【31】番外編:イーサン過去物語 恐怖の方程式、自分の上司=自分より全てが上。〜備品のように博士号を取る新人捜査官〜
皆さん、ご存知だろうか?
イーサン・クロフォードの恐怖の方程式を。
それは、
自分の上司=自分より全てが上
である。
もちろん、S.A.G.E.でもその恐怖の方程式は、イーサンの上司に当てはめられる。
当時のイーサンの上司が、やっと昼休みに入り、
「よし、今日はサンドイッチでも食べるか……」
と、人類として当然の回復行動をしようとした瞬間――
新人捜査官、イーサンが静かに問う。
「昼食ですか……?」
イーサン本人は責めてない。
ただの確認だ。
しかし、上司からすると――
(だからーー!! その“昼食ですか……?”の間は何!?
昼食は驚くものじゃない!! 人間は昼に食べるの!!
君みたいに“水で結構です”で、午後の捜査に行けないの!!)
しかも、イーサンの目が真剣だから、上司は余計に食べづらい。
そこで、上司が気遣う。
「クロフォードくんも何か食べるか?」
しかし、イーサンの答えはNOより恐怖だ。
「水で結構です」
上司が心の中で悲鳴を上げる。
(出た!! 水!! また水!! 君は水力発電なの!?)
そして、イーサンは昼食を取る上司を見て、また静かに言う。
「午後の判断力維持のためですね。成る程」
上司はサンドイッチを握りながら、心の中で再び叫ぶ。
(そう!! そうだけど!!
もっと普通に“お腹空いたから”でいいの!! 人間は燃料が必要なの!!)
そして、その恐怖の方程式は、イーサン本人にも向かうのだ。
ある日、イーサンが科学捜査にあるとベストな博士号の証書を、スッと上司のデスクに置いた。
「これで科学捜査官にもなれますか?」
イーサンの言葉に、上司の声が裏返る。
「……いつ取ったの!?」
イーサンは静かに答える。
「もちろん、夜学です。職務の後に」
上司の心が一気に騒がしくなる。
(待って待って待って!!
君、一番早く出勤して、一番遅く退勤してるよね!? 現場も出てるよね!? 報告書も完璧だよね!? 射撃訓練もしてるよね!?
その上で夜学!?
睡眠は!? 食事は!? 人間生活は!?)
しかも、イーサンはいつ何時も乱れない。
髪もスーツも顔も声も通常運転。
だから、上司の心は騒がしいままだ。
(寝てない……? いや、でも乱れがない……。
寝てるのか……? いや、いつ……?)
騒がしさから、混乱へ。
そこで、うっかり上司が訊いてしまう。
「どうやって時間を作ったんだ?」
イーサンは淡々と話し出す。
「まず、移動時間をすべて学習に充てました。次に――」
そうして、微動だにせず一時間くらい説明し始める。
上司は心の中で悲鳴を上げる。
(聞いた俺が悪かった!! また全部説明してくれる!!
この男は“簡単に言うと”が存在しない!!)
しかも、イーサンは本気で、
必要な資格を取った。
科学捜査官としての権限を広げられる。
任務効率が上がる。
以上。
くらいの感覚なのだ。
しかし、上司からしたら、
軍人としても優秀
捜査官としても優秀
射撃もできる
博士号も取る
水で動く
という完全に、
「クロフォードくん……君は本当は何歳で何者なの……?」
という疑問の対象になる。
だが、イーサンにとっては、
S.A.G.E.の職員は殆ど科学の博士号を持っている=自分も持つべき
という恐怖の方程式の結果に過ぎない。
しかも、
上司も持ってる=自分も持つべき
という恐怖の方程式も当てはめられているのだ。
普通の人類なら、
「博士号持ちが多い職場なのか……すごいな」
「自分の専門分野で貢献しよう」
「必要なら勉強しよう」
くらいで良い。
しかし、イーサンは、
足りない
取る
職務後に夜学
完了。
イーサンの感覚では、本当に、
「科学捜査の博士号があれば、証拠解析・現場判断・令状申請・専門家証言までの流れが短縮できる」
「なら取る」
「以上」
それだけ。
上司からしたら、
(博士号って、銃の追加マガジンみたいに揃えるものじゃないんだよ、クロフォードくん……!!)
である。
しかも、上司が他の博士号も持ってるなら、イーサンの中ではなおさら、
足りない分野を補完しただけ
なのだ。
上司はしみじみと言った。
「科学捜査のために博士号を取ったのか……」
イーサンは淡々と答える。
「はい。これで現場判断の精度が上がります」
上司は心の中で悲鳴を上げるしかなくなる。
(いや、君はもう十分上がってる!! それ以上、速度を上げないで!! 周りが追いつけない!!)
しかも、イーサンは普通に、
「あの時、勉強していて良かった。では次」
となる。
イーサンにとっては、科学捜査の博士号も、努力の勲章ではなくて完全に実務装備。
事件現場で、普通なら専門家を呼んで確認するような場面でも、イーサンが淡々と判断して、
「あの時、勉強していて良かった。では次」
と言う。
周囲は大混乱だ。
「軽い!!」
「博士号の重みが軽い!!」
「“勉強していて良かった”で済む量じゃない!!」
「しかも、もう次に行った!!」
しかし、イーサン本人は本当に、
必要な知識が必要な場面で役に立った。
以上。
である。
上司にしたら――
(違う違う違う!!
私は長い時間かけて取ったの!! 君が今から“揃える”みたいに取るものじゃないの!!
博士号は備品じゃないの!!)
そして、その話を聞いたチャールズは――
(チーフ!!
それは、学生時代に単語帳を見ておいて良かった、みたいな言い方じゃないんです!!
博士号!! 博士号ですよ!?
“では次”で流さないで下さい!!)
そうして、チャールズも次にいく。
(チーフ! 何個博士号持ってるんですか……!!
この期間、軍にいましたよね……! あ! 軍にいても大学行けるか……!
でも、少佐になってる……!
まず、何を食べてるのか聞き出さなきゃ……!!
いや、隠し部屋が最優先なんだよ!! そこは譲れない❤️ ご存分に❤️)
そして、今日も自称ネットの海を泳ぐマーメイド、チャールズが無駄にパソコンの前にいる。
〜fin〜
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