【27】俺だけ、ピクニックで20キロ担ぐ文化を知りません。〜最強捜査官の援護が最恐すぎる〜
そして、午後はキャンプへ。
キャンプと言っても、日帰りのピクニックのようなものだ。
だが、チャールズは用意されたリュックを見て、我が目を疑った。
(裏山の丘でピクニックするんですよね!? なぜ、軍用品みたいなリュックが三つあるんですか……!? しかも、どデカい……!!
小さい二つの普通の登山リュックは……カリスタとヴィヴィアンだよな……。 俺とカリスタじゃない……絶対……)
まだリュックを背負う前から、絶望がチャールズを襲う。
ひょいと、どデカい軍用リュックを背負うベックが、楽しそうに言う。
「楽しみだな! 天気も良いし!」
カリスタもスッと小さなリュックを背負うと、にっこり微笑む。
「珍しいお花も咲いてるみたいだし、小さな湖もあるのよね! 本当に楽しみ!」
ヴィヴィアンもさっと小さなリュックを背負い、笑顔を弾けさせる。
「それに! みんなでピクニックなんて、ワクワクしちゃう!」
チャールズも恐る恐るリュックを背負おうとするが――
(お、重たい……!! 何が入ってるんですか、チーフ!! 小高い丘の上でピクニックするのに、この重みは何なんですか!?)
余りの重量に、言葉を発するどころか、心の中で悲鳴を上げることしか出来ない。
そんなチャールズを、ウッキウキの巨人が急かす。
「チャーリー! 早く背負えよ! 出発♪」
チャールズは一旦リュックを置くと、掠れた声で言った。
「ベック……! このリュック、重くない!? 何が入ってるの!?」
ベックが薄いブルーの瞳をまん丸くして、ワハハと笑い飛ばす。
「何って、お前は食料品だな! 俺とイーサンよりも少ないぞ? 20キロぐらいか? 俺たちは30キロってとこだな!」
再び、チャールズが心の中で悲鳴を上げる。
(待って待って待って!! 20キロの中身とね、軍用のリュックの総合計を考えて! 俺は人生で初めて、20キロを担ぐの!!)
それでも、何とかリュックを背負うチャールズ。
すると、イーサンの低い声が響いた。
「では、出発。 各自、コンパス、無線は直ぐに手の届くところに。 地理は頭に入れてあるな?」
ベックがニッコニコで「おう!」と答える。
早くピクニックに行きたくて、笑顔が止まらない無邪気な巨人。
カリスタも美しく微笑んで答える。
「ええ、もちろん」
流石の余裕だ。
ヴィヴィアンに至っては――
「私たちがピクニックをする場所には、狙撃に適した地点も見当たらないし、安全よ♪」
兎に角、敵が現れる前提の元FBI脳でも、きらきらとした笑顔を浮かべている。
そんな中、チャールズは出発前から不安しか無かった。
(チーフ! ピクニックって、地図を見ながらワイワイ歩きますよね!? 俺は地図を開くことも許されないんですか……!?
ヴィヴィアン……!! まず、狙撃される前提の安心はいらないよ!!
……俺だけ、ピクニックで地図を頭に入れる文化を知らない……)
そして、山登りへ。
先頭のベックが、30キロのリュックを担いだまま、うーんと伸びをする。
「あー! 癒されるなー! 森林浴♪」
カリスタもグリーンの瞳を輝かせている。
「ええ。 見て! 蝶々が飛んでるわ!」
視点も優雅である。
ヴィヴィアンは即座にスマホを取り出し、撮影しだす。
「どこどこ!? あ! ホント!」
だが、ヘロヘロのチャールズには、そんなみんなの言葉も脳に入ってこない。
すると、イーサンがスッとチャールズの横に立ち、静かに言った。
「無理に早く歩かなくてもいい。 目的地に着くことが到達点だ」
チャールズが小声で、必死に答える。
「……アイアイサー……」
その刹那――
イーサンのアイスブルーの瞳がギラリと光った。
「よろしい。 ハーパー、俺が手伝おう」
チャールズが一気に浮上する。
(やったー!! チーフが半分持ってくれる……!! それなら、あとちょっとだし、ピクニックの時間にも間に合う❤️)
だが、それは一瞬の隙――
次の瞬間、イーサンはチャールズのベルトの後ろをガッチリ掴み、スタスタと山道を歩き出したのだ。
チャールズが心の中で絶叫する。
(手伝おうって、こういうこと!? 待って待って待って! これじゃあ、チーフと同じ速さで歩くことになりますよね!?
俺はリュックが重くて、ヘロヘロなんですよ!!
人類の男って、30キロのリュックを担いでいながら、20キロのリュックを担いでる男のベルトを掴んで、山道をスタスタ歩ける方が希少種なんです!!)
それを見ているみんなは――
まずベックが、チャールズを励ますように、豪快に笑いながら言った。
「チャーリー! 良かったな!」
カリスタは「チーフの援護があれば大丈夫よ」と、優雅に励ましつつ、逃げ道を塞ぐ。
ヴィヴィアンもパチンと指を鳴らして言った。
「ベルトの後ろを掴んでもらうと、利点しかないしね!」
チャールズはイーサンにベルトの後ろを掴まれ、まるで競歩のような速さで歩くイーサンに、声にならない悲鳴を上げ続けていた。
ピクニックは――
まだ始まっていない。
〜fin〜
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