ってはいなかったのだろう。
だが彼としても、共に戦っている仲間からこのように言われている現状に申し訳なさを感じていた。
まずは自分の限界を知らなければな。
限界を知り、今後の行動を考える。
仲間と共に戦っている訳なのだから、足並みを合わせつつ、足手まといになりそうなら動きは自重する。
自分一人で戦っている訳では無い。強大な敵は、仲間と力を合わせて倒すものだ。
礼二は自分に足りなかったものを自覚しながら、休憩に入っていった。
◇ ◇
10分後。
アイラに休憩終了の合図を貰った礼二は、彼女の前へと足を運んだ。
彼女の姿を見ると、先程までかいていなかった汗が思い切り吹き出し、来ていたTシャツが広く濡れていた。
なんでこんなに汗をかいているんだろうと体全体を眺めてみると、彼女は白の服を着ていたせいか、胸に付けていた下着が薄っすらと見えていた。
「!?」
礼二はアイラに悟られないように言葉にできない声を高く上げてしまった。
彼の反応に対し、アイラは目を見開いたまま見つめていた。
「な、何だ!?」
「い、いえ…何でもないです…」
自分の行動で驚かせているところ申し訳ないが、驚いている理由を話すわけにはいかない。
今目の前にいる目の保養を自分から失くすような真似をしてたまるものか。
中学2年生。思春期の男の子にとっては、とても嬉しい状況だ。
「あ、あの…何をやっていたんですか…?」
「あぁ…私も久しぶりに戦闘以外で剣を振るおうと思ってね」
礼二の訓練に触発されて、彼女も剣を振りたくなっていたようだ。
そういえば、剣を2本扱う時ってどう振ってるんだろう。
一本振るうのであれば想像することはできるが、剣を2本扱っている者の素振りはあまりイメージができない。
「へぇ…あ、どんな感じに振っているんですか? 2刀流で戦う人なんてあまり見ることもなかったので、どんな感じに振るのか気になってます」
「お、いいぞー。ちゃんと見とけよなー」
アイラは礼二に言いながら左手の剣先を正面に向けて柄を胸の前に構え、右手の剣を下段に構えた。
彼女は、ふぅと一息つくと――
ブオンと重い物が目の前に振るわれたような風を感じ取った。
えっ…どうやってあんな風生み出してんの…
アイラの持つ2本の剣は、礼二の持っている剣よりも少し短めで厚さも大して変わらないように見えた。
こんな剣を振るって大きな風を生み出せるということは、彼女が剣を力強く振ることができるということが考えられる。むしろ、それでしか思いつかない。
「す、凄い…」
最初の一閃から連続して振るわれる剣から生み出された風圧がブオンブオンと風の音を辺りに響きかせる。
アイラは2本の剣を持って舞うように動き、礼二を観客とした踊りを披露しているように見えた。
優雅に、そして猛々しい動きをする彼女は、何かを訴えようとする表現者であるかのように思えた。
複雑な動きをいくらか繰り返した後、片足のつま先でジャンプ。高く飛び上がった後は目の前に敵が居ると仮定して、脳天目掛けて2本の剣を振るった。
「ふぅ…どうだった?」
「凄いです…」
一般的に二刀流の扱いは難しいと言われている。
それでありながらも彼女は、重い物を持っているとは考えられないぐらいの剣裁きを披露して見せた。
何も知らない人から見れば「綺麗だ」と感じるだけであるが、剣を扱っている人の目から見れば凄いと言わせる程の技術であった。
「だろー? こうやって動かせるように、ずっと訓練に励んできたんだよね」
「でも、二刀流ってあまり実戦的じゃないと聞きますけど…」
「実戦的じゃないのは分かってる。ただの浪漫だよ」
礼二が現実的な一言を告げると、アイラは冷たい目で見ながら2本の剣を魔力で作った空間の中へと放り込んだ。
彼女は一息付くと――
「一つ思ったんだけど、神原は何で私に訓練を見てほしいと頼んだわけ? こういう素振りなら1人でもできるし、他に目的でもあんの?」
他の目的の有無を問われた。
アイラに訓練を付き合ってほしいと伝えた時、ただ訓練に付き合ってほしいと言っただけだ。
誰かから練習等に「付き合ってほしい」と言われると、「対戦相手やら組手相手になってほしい」と言われているように感じると思うから、そう感じられても不思議はない。
実のところ、アイラに訓練に付き合ってほしいと頼んだことには、ちゃんとした理由があった。
「えっと…前に私が戦ったアインって男が使っていた剣術について教えていただきたいのです」
「あの男が使った剣術…?」
目の前の少年が何を言っているのか理解できなかったのか、アイラは唖然とした目で彼を見ていた。
彼女が抱いている感情を察した礼二は、アインが自分に対して使用した剣術の詳細を話した。
「剣の攻撃範囲が広がって炎を具現化した…ねぇ…それって、魔剣術じゃないかな」
「魔剣術?」
礼二は初めて聞く言葉に興味を抱いた。
魔剣術。
名前に『魔剣』と付いている辺り、何か特殊な力が施された剣術なのだろうか。
続けてアイラは口を開く。
「剣に魔力を込めて放つ剣術のことだ。神原がやっている魔力で剣の切れ味を高めることも、魔剣術の基礎のようなものだ」
やろうと思えば、礼二でも出来る剣術らしい。
しかし、アインがやっていた剣を伸ばすこと、炎を纏わすことなんて礼二にはできない。
「私がやっている魔力の使い方を工夫すればできるんですかね?」
礼二は抱いていた疑問をアイラに話してみる。
「できるんじゃないかな。魔剣術って、魔術を剣から発動するようなものだし」
魔術を剣から発動とか、聞くだけだと割と簡単そうな気がする。
彼女から簡単だと言わんばかりの言葉を聞いて、礼二はホッと安堵した。
戦闘経験、魔力の扱い方で劣っている自分が勝つには、相手に不意の一撃や魔力の扱いが上手くなるほかない。
「ちなみにアイラさんは何か魔剣術を使えるのですか?」
「使えるぞ。ちょっと見せてやるよ」
アイラは虚空から人体模型を取り出し、目の前に配置した。
攻撃に必要な武器を取り出すのは見たことがあるから分かるが、人体模型なんていつ使うつもりなのだろうか。
予想外な個所から予想もつかない物を取り出したところを見て驚いた。
「えっちょっとどこから出したの」
アイラは礼二の声を気にせず2本の剣を取り出し、再び構え始めた。2本の剣からは青白い輝きが現れるとともに風が纏われた。
「でやぁ!」
彼女は目の前の人体模型目掛けて2本の剣をクロスに振ると、人体模型は粉々に斬り刻まれた。
「え…何が起きたの…?」
「原理で言うなら剣に纏った魔力で風を精製、それを模型に向けてぶつけるように斬ったんだ」
ぶつけられた風によって、一振りの斬撃に加えて連続して斬り傷を与えられたのか。
アイラのざっくりとした説明を、礼二は頭の中で理解した。
「他にはあるんですか?」
「ありはするけど、そういうものはあまり他の誰かに見せるものではなくてね」
他の誰かに見せるものではないって、部隊の面々にはどういう技や術が扱えるかを見せた方が連携しやすいのではなかろうか。
礼二はアイラの考え方に対して否定的な思いを抱いた。
「それって、味方に力を見せて動かしやすくするものじゃないですかね…?」
「残念ながら、そういうものではないさ。自分の技が相手にパクられるかもしれないだろ? 魔剣術ってのは、その人なりの個性が大きく出てくる。私なら相手を斬り刻みたいって考えがあるから、更に切れ味を高められるかもと考えて風を使っている」
「斬り刻みたいって…何それサイコパスですか…」
礼二は彼女の考えに引くように、顔の表情をしかめた。
魔剣術はその人の個性が大きく出る。それはあながち間違いではないのかもしれない。
「神原、お前は魔剣術について学ぶつもりか?」
「えぇそうですよ」
アイラは何故と言わんばかりの表情を浮かべながら訪ねる。
魔剣術を扱うことができるようになれば、戦いに幅を広げることができるかもしれない。
礼二はこのような考えを抱いているから、魔剣術を学びたいと考えている。彼女の態度を見るに、何やら否定的な意見を持っているように思えてならない。
「そうかー…今の神原が学ぶには早いような気もするけどな」
「早いも遅いもありません! 覚えられることはできるだけ早くできるようになった方がいいじゃないですか」
戦える術や技能はできるだけ多く身に着けた方が良い。そうすれば、相手と戦う際に切れる手札を多く持つことができるからだ。
切れる手札が無いよりも、使えるようにしておいて、臨機応変に使えるようにしておきたい。
「うーん、分かった…軽くやり方だけは教えてやる」
「おっ、ありがとうございます!」
礼二が喜びを表情に出していると、アイラは唐突に剣を握っている彼の手を握った。
予想もしない彼女の行動に、礼二は内心戸惑った。
えっ、ちょっと…この人はこんな時に何を考えているんだ…?
思春期の少年であれば、女の子やら女性に手を繋げることはドキドキすることであるが、アイラはそれを容赦なく叩き潰すような一言を告げた。
「手の感覚を鋭くしておいて。私が魔剣術で使う魔力をコントロールするから、神原はこの感覚を覚えてちょうだい」
あっ…もう魔剣術を得るための動きは始まっている訳なのですね。
アイラが仕方なく手を握っていることを知り、少し切ない思いをする反面、彼女に申し訳ない気持ちも抱いていた。
まぁ、そんな都合の良いことなんて起きないよね。
「それじゃあ行くぞ」
「はい」
アイラは礼二の持つ剣に魔力を流し込んだ。
外からでは見えないが、微かに青白い光がアイラの腕を通り、彼女と礼二の手を通して剣に流れていく。魔力を帯びた剣からは風が吹き荒れ、纏われている風もあってかドリルのような形状となった。
「こんな感じなんですね…」
「そうだ。なんとなく感覚は覚えられたか?」
礼二は、アイラから伝わる魔力の流れに身に覚えがあった。
確か…リディさんと戦っている時、彼がやっていたのをイメージしてやってみたら同じようなことができたような気がする。
あの時は剣の斬撃を相手に飛ばすだけであったが、今回は剣の攻撃範囲や破壊力を伸ばしている。どういう調整をしないといけないかに大きく違いが出るはずだ。
さぁイメージしろ。
体内にある魔力を両手を通して放出。
それは剣に纏わりつくように流れ、もやもやとした形で具現化していく。
「何これ?」
魔力は薄っすらと青白い光を放っており、刃は光の中に埋もれるかのように見えなくなっていた。
礼二は、今や魔力の形を持っているかのように見えていた。
「おいおい…そんな中途半端なものじゃ、良い効果は得られないぞ」
「そう言われても、イメージが難しいんですって」
手慣れた人が行ったことを、初めて行う人がすぐにできるものではない。
ましてや魔術のような、イメージするという行為に慣れた者たちでしかスムーズに行えない技術は、ある意味職人業だ。今すぐやってと言われてホイホイできるものではない。
「そうだなぁ…じゃあ私の言う言葉の通りにイメージしていけ」
アイラはそう言いながら、礼二の持っている剣をぶんどり、自分の正面に剣先を向けた。
「一回しかやんないから、ちゃんと見とけよ?
体の中にある魔力をスーッと手に移動させ、剣へと流れるように意識させる。そして、剣を中心に竜巻をぶわっと出すと…」
唐突に剣を中心とした小さな竜巻が出来上がった。
剣先から見ていれば、纏われた風は台風の目をイメージするような形であり、ざっくばらんと風が精製されている様子ではなかった。
剣に風を纏わせる。
剣を中心に竜巻を作る。
一見、言っていることは同じように聞こえるが、イメージして具現化に至るまでの手間に違いが出る。
『剣に風を纏わせる』パターンであれば――
①剣に魔力を注ぎ込む。
②剣の周囲に魔力を展開。
③魔力から風を精製。
④風を巻くように動かす。
『風を中心に竜巻を作る』パターンであれば――
①剣に魔力を注ぎ込む。
②剣の周囲に魔力を渦巻くように展開。
③魔力から風を精製。
一つ一つの工程において精密なイメージが必要な分、工程が多ければ多いほど失敗する確率も増してくる。魔力の扱いにおいては少ない工程であればある程、失敗率を減らすことが可能なのだ。
「おぉ…」
礼二は、アイラが剣に竜巻を難なく起こしたことに驚きを示した。
やろうと思えば、他人が扱っていた剣でもできなくはないようだ。
「神原は竜巻を精製する際に、風を精製してから巻こうとしているだろ?
それじゃあ制御が難しくなるから、剣の周りに魔力を纏わせてから風を精製するんだ。それだけでも制御の楽さに変化があるかもしれない」
アイラは礼二の魔力制御について、考え方を指摘する。
礼二は頭の中で意味を理解し、再度頭のイメージ通りに魔力を制御しようとした。
魔力を剣に纏い、風を精製する。
剣の周りに竜巻を発生させるイメージ。
ちゃんと頭の中でイメージしたはずなのに、何故か竜巻は発生せずに魔力は霧散した。
「な、なんで…?」
「うーん、イメージが足りないのかな」
魔剣術の発動失敗した理由についてアイラは語る。
ここまでイメージすることを固めておいて、失敗することはあり得るのだろうか。
礼二はこの失敗について疑問を抱いていた。
「神原、少し話がある。ちょっと来てくれないか?」
唐突に聞き覚えのある声が聞こえてきた。
声の聞こえた方向に顔を振り向けると、そこにはクロードの姿があった。
「大佐…なんでしょうか?」
「いいから来なさい。シュー軍曹、彼の訓練に付き合ってくれてありがとう」
彼はそう言いながら礼二の腕を掴み、引きずるようにアイラの元から離そうとする。
これから細かい説明をしようとしていた彼女は、ポカンと口を開けて2人が離れていく様を見届けていた。




