【26】最前列にいたい出歯龜チャーリーと、チャラ男チーフ。〜残念イケメンは全部を信じる〜
午前中は自由時間。
午後はちょっとしたキャンプなので、今のうちに心の癒しに走るチャールズ。
(ヤシの木の木陰でね♪ 海を感じて♪ 今度はレッサーパンダの赤ちゃん動画でも観よう♪
わー、かわいい❤️❤️❤️ このちっちゃい傘が付いてるカクテルも、ノンアルコールとは思えなーい❤️ 正にリゾート❤️)
しかし、次の瞬間――
スッと現れ、少し遠くの木陰のビーチチェアに座るイーサンが、チャールズの目の端を横切ってしまう。
チャールズは即座に視線を逸らす。
(あの髪と体格は絶対チーフ! でも! 見ない! 俺は今、レッサーパンダの赤ちゃん動画とカクテル飲んでるの!!
……え!? あれ……!? チーフが……チャラい!?)
その違和感に、思わずイーサンをじっくり見てしまうチャールズ。
チャールズの心が、一気に騒がしくなる。
(嘘、嘘、嘘……! イーサン・クロフォードが、上半身晒してますけど!?
凄い引き締まった身体だな……って、あの金のチャラチャラしたネックレスは何!? あと、金のロレックスの時計してる……!! 半パンの水着もド派手!!
何で!? どうして!?
……あーーーー!! もしかして……! あれがチーフの素の姿なの!?
チーフ!! 普通にハリウッドセレブの密かな休日になってますよ!!)
そこに現れる、光り輝くブロンドの、わがままボディの真っ白なビキニ美女。
チャールズは我慢できず、木陰からすすっとイーサンの元に近づく。
わがままボディの白ビキニ美女は、イーサンに向かって鈴の音のような声で言う。
「あら、お一人? 海には入らないの?」
イーサンが柔らかなバリトンで答える。
「海? 君が目の前にいるのに?」
チャールズがバシッと自分で自分の口に手を当て、心で叫ぶ。
(うわー、うわー、うわー!! チーフが逆ナンされて、答えちゃってる!!
……これは……チャラいんだ……! チーフの素ってチャラ男! だから、普段はチャラさが出ないように警戒してるんだ! だから言葉も短い!
ハイハイハイ!! なーるなる❤️ これは見届けないと❤️)
あれだけの目に遭ってきても消えない、黙っていればイケメンの、一瞬で残念になるチャールズの恋愛脳がスパークする。
わがままボディ美女が、そっとイーサンの肩に手を置くと、囁くように言った。
「ねえ……二人でイケナイことしない?」
イーサンは流れるような柔らかな視線を彼女に投げかけ、甘〜いバリトンボイスで答える。
「それは素敵だね。 俺の部屋でもいいかな? ペントハウスなんだが」
わがままボディ美女が頬を薔薇色に染めて、嬉しそうに微笑む。
「いやーん❤️ 素敵❤️」
その時、チャールズはハッとした。
(えっ……えぇーー!? チーフ、ペントハウス取ってたの!? 全員ツインルームですよね!?
……はっ!! こう言う時の為に、ペントハウスを自腹で押さえてあるんだ……! 流石、チャラくてもチーフだな〜!
てか、あんな甘い声で誘うんですね! チーフ!! 尊敬です☆☆☆)
そうして今度は、チャールズの、チャラ男に対する理解があり過ぎる残念イケメン思考がスパークした。
そして二人は、イチャイチャしながらペントハウスへ向かう。
もちろん、当然のように尾行するチャールズ。
そこで、ふと気付く。
(あれ……? ペントハウス直行のエレベーターに乗らないの???
ははーん! 分かりますよ! チーフ! エレベーターの中でもアレヤコレヤ楽しみたいんですよね! じゃあ俺もエレベーターで!!)
完全なる出歯龜チャーリーの爆誕である。
ペントハウス階にて――
観葉植物の影に隠れるチャールズが、目を見開く。
(……おや!? なんか、物凄くワルそうな男が……部屋に入って行く……。
これは修羅場!? チーフを逆ナンして来たわがままボディ美女は、まさかの彼氏持ち!?
わー!! チーフの修羅場を見たのって、俺が初めじゃない? チーフ! 俺が最後まで見届けますから❤️ ご存分に!)
チャールズはもう、最前列で鑑賞する気満々だ。
だが、次の瞬間――
イーサンの鋭い声がした。
「ハーパー! 地元警察を呼べ!」
チャールズは「……へ?」と、一瞬間抜けな声が出てしまったが、何とか即答した。
「アッ……アイアイサー!」
その後――
ベックがワハハと笑いながら言った。
「チャーリー! お前、イーサンと地元警察との覆面捜査を手伝ったんだって? スゲーな!
俺なんか、自由時間だからさ〜、モーターパラグライダーしてたよ! 海が綺麗だったな〜!」
チャールズが心の中で叫ぶ。
(俺だって……! レッサーパンダの赤ちゃん動画を最後まで観たかったよ……! ベック!)
カリスタがチャールズに向かって、にっこり微笑む。
「相当悪質な美人局で、先週は殺人事件まで起こしていたのよね? チャーリーって働き者ね。 私なんてスパにいたわ」
またもや心の中で叫んでしまうチャールズ。
(スパ……!? 男子のスパはどこですか!?)
ヴィヴィアンも、感心したようにチャーミングな笑顔を輝かせる。
「チャーリーって、休憩時間も働くタイプなの? 知らなかった〜! 私はホテルのネイルサロンに行ってみちゃった♪ どう?」
チャールズ、またも心の中で絶叫。
(違う! 俺は休む時は、普通に休むタイプだよ……!!
それに、かわいいネイルだね! 正にリゾートだね! でも俺は、チーフと警察官と過ごしてたんでね!!)
そして、イーサンにも――
イーサンは静かに言った。
「ハーパーが付いて来ていたのは把握していた。 使える位置にいた」
チャールズが今度は、心の中で悲鳴を上げる。
(使える位置!? 俺は恋愛現場を見守る位置の最前列にいたんです!! 任務配置じゃないんです!!)
そして、イーサンは続けた。
「判断が早かった」
チャールズは頭を抱えそうになるのを、必死で堪える。
(違う!! 俺は野次馬として反応が早かっただけです!! 公式評価しないでください!!)
それは、無理。
〜fin〜
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