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CODE-D  作者: ryu8
2章 現実を知る者
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2-6.タイマンエキシビションマッチ

 ピクニック訓練を終えての2日間、ずっと体力トレーニングの日々だった。

 別の訓練を2日目から始めたのだから、もう単純な体力トレーニングをすることは無いと思っていたのだがそうではなかったようだ。

 基本的には初日にあった屋外訓練スペースの外周を数十周走り回り、それが終わった後は特別に特設されたアスレチックコースを進むというものである。

 設置されているアスレチックは、忍者の名前を由来とした番組に出てくるものを想像させるぐらいの出来栄えだった。

 訓練の内容としてはこのアスレチックコースを制限時間内に終わらせきれるように乗り越えていくというもの。明らかに某番付番組を元にして考案された訓練に思える。

 礼二たち訓練生は死に物狂いでアスレチックに挑むのだが、万全の体力ではないためか軽々とクリアするのは難しい。

 しかし、コースを進めていくうちに子供の頃にアスレチックを遊んで楽しんだことを思い出したのか、なぜか楽しく感じてくるようになっていた。

 それを他の訓練生も感じていたのか、コースに失敗しても苛立ったりせずに笑いながら去っていく。

 鬼畜な訓練ではあるのだが訓練生たちのやる気が削がれる様子が無い所を見ると、鬼畜というほどのものでは無い様に思えてくる。

 同時に体が慣れてきたのか、2日目にアスレチックコースを進んでいる間は訓練が楽しいと思うようになっていた。


 単純な体力トレーニングとアスレチックコースを進み続ける訓練を2日続けると、次に始めたのは戦闘訓練だった。

 銃を使った射撃、剣など刃物を扱った接近戦、魔力を用いた魔術訓練などと選択肢があり、各訓練生たちは自由に選んで己の戦闘技能を高めていった。

 礼二は接近戦と魔術訓練、レイチェルも礼二と一緒に接近戦の訓練を受けて己を鍛えていく。

 これも2日間続くことになり、礼二は接近戦での戦闘技能、魔術についての訓練を中心に過ごしてきた。

 特別訓練中、体力トレーニング3日分、ピクニック1日分、戦闘訓練2日分が終了すると、訓練は新たな課程へと進み始める。


 ◇ ◇


 特別訓練8日目。

 長いようで短く感じた特別訓練は、いつの間にか1週間が経過していた。

 最初は鬼畜な訓練ばかりで全て終わらせきれないともう帰れないとばかり思っていたが、全くその様子が無くて安心していた。

 礼二を含めた訓練生たちは屋外訓練スペースに集まり、ガトーが来るのを待っていた。

 待っている間の周囲の人たちは自分の身の上話などの雑談で盛り上がっている。

 これまで受けてきた厳しい訓練。他の人たちと苦しみや辛さを共に味わったのが功を相したのか、いろんな人たちが会話で楽しんでいる様を良く見るようになった。

 だがしかし、礼二は人見知りが激しめな性格なため、他人と話せるのは未だレイチェルとリディとチェルシーの3人だけだ。

 数分後、ガトーは訓練生たちの目の前に現れ、周囲はしんと静まり返った。

「今日は貴様ら全員で1対1の試合をやってもらう」

 今日の訓練メニューを言い渡される。今回も戦闘訓練か体力トレーニングをするかと全員思ったのだが、今回は違っていたようだ。

 訓練生たちは驚きを隠せないまま、呆気に取られていた。

 そんな彼らを気にせずガトーはそのまま進行を続けた。

「ここに事前に用意した対戦表がある。これに従って試合をしてくれ」

 そう言いながら、手に持っていた筒状の入れ物から大きな紙を取り出す。

 ガトーはそれを広げて訓練生たちに見せ付けた。

「『タイマントーナメント』? なんかトーナメント形式に人の名前が割り振られているぞ」

 リディは不思議そう礼二に話しかけた。

 大きな紙には訓練生たちの名前がトーナメント参加者のように1人1人記載されている。

 人数は約30名。全員一戦ずつやるとなると、1回戦だけでも15試合近くはある。

 自分の番が来るまで長丁場になることが予想できた。

「左から順に試合をしていくぞ。第一試合に記載されている者、前へ出ろ」

 そう言われて呼ばれた訓練生たちは、屋外訓練スペースの前に出る。

 呼ばれた訓練生はやや戸惑いながらも前へ出て、ガトーから2種類の武器を見せられた。

「この2人の試合に乗っ取って、そのままルール説明を行う。両者は互いに私が指定した剣か銃を選んでもらう。その武器を活用しつつ相手を撃退せよ。撃退と判定するのは、これ以上の交戦は不可または相手がギブアップするまでは試合を続ける。ただし、魔術の心得を持つものは魔術の使用は禁ずる。ルールは以上だ。

 お前ら、手加減はせずに立ち向かえ!」

 ガトーの勇ましい声が訓練スペースの周りに響き渡る。

「おおおおおお!!!」

 彼の雄たけびに呼応するように訓練生全員が声を上げ始める。

 体力トレーニングや戦闘訓練だらけでいろいろ鬱憤が溜まっていたのだろうか。それを発散させられる機会が得られて嬉しいのだろう。

 訓練生たちはルール説明を受け、第一試合で最初に割り振られている2人は試合を始めた。

 礼二とレイチェルは自分たちの番が来るまで暇になってしまったので、試合で荒ぶる訓練生を眺めてみていることにした。


 ◇ ◇


 約1時間後、第5試合が終了し、先ほどまで戦っていた訓練生2人が訓練スペースの中心から去った。

 これまでの試合を見ていると、全員一般人とは思えない超人的動きばかりが見られた。

 それもそのはず。今日まで受けてきた訓練の数々は、体力だけでなく1人1人様々な動きが出来るようにするためのものだ。

 この実戦形式な試合は訓練を受けていて1人1人の身のこなしを見るためのものであると礼二は感じ取った。

 そう思いながら試合の審判役であるガトーの方へと目を向けると、対戦している2人の動きを見て喜ぶように頷いていることに気付いた。

 やっぱ狙ってたんかな……

 それであれば脳筋と見てごめんなさい。あなたのことを熱血バカと思っていました。

 礼二はガトーに対する印象を改め直し、次の試合が始まるのを待っていた。

「第6試合、神原礼二とカトル・ガーラン。前に出ろ」

 ガトーに呼ばれて、礼二はそろそろ自分の出番であることに気付いた。

 早く訓練スペースの中心に行かなければとは思うのだが、自分の戦い方が見られる点と初めて魔術無しでの実戦をする点で体に緊張が走っていた。

 礼二がドギマギしていると、背中に何か衝撃を与えられる。

「行ってこいよ」

 リディが礼二の背中を押し出すようにたたき、前に進むようにしてくれたようだ。

 彼が笑顔で言う後ろで、レイチェルも少し微笑んでいる。

「ありがとう」

 礼二は快く送り出す2人に対して感謝の意を示し、訓練スペースの中心へと歩み始めた。

 そういえば対人戦はバトラ以外の人とはやったことが無いな。

 初めて行う他人との戦闘で心が躍る。この感覚で礼二自身も戦闘を楽しみにしていたことが分かった。

 中心へと辿り着くと、ガトーが2つの武器を持って目の前に立っていた。

「神原、君はどの武器を使うんだ?」

 提示されたのは一本の長剣と一丁のオートマティック拳銃。

 礼二は迷わず長剣を選んだ。

「ほぉ…挑戦的な選択をするな……」

 ガトーは面白そうに銃よりも剣を選択する礼二を見つめた。

 なぜならば、これまでの試合で剣を選ぶ者が居なかったからだ。

 大体の人の戦い方として銃でけん制をしながら敵の懐に潜り、格闘や至近での射撃を狙うものが多い。

 礼二が剣を選んだと判断した上で相手が銃を選んでしまえば、近づく前に攻撃され続けるのは目に見えていた。

「度胸あるねぇ兄ちゃん!」

 彼の勇気ある選択に周りの訓練生たちは歓声を上げた。

 面白がってなのか、それとも本気で褒めているのか分からない感じだった。

 礼二が武器を選択した後、相手の訓練生・カトルが武器を選択する番となった。

「君は戦いを舐めているのか? それとも何かの遊びだと考えているのか? 銃か剣で選択するならば銃だろうに……」

 カトルは苛立つように礼二に対して言い放った。彼の態度に対し、礼二はバカにされているように感じて苛立ちを感じた。

 人が選ぶ武器は自由だろうに……あいつだけには負けたくない。

 相手に対して対抗意識を燃やし、固い決意を抱く。

 そんな礼二を気にせず、カトルは当然のように銃を選択した。

 彼が銃を選択したのを確認したガトーは、実際ある弾丸の寸法で作られたゴム弾が入ったマガジンを2個渡した。

「これは面白いことになりそうだな」

 ガトーは微笑みながら2人の試合の邪魔にならないように距離を取った。

 この試合の行く末を楽しみにしているように感じられた。

「2人とも、自分の得物がどのような物かを確認したか? それが終わり次第始めるが」

「私は構いません」

「いつでもどうぞ」

 礼二は剣先を、カトルは銃口を互いに向けて、試合開始の合図が出るまで待機する。

 ガトーは2人を様子を交互に見ながら、開始の合図にあたるフラッグを振り上げ始めた。

「そうか、それではいくぞ。第6試合、神原礼二VSカトル・ガーラン。互いに見合って……始め!!」

 ガトーは合図と共にフラッグを勢いよく振り下げた。タイマントーナメント、礼二の初戦が始まりを迎える。


 試合が始まって1分が経過した。

 礼二は間合いを詰めるために接近し、カトルは銃で一方的に攻撃する為に彼から間合いを取りながら銃を撃ち続けている。

 互いに一瞬の隙も許さない試合展開に、周りの訓練生は惚れ惚れと見ていた。

「あの子凄くないか…? さっきから銃弾を避け続けてるぞ……それどころか相手に接近までしようとしてやがるぜ…」

「あの子だけじゃない。あのカトルってやつも中々だよな。あの子の早い接近も捌いて距離を維持してるし」

 礼二が弾丸を避けていられる理由―――それは相手の向ける銃口をずっと見続けていることにある。

 なぜならば、銃口を見続けていれば相手の放つ弾丸の軌道が予測付くからだ。あとは相手の目を見続けることも出来れば予測が付きやすいのだが、残念ながら今の礼二にはそのような力は備わっていない。

 しかし、それは単発で一直線に放たれる銃に対して通用することであり、自動小銃や散弾銃に対しての対処は不可能である。

 この手段でどうにか銃から放たれる弾丸を避けながら相手に近づくことができるのだが、問題は相手の接近戦での対処に強いことにあった。

 こちらが近づいて来ようものなら足元に銃弾を打ち込んで気を逸らし、その隙を狙って蹴りを打ち込んで距離を取ったり、体勢を崩させて連続攻撃へと持ち込んだりなど一方的な試合展開へと持ち込まれていた。


 思うように近づけない……

 相手の適切な間合い管理に礼二は苦戦していた。

 いつもであれば魔術による身体能力の底上げで一気に接近を図ったのだが、今回はそれを制限しなければならない戦い方となる。

 毎日魔術を使いながら戦闘訓練を受けていた礼二にとっては、苛立つ戦いになっていた。

 苛立つのであれば最初から銃を選択しておけば、というところではあるが、礼二は剣を使っての立ち回りが体に慣れているからこそ選択している。

 相手にかっこつけで剣を選んだと思われているからこそ、この試合には負けたくない。

 この思いが礼二の集中力を途切らせないようにしていた。

 負けたくない思いはあれど、現実は難しい。

 今、礼二が敵対している相手は、接近戦に慣れているような感じだ。

 狙いはリロードのタイミングだな。

 礼二はカトルの射撃を避けながら近づき、隙を窺った。

 相手の向ける銃口をよく見ながらそれからずれる様に体を動かす。

 射線範囲外のところまで踏み込み、長剣で胴体に斬り払いを行おうとする。

「甘い!」

「がっ……!」

 腹に大きな衝撃が走った。

 痛みの感じたところを見てみると、いつの間にかカトルの足先が自分の腹を食い込むように触れていた。

 礼二は相手から繰り出されたカウンターの威力に耐えきれず、声を漏らしながら大きく飛ばされた。

 弧を宙で描くような起動で地面に叩きつけられる。

「クッソ……」

 礼二は悔しさに満ちた表情を浮かべながら立ち上がる。

 先ほどの蹴りは割と効いたらしく、腹にはズキズキと少し間隔を空けながら痛みを発している。

 どうすれば相手に一撃を与えることができるだろう。

 礼二は何食わぬ顔で攻め手を考え始める。

 それに対し、カトルは顔色を変えずに銃口を彼に向けた。

「あきらめろ。剣で銃に勝つのは不可能だ」

 カトルは重く冷淡な声で礼二に警告をした。

 まるで自分が圧倒的有利な立ち位置にいて負ける気が無いと傲慢に立ち振る舞っているようにも見える。

 相手はまだ剣で戦おうとしているこちらに勝てる要素は無いと思っている。

 その傲慢が隙を見つけ出す鍵かもしれない。

「本当にそう言えますかね!」

 ニヤりと口元を緩めながら礼二は右へカトルの周囲を回りこむように走り出す。

「悪あがきか!」

 動きに反応したカトルは咄嗟に銃を撃ったが、射撃の軸が合っていないせいか、礼二の体には当たらなかった。

 彼は1度冷静になり、再度礼二に向けて銃口を向ける。

 礼二が走る先に向けて銃弾を放つ為に引き金を引こうとしたが、銃からはカチッと空撃ちのような音が出た。銃口からは銃弾が出てくる気配は無い。

「ちっ!」

 冷静になったカトルは空の弾倉を銃器から抜き、新たな弾倉へと取り替えようとする。

 礼二が急に動き出して対処に焦っていたせいで残弾数が頭から離れていたようだ。

「この瞬間を待っていたんだああ!!」

 カトルの周囲を走り回っていた礼二は相手がリロードタイムに移るのを視認して急旋回をする。

「クソッ!」

 カトルは苛立ちを吐き捨てた。

 それがスイッチになったのか、カトルは冷静さを取り戻し、近づく礼二を撃退しようと右足による蹴り払いをする。

 さっきまで近づかれた時の対応はこれだけで済んでいたが今回は違った。

「読めてんだよ!」

 礼二は誇るように声を荒あげながら、カトルの右足から体を左にずらして避け、木剣を胴体に当てようとする。

「ぎ…させるか!」

 カトルは上半身を後ろへ反らし胴体に触れようとしていた木剣をギリギリで避けた。

 2人の攻防の様を見ていた訓練生たちは白熱した試合に感極まっていた。

「すげぇぞあの2人!」

「なんだよあの避け方は!」

 盛り上がる訓練生たちの群れの中で見ていたリディ、チェルシーは口を開けて呆然と見ていた。

「神原君ってこんな凄い動きができるんだねぇ……」

「全くだ」

「礼二は本当に凄いわ……」

 2人と違って彼の師にあたるレイチェルだけは、弟子の成長ぷりを誇らしく見ていた。

 彼女が礼二と出会った頃はここまで動けなかったのに今はこの動きだ。

 誰がここまで成長すると思うだろうか。


 上半身を後ろへ反らし、礼二との距離を再び取ったカトルは腰にあるゴム弾マガジンに手をかけた。

 それを銃器に装填しようと手を動かす。礼二はその瞬間を見逃さなかった。

「させるか!」

 ゴム弾マガジンを持った右手に向けて蹴りを放つ。

 胴に対して木剣の大振りからの蹴りに予想が付かなかったせいか、カトルは反応が少し遅れてしまった。

「ちっ!?」

 カトルの左手に礼二の蹴りがヒットし、持っていたゴム弾マガジンを地面に落としてしまう。

 これで相手の銃は封じ続けることは可能なはずだ。

 礼二は今の状況を好機と見て、さらに相手との間合いを詰め、胴に向けて下から斜めに木剣を振り上げた。

 相手の胴への一撃は確定に思われた。

 だがしかし、カトルは左手にあった銃のトリガーガードを盾にして体を庇った。

「今の一撃も防ぎますか…やりますね」

「そういう君もいい反応をする。とてもやりづらいよ」

 カトルの銃と礼二の木剣が鍔迫り合いをして試合は硬直状態へと陥った。

 互いに力を相手に向け続け、次の動きを考える。


 5秒ほどの硬直後、カトルから動き出した。

 木剣を抑えている銃を一瞬腰の前へ引き、大きく力を与え続けている礼二の体勢を崩すように仕向ける。

 カトルの意図に気付いた礼二は体勢を整えようとするも遅かった。

「ぐっ…」

 礼二の額辺りにカトルは右腕の肘を押し込んできた。

 思い切った肘による一撃に礼二は1度気絶しかけたが、まだ倒れず後ろによろけた。

 好機と見たカトルは追加で右手の甲を顔に当てようと振りかかる。

 礼二はそれを姿勢を低くして避け、左の拳をカトルの腹に向けて放った。

 それに対しての反応が遅れたカトルは、彼の拳を腹で受け止めることになる。

「うがっ……」

 思い切った一撃に彼は息を吐き出した。

 腹を抱えるように体勢の崩れた相手の顔に対して、さらに左ストレートを顔に叩き込む。

「ぐっ……」

 カトルは抵抗もできずにその攻撃をまともに受けて大きく吹き飛ばされた。

 自分が相手に飛ばされたことに気付いた彼は体勢を取り戻して戦闘態勢に移ろうとする。

「これで…終わりですよね……?」

 カトルの頭上から聞こえる声と顔の前に向けられる剣先。彼が剣の持ち主へと視線を向けると、そこには礼二がいた。

 現状、カトルは地面を背にして武器がまともに使えない。それに対し礼二は相手よりも高い位置に顔があり、剣を持っている。カトルから見れば状況は最悪だ。

 彼は認めたくない気持ちを少し表にしながら言った。

「……ギブアップだ…」


 静まり帰った中でカトルの声が響き渡った。

「カトル・ガーランに降伏の意思を確認。よって、本試合は神原礼二の勝利とする!」

「「うぉおおおお!!!」」

 白熱した試合の結果に周囲の訓練生たちの歓声が沸きあがる。

 辺りは2人が見せた試合で盛り上がっている様子だった。

「すげぇぞ2人共!」

「良い試合だったぞおお!!!」

 声の中心にいる礼二は、周りの人たちから賞賛を受けて英雄になっている気分になっていた。

「よくあの状況から勝ちに持っていけたものだ。おめでとう」

 ガトーは「よく勝てた」と言わんばかりに礼二を賞賛した。

 なんだかこの言い方は勝てるとは思わなかったような感じに聞こえて少しいらっとする。

 あまり期待されていない感じがして不機嫌な礼二を他所にガトーは次の試合進行を行い始める。

 1回戦終了まで残り9試合。6試合までに1時間かかったのだから残り1時間30分近くはかかるだろう。

 礼二は再び暇な時間を送ることになった。


 約1時間後、1回戦が残り2試合となったところで空の雲行きが怪しくなった。

 空色は灰色がかっていて雨がぽつぽつと降り出してきた。

「雨か」

 礼二だけでなく、他の訓練生も降り始めていることに気付いており、少しずつ騒ぎ始めてきた。

 周りの動揺を感じたのか、ガトーは試合を進行すべきかを考え始める。

「ぬ…これ以上の試合はできんな……全員、屋内に避難しろ。これ以降の試合は中止だ」

 ガトーは雨を理由にタイマントーナメントの中止を宣言した。

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