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CODE-D  作者: ryu8
1章 終わりの始まり
17/67

1-16.獣人化計画(後編)

 礼二の頭の中には嫌な予感がよぎっていた。

 今、追い込まれる状況を鑑みて、犯人は自暴自棄になるはずだ。

 そして、目の前で研究材料が破壊されようとしていて、注射を行う前に「最後の実験を始めよう」と言った。

 そこから考え出される答えは1つ。

「まさか…魔獣の力を得るつもりか…?」

 礼二が声を上げた瞬間、レイチェルは宗治朗に視線を向けた。

 注射器の中にあった液体が全て宗治朗の体の中に注がれていく。

 溶液が空になった後、彼の体はふらついていた。

「…はぁ……はぁ……」

 マッドサイエンティストは息を荒くしながらゆらゆらとしている。

 テンポが速くなるように息の間隔は短くなっていった。

「あ…が…が……がああああああ!!!!」

 彼の顔の肌が崩れていき、口が尖がるように変化していく。

 腕は獣のように太く大きな手に、体の色は赤褐色へと変色していった。


「ガァアアアアアア!!!!!!!」

「なんだあれ!?」

 宗治朗は人の形から魔獣の形へと変貌していった。

 尖がった口から太く重い声が発せられる。

「成功シタ…私自身ガ魔獣ニ変身スルコトニ成功シタゾ……!!」

 宗治朗は自身の研究が成功したことに驚き、近くにあった鏡に映る自分自身を見つめる。

「大成功…」

 彼は魔獣の顔をしながらも分かるほどに光悦の表情を浮かべる。

「人が魔獣になるなんて……」

 魔獣化した宗治朗を見て、レイチェルは驚く。

 彼女が驚くのは当たり前だ。

 本来、魔獣は魔界にのみ存在する生物とされ、魔獣の血を混じ合わせて力を得るなど聞いたことが無い。それ故に、魔獣の力を得た人間は居ないとされている。

 しかし今、レイチェルと礼二の目の前にいるのは魔獣化した人間だ。いや、人間から離れて特別な個体になったと言えるだろう。

「サテ…コノ(ちから)ヲ貴様ラデ試シテ見ルカ……」

 満足し終えた宗治朗は、実験結果の性能テストを行うかのような口振りをする。

 彼は今すぐに動き出すような体勢を取り始めた。

「来るか……」

 礼二とレイチェルは手に持っていた得物を構え、獣人化したマッドサイエンティストの攻撃に備えた。

 両者互いに見合って、宗治朗から動き始める。


「キシャアアアアア!!!!」

 右足を蹴って大きく前に踏み出す。彼は右腕を前に出し、レイチェルに向かって飛び出していた。

 これまでの動きはとても素早く、普通の魔獣とは比べ物にならないくらいの速さだ。

「くっ…!?」

 レイチェルは反応しきれずに槍を前に出しながら魔防壁を構えて衝撃を軽減する。

 そして、あまりの突進の重さに、彼女はその場から大きく飛ばされてしまった。

「レイチェル!!!」

 礼二は彼女のことをコードネームで呼ぶことを忘れる程に動揺していた。

 彼が飛ばされた仲間のことを気にしている内に、宗治朗が懐に入り込む。

「貫ケエエエエェェェ!!!!!」

 宗次朗は礼二の腹に向けて右腕の爪を押し付けるように振り上げた。

 一瞬の動きを見切った礼二はやむを得ず、体内にある魔力の多くを腹に集中して切り傷を抑えようとする。

 宗治朗が振り上げた右腕による一撃は、あまりの大きさに礼二は宙へと飛ばされる。

 宙へと飛ばされ無防備な姿をさらけだす礼二を見て、宗治朗は間髪入れずに飛び込んだ。

「ちっ……!?」

 魔獣化したマッドサイエンティストは、少年軍人に空中での連撃を加えていく。

 礼二の体に5発ほど叩き込み、宗治朗は最後の一撃で彼を地面へと落とした。

 少年は大の字を描くように叩きつけられ、その地点は大きな衝撃でくぼんだ。

「がはっ……」

 休む暇を与えないように宗治朗は容赦の無い飛び蹴りを浴びせようとする。

「やばっ!?」

 礼二は体を無理矢理動かして、ギリギリ回避する。礼二は体を殴られて弱った体を必死に動かして、マッドサイエンティストと距離を取った。

 宗治朗の強力な飛び蹴りによりさらに大きくなったクレーターから煙が立ち込める。


 どうするよ……

 状況は圧倒的に不利だ。宗治朗1人相手ならば問題なかったのだが、獣人化してしまったことにより最悪な状況に陥ってしまった。

 彼は獣人化したことにより、身体能力が劇的にアップし、恐らく魔獣同様の自然治癒を持ち合わせているだろう。

 そして、普通に話せているところから察するに、理性も残っているように見える。

 頭脳が残っていることもあって、考えて動くことも可能という点も一つの脅威だ。

 礼二がそう考えている内に、クレーターに包まれた煙から人影が見えた。

「イイネェ…虫ケラノヨウニ逃ゲ回リナヨ……」

 状況がかなり優位に立たれていることを優越に感じている宗治朗は、バカにしたような口調で礼二を追い詰める。

 少し気を緩んだ瞬間を見定めたのか、レイチェルが宗治朗の後ろから魔術による奇襲を仕掛けようとしていた。

魔導槍(マジックランス)

 宗治朗の頭上から無数の槍が出現して降り注がれる。

 魔力の気配を感じ取った彼は一瞬にして、自身の周囲に魔防壁を張った。

「なっ…!?」

 彼の頭上から降り注がれる槍は、魔防壁に遮られる。

 攻撃が止んだのを確認した宗治朗はレイチェルの元へと突進した。

「邪魔ダヨ」

 瞬きをしている間に彼女の目の前にいるほどのスピード。

 その様を見て、今の彼は人間では出せないようなスピードで駆け抜けることができると礼二は確信した。


 宗治朗は右腕による引っかき攻撃を行う。これまでの動作も一瞬の出来事で、レイチェルは反射的に槍を横にして前方に構えた。

「ぐっ…!?」

 爪による切り傷は防いだものの、魔獣の力を得た腕力を抑えることが出来ずに彼女は大きく後ろへ飛ばされた。

「シブトイ…ナ!!」

 自身の攻撃を1度受けて後退りし続けている彼女に対して、宗治朗は追い討ちを仕掛ける。

 左腕による爪の突きから右腕のフックへとコンビネーションを重ねていく。

 怒涛の攻撃にレイチェルは防戦一方だった。

「……!」

 彼女の顔からは焦りが見える。敵の圧倒的な攻め手に打つ手がないからだ。

 宗治朗は右の拳を中段に構えて大きく正拳突きを放ち、レイチェルとの距離を空けた。

「シネェェェェェェ!!!!!」

 彼は両腕を大きく広げ、魔力を込めたひっかきを彼女にぶつけた。

 大振りな動きに危機を感じたレイチェルは、攻撃の瞬間に魔防壁を張っていた。


「っ……!?」

 さきほどの正拳突きよりも入っている力は強く、彼女はさらに後ろへと飛ばされた。

「ソコデ寝テイナヨ」

 レイチェルが壁まで吹き飛ばされるのを確認した宗治朗は、礼二の元へと再び歩み寄っていく。

 危機を感じ取った礼二は痛む体に耐えながらも立ち上がろうとする。

 ダメだ……

 体が思うように動いてくれない。

 礼二は右腕を伸ばし、複数の魔弾を具現化させ、宗治朗へと放った。

「無駄無駄無駄ァ!!」

 彼は目の前に魔防壁を張り巡らせ、魔弾を正面から防御する。

 まずいな…このままじゃ……

 今の魔弾で魔力が尽きたのか、体の内から魔力を感じなくなっていた。


 魔力はそんなに使っていただろうかと考えていたが、大体が相手からの攻撃から身を守るために使っていたことを思い出して後悔していた。

 なるほど…今の状態で防御にばっか魔力を当てていたら、攻撃に使う分は無くなるよな……

 魔力の配分ミスである。

 魔術師の戦闘はいかにして魔力を残して様子を見つつ、敵を仕留めるかの戦いだ。

 魔防壁を張ることは敵の攻撃を直撃から間逃れるための最終手段であり、それを頻繁に使用させることは術者の魔力を削ぎ取ることに繋がる。

 してやられたな―――礼二は自然と不利な状況に持ってかれたことに気付き、焦りが加速する。

「オヤオヤァ…? 魔力ハ尽キチャッタノカナ?」

 宗治朗は下に見るかのように礼二に問いかける。

「………」

 礼二は無言のまま沈黙を貫き通そうとしていると、宗治朗は彼の元へと走り始めた。

「ヤッパリ無インダネェ!!」


 魔力が尽きたことを悟り、彼は魔力が枯渇した魔術師の下へと突っ込み始める。

 先程よりも体力が回復した礼二は、残った体力で戦闘態勢を取り始める。

「はあぁぁぁぁ!!!」

 動かない体を無理矢理動かすように剣を両手に持って振り下ろして迎撃を試みる。

 だがしかし、そんな単調な攻撃に対し、宗治朗は剣を薙ぎ払って対処した。

 剣を弾き返されると同時に、礼二は左に吹き飛ばされる。

「ぐっ…!」

 宗治朗は彼の元へと歩み寄り、首を掴んで体を持ち上げる。

 そのままマッドサイエンティストは彼の首を絞め始めた。

「ダー…ク…!」

 今にも礼二が殺されそうな状況なのに、レイチェルはその様を見ていることしかできなかった。

 どうにかならないのか…!

 頭に供給されていく酸素が少なくなっていくのを感じる。このままいけば死んでしまうのが目に見えていた。


「君サエ…君サエ居ナケレバ…」

 宗治朗は醜い獣の顔をさらに歪ませて呟いている。

 思い出すように呟かれる声は恨みが篭っているように聞こえた。

「君サエ居ナケレバ…『獣人化計画』ハ綺麗ニ進ミキレタノニィィ!!!」

 恨みの一言を言い出すと、獣人が掴んでいる礼二の首にかける力が強まった。

 さらに脳への酸素供給が少なくなる。

 どんどん酸素不足がひどくなってきた礼二の意識は次第に遠くなっていった。

 ヤバイ……力が入らなくなってきた…

 死への抵抗か、彼の体は震えている。

 今度こそ…死ぬのか……

 礼二は生きることから諦めるように考え始めた。

 死の間際を感じたのはこれで3回目だ。頼みの綱に当たるレイチェルは宗治朗との戦いで動ける様子ではないようだ。


 もう本当にダメかもしれない……

 目の前に映る景色がどんどん見えなくなってくる。

 礼二は霞んでいく景色の中で、1つの思いを募らせる。


 死にたく無いよ…力が欲しい…力さえあれば……!


<力が欲しいか?>


 強い思いを頭の中で繰り返していると、意識の奥底から重く渋い声が聞こえてきた。

 聞いているだけでも体の震えが止まらないぐらいに恐れを抱くような声。

 お前は誰だ―――声の持ち主に対して聞こうとした瞬間、頭の中で映像が流れ出す。


 前に見た夢、レイチェルから見せられたあの惨劇に立ち向かう一人の青年の戦う様を。


 礼二の体から黒い光が立ち込める。

「ナ、何ダ!?」

 宗治朗は首を掴んでいる人間から、唐突に何かが溢れ出す様に危険を感じて手を放す。

 彼は少しだけ黒い光に包まれる何かから距離を取り、様子を見始めた。

 光は最初だけ大きく、炎のように舞い上がったが、時間が経つごとに姿形は安定してきた。

 最終的に黒い光は、礼二の体の中に落ち着いた。目を閉じていた彼は瞼を少しずつ開き―――

「これ…は…」

 自身の体の中に何かが入っているような感覚に見舞われた。

 先程まで感じていた体の虚脱感は消え、残り少なかった魔力も回復していた。

「すげぇ…力がみなぎってくる……」

 礼二は両手を見つめ、溢れ出る力を感じていた。

 これなら…やれる!

 頭の中に響いていた声の主は本当に力を貸してくれたのか―――そう思ったのだが、真偽の確かめようが無いので疑問については置いておく。


 彼は内に秘めた魔力を表に出そうと頭の中でイメージする。

 普段通りの手順で魔力を表に出していると、礼二は一つ違うところに気が付いた。

 放たれる魔力の色が青ではなく、黒なのである。

 体の中を巡る黒い魔力は、普通の魔力に比べて体に馴染んでいるような気がした。

 殺せ…壊せ―――魔力を体の周りに出していく内に、頭の中に響いてくる憎悪に満ちた声。

 声を聞いているだけで目の前の敵を容赦無く殺せそうな気がした。

 声は時間が経つと共に数が増えていき、頭の中で無数に響いていく。

 殺せ…壊せ…ーーーずっと聞いていると、暗示をかけられているような気がした。

「うわぁあああああああ!!!!」

 暗示をかけられるように聞こえ続ける声に耐えられなくなった礼二は、我慢していた何かを爆発させるように叫び始めた。

 その様を見た宗治郎は1つ確信した。

「ナルホド…君ハ得体ノ知レナイ(ちから)ニ抗ッテイルトコロカ…イイネェ」

 マズい…勘付かれてしまった…


 大きな力があったとしても自由自在に扱えなければ何の意味も無い。

 目の前にいる今の宗治朗にとって、この力は大した問題では無いのだ。

 抑えないと…抑えないと…

 宗治朗は得体の知れない力に抗っている礼二を見て笑いながら、一歩一歩近づいていく。

 収まれ…収まれ…

 体の全神経を研ぎ澄ましても力の暴走は止まらない。

 マッドサイエンティストが礼二の目の前に立ち、心臓を右腕の大爪で貫こうとすると奇跡は起きた。

「はぁああああ!!」

 礼二は周囲に纏わり付いた黒い魔力を周囲に散布させた。

 纏わり付いていた魔力が無くなり、体のダルさも一通り解消される。周囲に散布された黒い魔力は、宗次朗を拒むように彼を数メートルほど後ろへと退けた。

「ナ、何ダ…今ノハ……」

「はぁ…はぁ…何とか制御できたか……」

 彼は苦しそうに溜息をつく。

 礼二は試すように体の内にある魔力を外側へと放出した。

 黒い魔力が放出され、彼の周りを覆っていく。

 これならいける……!

 礼二は左手から黒い光を纏った光剣を発現させ、両手で構えて突撃する。


「チッ…来タカ…!」

 敵の攻撃に対して宗治朗は迎撃体制を構える。

 目の前から来る敵の攻撃は直線的で、振り下ろす動きまで見えるような感じだった。

 そんな攻撃…!―――宗治朗は礼二の攻撃に対して右腕で防御しようとする。

「であああああああぁ!!!!」

 礼二は黒い光剣を宗治朗の頭めがけて、彼の右腕に剣を振り下ろす。

 剣は右腕の硬い皮膚を切り裂き、そのまま右腕を切り落とした。

「グギャアアアアアアアア!!!!!」

 右腕は宗治朗の足元に落ち、切断面から血が吹き出始める。

 本体は痛みのあまりに礼二から距離を取るように後ろへ仰け反った。

「痛イ! 痛イィィィィィ!!!」

 悲鳴を上げるように大きな遠吠えを上げながら、彼は後ろへと下がっていく。

 魔獣になったのに、なぜこんなに痛みに苦しんでいるのだろう―――礼二はそう感じたが、今目の前にいる相手の元々は科学者であったことを思い出す。

 獣人化したとしても素体や精神が貧弱であれば、弱者であることに変わりは無い。

「へぇ…今の力ならやれるって訳だ……」

 礼二はにやりと微笑みながら黒い刃の刃先を彼に向ける。

 黒い魔力を纏った少年の殺気に感づいた獣人マッドサイエンティストは怯える。


「ク、クルナァアアア!!!!」

 彼は悲鳴を上げながら目の前に魔防壁を展開した。

 礼二は展開された防壁を見ても立ち止まりはせず、そのまま直進し続ける。

「はぁああああ!!!」

 黒い刃を縦や横に振り、防壁に傷を入れ始める。

「ナッ!?」

 宗治朗は強大な魔力で作られた防壁に剣で傷を入れる少年に恐れを抱いた。

 少年は魔防壁の前で剣をぶんぶんと振り回し、壁に付いているヒビは大きくなっていく。

「ア…アァア……」

 宗治朗は絶望を目の前にしたような喪失感漂わせる表情をし、膝を地面につける。

 次第にヒビは壁全体に行き渡り―――

「これで…終わり!」


 礼二が黒い剣を大きく振り下ろし、宗治朗の目の前にあった魔防壁は崩壊した。

 破壊された防壁は魔力の結晶として辺りに散らばっていく。

 礼二は隔たりの無い宗治朗との距離を詰め、右手に持っている黒い剣の剣先を彼の前に差し出した。

 こいつが…事件の犯人か……

 これで一連の事件が終わりを迎える。彼を今捕らえれば被害はかなり少なくなるかもしれないが、それではこれまで被害に遭ってきた人たちに申し訳がつかない。

 どうする……

 礼二は今すぐにでも犯人を殺せる状況を手にして、殺すか否かを惑わされていた。

 向けている黒い剣の剣先を通じて、礼二の手は震えている。

「ヘェ…迷ッテイルンダェ……」

 少年の迷いを察したのか、宗治朗は彼に向けて揺さぶりをかける。

 黙れ……

「実験ノタメニ多クノ人間ヲ犠牲ニシテキタカラナ」

 黙れよ……

 マッドサイエンティストは礼二の精神をつつくように一言一言発していく。

「君の両親を殺すように仕向けたのは私だよ」

 宗治朗の獣人化は解け、ガラガラだった声も鮮明に聞こえてきた。礼二の耳に一言一句漏らさずに。

「!?」


 意味を理解した礼二の中で何かが弾けたような気がした。

 心の内に抑えるように言いつけてきた感情が一気に溢れ出そうとする。

「うあああああああああ!!!!」

 理性のタカが外れ、礼二は右手に持っていた黒い剣を振り上げた。

 少年が壊れた瞬間を見て宗治朗はにやりと微笑む。

「礼二やめて!!」

 いつの間にか起きていたレイチェルは礼二に対して叫ぶも、彼は動きを止めようとはしなかった。

 剣は大きく振り上げられ、思い切り下に振り下ろされる。

「ぎゃあああああ!!!!!」

 宗治朗の叫び声が聞こえた瞬間、レイチェルは一瞬目を閉じる。

 数秒後、彼女は現実を見ようと瞼を少しずつ開けていく。

 宗治朗と礼二の様子を見てレイチェルはほっと一息を付いた。

「な…ぜ…だ……」

 マッドサイエンティストは驚きながら礼二を見つめる。

 礼二は冷たい目をしながら答える。

「俺はあなたと同じにはならない。目的のために人を殺す気は無いし、憎しみに囚われる気もない」

 そう言われた宗治朗の膝には黒い刃が突き刺さっている。

 確かに礼二は事件の犯人に復讐をしたいと願って軍隊には入ったが、殺すまでは考えていなかったようだ。


 完全に否定された宗治朗は、未だ純粋でいようとする少年に対して言葉をかける。

「そんな理想論を持ったままでこの世界を生き残れるかね……誰だってそれを1度は願い、叶えきれないから人を殺すんだよ」

 不審な笑みを浮かべながら、宗治朗の目は虚空を見上げていた。

 礼二はそんな彼を見ながら、耳に掛けてあるイヤホンを自身の耳に押し付け―――

「こちらダーク、犯人の確保に成功しました。私とリリス共に軽症のため、回収を求めます」

 機械的な声で司令部に状況の報告をし、礼二とレイチェルは特殊部隊の面々が来るまで待機した。

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