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CODE-D  作者: ryu8
2章 現実を知る者
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2-11.揺るぎない信念

「僕の両親はこの力に怯える愚かな人間どものせいで死んだ。

 力を持っている僕のせいではないかと言われたら否定はできない。だが、2人をあそこまで追い詰めたのはあいつら人間だ。だからこそ僕はあいつらに復讐をする。それができるのなら何でもやるつもりだ」

 リディは手の平に出現している魔力の塊を見つめながら礼二に語った。

 お前が抱いている理想と現実はこんなにも違うと。力を持つものは他者に疎まれるものであると。

 それはリディの過去から身に染みて感じた。

 しかし、礼二の信念はそれでも曲がらない。

「リディさん…確かにあなたが経験したことは俺の抱いていた理想と現実とはかけ離れていたものです。でも、俺が軍に入ったのはそれが目的じゃない。俺が軍に入ったのは、俺と同じように大切な人たちを失くす人たちを作らないことだ。だから…あなたのやったことは肯定できない」

「そうか……」

 礼二の思いを聞いたリディは、彼の言葉を胸に止めようとしながら顔を下に向けた。

 数秒後、リディは顔を正面を向け、一本の剣を両手で構え始めた。

「君なら分かってくれると思っていたんだけどね…だったら力づくでも意志を貫き通すまでだ!」

 気合の篭った声と共に礼二に接近を図る。

 礼二は突進力を減らそうと目の前に魔防壁を展開し始めた。

「同じ手は通用しないと言ったはずだ!」

 リディは防壁まで数メートルのところで高く飛び上がる。魔力で強化された足による跳躍のためか、飛んだ高さは礼二の身長を軽々と超えていた。

 高度からの兜割りで攻めてくると読んだ礼二は数メートル後ろへと下がった。

「逃がさねぇ…よ!」

 礼二が後ろに退いたのを見てからリディは魔力を足元に集中し、空中を蹴って飛び込む。

「なっ!?」

 リディの動きが見切れない。そのまま斬りつけられて死ぬかと思ったが、横を通り過ぎるだけだった。

「あちゃー、ちょっとずれちゃったね」

 今のでちょっと…ね。

 礼二の頬から切り傷が生まれる。先ほど通り過ぎたリディの刃によるものだ。

 あの大爆発の後でも生きている彼とどう戦えばいいのだろうか。

 礼二は最後の手を潰され、新たに戦略を練る必要があった。

「まだまだ行くよ」

 得物を狙い定めるかのような目。まるで蛇に睨まれた蛙のような気分になった。

 これ以上打つ手は無い。

 礼二は覚悟を決めてリディに接近戦を挑むことを決意した。


「ふんっ!」

「でやぁ!!」

 リディと礼二は互いの剣を交えて接近戦を行っていた。

 近づいて退いて近づいて退いてと同じようなやり取りが数十回と続く。

 リディと交戦して約30分。礼二の体力は限界に近づいてきた。

「はぁ…はぁ……」

 自身の体力の無さを恨むべきか。否、特別訓練を受けていて体力は必ず付いているはずだから原因は全力で魔力を使用していることにある。

 彼と交戦し続けて1時間近い。最初であれば10分足らずで体力が切れていただろう。特別訓練を続けていたからこそここまで持ったのだろう。

 ましてや全力で相手の魔術や剣術に対抗しなければ今頃礼二は死んでいた。

「どうしたんだい…もう降参?」

「まだ…だ…そういうあんたもバテてんじゃねぇかよ」

 互いにぶつかり合ってどちらかが降参するまで辞めないこの状況。

 まるで負けず嫌いなライバルと耐久戦で戦っている気分だ。2人はまたしても互いに近づき、気の抜けない剣戟が始まった。

 互いの攻撃を防いでは攻撃する流れを交互に続けていく。そしてまた距離を取り始める。


 これ…いつまで続くんだ……

 体に溜まっている疲労がついには剣を持つ手の痺れとしてやってきた。

 このままいけば勝負は負ける。相手の体力がどれだけあるか分からない以上、もう決着をつけないと危ない。

 ならばどう攻める。大掛かりな魔術による罠などの戦法はもう魔力量から見て使えない。

 剣での攻撃を行いたいが、リディとの接近戦で狙うのはほぼ不可能だろう。何か意表を突かなければ一撃を与えることもできない。

 考えている内にリディが接近の構えをするのが見えた。それに合わせて礼二も彼に近づく。

 十回以上続く剣戟。互いに空いている位置への攻撃をしようとするが防御されてばかりだ。

 同じような剣戟が続く中、リディは剣に魔力を込めて大きな一太刀を浴びせる。

 礼二は剣で防御するも、力の強さに体が後ろへと退かれた。

 そのまま防御の硬直で体が動けないでいる礼二に対してリディは足元へと剣を払い始める。

「やばっ!?」

 小さな魔防壁を展開して剣を弾く。リディは小さく舌打ちをしながら礼二との距離を取った。

 体の重さに慣れたのか、さっきまでの動きに比べて軽やかだ。これで防御が崩されるのも時間の問題だ。

 勝負を終わらせるのならこの瞬間しかない。

 ならばどうする。考えろ神原礼二。魔力があれば何でもできる。

 魔力をどうやって攻めに使うかを考えていると、魔力を込めた剣の一太刀を放ったリディを思い出す。

 剣に魔力を込めて切れ味、威力の増大。

 それは魔術の1つ『状態変化(ネイチャー)』によるものだ。彼がやっていたものは『強化』だけ。

 だったらそこに『変化』を加えることは可能ではないだろうか。やってみる価値はある。


 距離を取ったリディに対し、礼二は剣を腰の位置まで下げた。

 相手の意表を突くにはこの一回で初めて試みる攻めだ。失敗すれば負けは濃厚。

 礼二は目を瞑り、長剣に魔力を集中した。

 イメージしろ。剣に魔力を込めて斬る時と同じように集中し、振り切る瞬間に斬撃を放つイメージ。

 頭の中でイメージトレーニングを何度も繰り返す。そして、意を決したように動き始める。

「はぁぁぁ……飛べええ!!!」

 腰の位置にあった長剣を横に大振りをする。すると、振った瞬間に魔力で精製された一太刀がリディに向かって飛んでいった。

「マジかよ…!」

 予想外な一撃にうろたえながら剣で弾く。しかし、礼二の放った斬撃は彼自身の力も含まれているせいか意外に重く、リディの体は後ろへと持ってかれた。

 リディが体勢を立て直そうとした瞬間、目の前には長剣を大きく斜めに斬り上げようとする礼二がいた。

 彼が長剣を振り上げると一本の剣が宙を舞い、弧を描きながら地面に突き刺さった。

「あなたの負けです、リディさん」

 2本の剣を失ったリディの顔に剣先を向ける礼二。リディは息を乱しながら呆然と彼を見つめる。

 これで勝負は決まったように見えた。しかし彼は体を屈め、右腕の拳を礼二の右頬へと打ちつけた。

「これで…勝ったとおもうなあああ!!!」

 礼二はリディによって殴り飛ばされる。体勢が崩れた瞬間を狙い、再び近づいて追加攻撃を加えよう拳を振るう。

 だが、彼の拳は礼二の顔を目前にしてピタリと止まった。

 「なんだ?」と思いながら礼二は彼の動きが止まったことに戸惑う。

「ここで魔力が切れるとはな…でも終わるわけには……」

 礼二よりも体力があるはずなのに、なぜ魔力が切れたのだろう。

 一瞬考えたが、リディは最初に支配調教(ダミネイキング)を使用しながら自らも戦っていたことを思い出した。

 リディは拳にしていた手を広げ、目の前にいる少年に触れようと必死に手を伸ばす。

 しかし、最終的に手は届かず、彼はそのまま屈するように倒れた。

「まだ…だ…人間どもに復讐するまでは……」

 リディは呼吸を整えながら、自身の望みを叶えることができなかったことを悔やみ始める。

 その姿はまるで、復讐の悪魔に取り付かれたようだった。

 どこまで復讐に執着するんだ……

 礼二はその姿を見て、リディを哀れに思った。

 子供の頃に周囲の人間から存在を否定され、親を失って天蓋孤独となって魔術を扱えない者達への復讐者へと成り果てる。

 彼の目指した結果は誰の幸せにもならず、叶えば一時の快感を得られるだけでとても空しく思えてきた。


「このままじゃもう駄目だな…礼二、最後に君とぶつかり合えて良かったよ」

「待って、最後ってどういうことですか!?」

「僕が飲んだ薬は魔力増強剤。飲むと魔力を回復させる代わりに、効果が切れた瞬簡、魔力をひねり出す際に使用した体の一部機能に異常な痛みを発するといわれる劇薬だ。これを飲めばもう助からないだろう」

 リディは諦めるような声で言った。同時に自分がやってきたことに対しての罰を受けるような雰囲気にも思えた。

 彼は自分に対しての罰を自信の死で補うつもりではないだろうか。

 礼二はそのような雰囲気を醸し出す彼に対して苛立ちを覚えた。

「勝手に諦めんじゃねぇよ…」

 思っていたことが無意識に口から出て、ふつふつと湧き上がるように苛立ちが込み上げる。

 なぜ彼はこんなにも現実を無下にしているのだろう。

 人間への復讐のために生きていたとはいえ、今生きている人生を簡単に捨てられるものなのか。

「何でこんな簡単に生きることを諦めようとするんですか!?」

「君には関係の無いことだ」

 彼の生きる意思の無さに苛立ちが増していく。

 あんたは巻き込まれた全員が死んだと言われる事故が起きても生きているほどの幸運の持ち主だろうが……この世界には生きたくても生きられない人たちはいる。

 頭の中でフラッシュバックされる礼二の前で死んでいった人たち。

 魔獣を狩っている中で助けられなかった青年。近所のショッピングモールで魔獣に襲われた人たち。

 そして礼二の両親。

 未だ14歳の少年には衝撃的な光景の数々。それらを見続けていたせいか、人の死には慣れてしまっているが目にするのは嫌になっていた。

 今目の前にいる男は自らの意志で命を絶とうとしている。

 それに対して礼二はどうすれば彼が死なないようにできるかを考えていた。


「残念だけど、俺の目の前で誰かが死ぬのは真っ平御免です。あなたが死ぬ気でもそんなことをさせるつもりはありません」

「なんで君は敵を生かすようにしようとする? 僕はここにいた訓練生を殺そうとしたんだぞ」

「関係ありません。例え相手が許せないことをしていたとしても、生きて正しく罪を償うべきです」

 礼二はまるで機械のように淡々とリディに言った。

 リディを生かすための策は無い。しかし、彼が死のうとするならば、すぐさま止めにかかればいい。

 礼二はこの考えを第一に動くことにした。

「君は…変わり者だな」

「よく言われます」

 諦めてくれたのか、リディは疲れたように溜息を付きながら礼二に言った。

 そんな彼の答えを聞いた礼二は微笑むようにリディに笑顔を向けた。

「ん、何だこの音…?」

 どこからか、ヘリが飛んでいるような音が聞こえる。

 礼二は辺りを見渡すと、海の向こう側に黒い物体が飛んでいるのを確認した。

 目を凝らして見てみると、運搬用のヘリが修練の島に向けて飛んできているのが分かった。

「お、ようやく通信繋がって助けが来てくれたのか。リディさん、もう少しで―――」

「礼二、後ろだ!」

 リディが唐突に叫びだし、礼二は後ろを振り向くと一匹の魔獣が彼に向かって突進しているところを確認した。

「いっ!?」

 魔獣の突進に対しての反応が遅れ、礼二は魔防壁を張ることによって直撃は免れた。

 だが、衝撃は抑えきれずに崖際の海へと飛ばされてしまう。

「礼二!」

 飛ばされて宙を舞う礼二は、間一髪のところで崖際を手で掴んだ。

 戦闘で疲労した右手に岩の表面のざらめきが感じて激痛が走る。魔力と体力がかなり消耗しているせいか、体にはあまり力が入らない。

 崖を上りきることは可能であるが、問題は近くにいる魔獣の存在だ。案の定、魔獣は崖の上で礼二を見下ろすように立っていた。


 絶対絶命の危機。魔獣は下にいる礼二に右腕の爪を振り下ろそうとする。

 あと一歩。あと一歩のところで自分も生きながらリディを生かすことができたのに、目の前の魔獣によって潰されようとしている。

 右腕が振り下ろされる瞬間、礼二は目を瞑った。これで人生は終わりであると覚悟したからである。

 目を瞑っている数秒間、何も痛みは走らない。死というのは痛覚が走らないものなのかと思った。

 頭上からパキパキと何かが燃えたような音が聞こえる。気になった礼二は閉じた目を開け、頭上を見てみることにした。

 崖の上にいた魔獣が胸に何かが突き刺さっている状態で青い炎に燃え上がっていた。

 突き刺さった棒状の何かに青い炎。以前にどこかで見たことのある光景を思わせた。

 燃え上がる魔獣は次第に炭へと姿を変え、形を無くして崩れ去っていく。

 それを乗り越え、誰かが崖下に捕まっている礼二に手を差し伸べた。顔が逆光で見えなくなっているせいか、誰かが分からなかった。

「礼二、大丈夫!?」

 聞きなれた女性の声が聞こえる。崖の上から手を差し伸べる彼女の顔が太陽を隠すような位置に移動すると、正体が分かった。

「レイチェル…お前、なんでここに……」

「それはこっちのセリフ…よっ!」

 レイチェルは礼二の腕をがっしりと掴み、崖から引き上げる。礼二はようやく危機から脱することができたのだと安堵しながら地面にへたりと座りこんだ。

「危なかった…ありがとう、レイチェル」

「私を抜いて単独行動に走ったからこんなことになるのよ。気をつけなさい」

 レイチェルはやや高慢な態度で礼二に注意をする。

 注意するだけでなく、なぜ自分を連れて行かなかったのかと言わんばかりの雰囲気を漂わせていた。

「あいよ。というかレイチェルは何でここにいるのさ?」

「壊された通信器具の修復が終わって本部への救援要請が取れたのよ。それでみんながほっとしている中に礼二が居なかったことに気付いたの。とりあえず教官に探してくるって言ってから探してたわ」

「そうなんだ…ありがとう」

 レイチェルは膨れっ面をしながら話した。

 救援要請が取れたということは先ほどのヘリは救援部隊なのだろうか。ようやく心休まると感じながら安堵する。

「それで…2人とも何してたの?」

「それは……」

 礼二は少し空へと顔を向けながらどう話せばいいかを悩む。

 頭の中で状況と話の整理をし、レイチェルに説明を行った。


「なるほどね…まさかリディが施設に襲撃した魔獣たちを操作していたなんて……」

「礼二は僕を生かして罪を償わせようとしているんだが、君はどうするんだい? 殺してくれてもいいぜ」

 リディはレイチェルに自分の処遇について問う。

 礼二には「殺してほしい」という願いに答えてくれなかったため、彼女なら考えは違うと判断したからだ。

 彼女は自分自身を「殺してほしい」と願うリディを冷たい目で見つめる。

 少し間を置いた後、彼の問いに対して答えた。

「残念ながらあなたの願いに答えることはできないわ。礼二もそうするつもりなら私も同じようにあなたを扱う」

 レイチェルは普段から自由に立ち回りはするが、最終的な目標は礼二と同じにすることは多い。

 彼の意思を尊重するところを見てみると、レイチェルの動きは礼二によって変わることを示唆していた。

「さて、施設に戻りましょうか」

「そうだな」

「僕は結局生きなきゃいけないのか……」

 レイチェルが施設に戻ろうと提案したところでリディは意識を失った。

「ちょ、ちょっと!」

 リディの首や手首の脈を確認してみると、まだ脈があることを感じた。

「生きてる…よな」

「大丈夫よ。彼、魔力が少し乱れて体に負担がかかっているだけだから命に別状は無いわ。でも、戻ったら医者に見せたほうがいいかも」

「そうなのか…」

 レイチェルはリディの体の状態を冷静に礼二に伝えた。

 魔力が乱れて体に負担がかかっている。恐らく彼が飲んだ薬の影響だろう。だが、命に別状が無くて良かった。

 今の状況で死ぬことは無いことを知り、礼二は内心喜びながらリディの寝顔を見ていた。


 礼二とレイチェルは訓練生寮へと向かうため、疲労で倒れているリディを担ぎながら森林の中を歩いていた。

 数分間歩いても歩いても森の中から抜ける様子は無い。出発日に船から訓練場までの道のりを歩いている時のことをデジャブに感じた。

「ダルイな…壮大な訓練を受けたはずなのに……」

「戦闘後なら仕方ないでしょ。リディの体の重心をこっちに預けていいわよ」

 レイチェルは礼二に気を使ってリディの体を寄せた。そのお陰か、彼を担いでいた時の体の重さは軽くなり少し楽になった。

 それでも森の中は足場が悪くてとても歩きづらく、2人の体力を蝕んでいく。

「リディさん、なんであんな目にあったんだろう……」

 礼二は寂しそうに呟いた。

 彼から聞いた周囲からの扱いや反応についての話。そして自分が原因で家族が苦しんでいたこと。

 それを思い出すたびに心が苦しくなっていた。

 魔術は人を助けるために使うものでは無いのか?

 なぜ魔術を扱う人たちを非難するのだろう。

 礼二は非難してきた人たちの気持ちが分からないでいた。

「それは仕方のないことじゃないかしら」

「えっ……」


 レイチェルは魔術師が差別されることに肯定しているかのような口ぶりだった。

 彼女の予想外な発言に礼二は戸惑いを隠せなかった。

「それってどういうことだよ……」

「それについては前に話したと思うけど……」

 前にも話した…魔術師が差別されることについて…話したっけ?

 少し記憶を辿ってみるが、あまり覚えていない。礼二が頭を悩ませていると、レイチェルは答え合わせをし始める。

「魔術っていうのは魔力を持っている私達は扱えるけど、普通の人たちは使えない。魔術を扱える魔術師は普通の人たちから見れば嫉妬の対象なのよ。しかもそれを使って助けるとなれば、最終的に自分たちを見下す存在だとか言い出すぐらいだし。理由はただの嫉妬と、それを使える魔術師への(おそ)れ。それだけよ」

 レイチェルの言葉はどこか冷たいように感じた。彼女の生きていた時代から魔術師は差別、弾圧される時代だったのだろうか。

 礼二は魔術師でいることの裏側を見てしまったような感覚に見舞われた。

「どの時代も人の考えることは一緒ね」

 人間に失望してしまったようなレイチェルの呟き。彼女は口にしていない素振りを見せたが、彼女の発した言葉は礼二の耳には届いていた。


 森の中をさらに歩いて10分後、礼二とレイチェルはリディを担いだまま屋外訓練スペースまで辿り着いた。

 スペースの中心には運搬用のヘリが着陸しており、訓練生たちは荷物を持って次々と乗り込んでいる。

「ん、3人ともどうにか間に合ったようだな。荷物を整えて早く乗り込め」

 ヘリの中に入り込むように誘導をしているガトーに見つかって指示を受ける。

 話すべきか、話さないべきか。礼二はリディのやっていたことについてガトーに話すかで悩んでいた。

 誰かに話が漏れてしまえば帰り道の中で彼の命に保障はないだろう。しかし、話さなければ「何があったのだ?」と問われ続けるのみだ。

 どうするべきかで悩んでいると、レイチェルが耳元で囁いてきた。

「リディのこと、話していたほうがいいわよ。何かの弾みでバレてしまいそうならどうにかしてくれるかもしれないし」

 先に口裏を合わせておけと言いたいのだろうか。確かにそれであれば少し保険を掛けられて安心だろう。

 礼二はレイチェルのアドバイスに従って、ガトーにリディのことを話すことにした。

「少佐、少しよろしいでしょうか?」

 彼の言葉にガトーは不思議そうに顔を向ける。

 そして、ガトーの耳元でリディが襲撃の主犯格であることを話した。

「そうか…であれば、体調面も含めて次の搬送の時に運んでもらうことにしよう。あと君とフラッド一等兵は次来るヘリに乗って欲しい」

「承知しました。配慮いただきありがとうございます」

 ガトーはリディの対応について冷静に判断する。そして彼の近くにいるようにしてくれたのか、次の搬送で運んでもらうようにしてもらった。

「おい誰か、こちらに負傷兵がいる。担架を準備しろ。そして神原、マッケンジーはそこに寝かせろ」

 礼二がリディを担いでいるレイチェルの元へと向かうと、ガトーが職員の誰かに担架の手配を行っていた。彼はそのまま眠ったままのリディを首で示し、設置された担架に向けて顎を振って「これに寝かせろ」と指示を行った。

 2人はリディを担架に寝かせるように下ろして寮にある荷物を取りに行き、次に来る運搬用ヘリで修練の島から出た。

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