【25】動物の赤ちゃん動画を一分観たらやってくる悪夢。〜カバチャーリーとノールック最強捜査官〜
イーサンの行動に心が折れた、ディナーの後のチャールズに訪れる悪夢。
チャールズ、自分の部屋にて――
(全然……!! 全然!! イタリアンのフルコースが楽しめなかった……!!
波の音……松明の灯り……仲間のみんなとの食事……。 笑いが絶えないのに……俺の隣はチーフ! 水しか飲まないチーフ! しかも……料理も来ない!! どういう仕組みなんだよ〜!!
もう……今夜は君だ!!)
そうして、カバの赤ちゃん動画を観て、癒されて眠るチャールズ……。
「チャーリー! ほら! 君の好きなリンゴだよ!」
(……ん!? この声はセシル……!?
あれ……!? 俺、カバの赤ちゃんになってる……!!
あー、でもこの泥水の中の緩さ……快適! セシルのリンゴも美味しい❤️)
そして、カバチャーリーは何の躊躇いもなく、セシルが投げてくれたリンゴをムシャムシャと食べた。
セシルがにっこり笑う。
「チャーリー! かわいいなあ❤️ オーガニックのリンゴは気に入った? じゃあ、ブドウとかどうかな? ジャパンの限定品だよ!」
カバチャーリーは、泥の中でるんるんしてしまう。
(わーい♪ あのリンゴ……オーガニックのリンゴだったの!? 流石セシル!
わ! このジャパンのブドウも美味しい〜♪ カバの赤ちゃんっていいよな……❤️ のんびり〜♪)
セシルが嬉しそうに言う。
「チャーリー、美味しい? じゃあ次は、地中海のオレンジだよ!」
カバチャーリー、口を大きく開けてスタンバイ。
(は~い! 投げて投げて❤️)
次の瞬間――
鋭い声が飛ぶ。
「セシル! その個体から離れろ!」
「チーフ……!!」
(チーフ……!?)
イーサンはカバチャーリーを無視して、セシルに厳しく告げる。
「君は誤解している。
カバは時に危険な動物だ。 なぜ、野生のカバに近づいた?
君はIQ180の天才だろう? 危険を予知出来なかったとでも?」
セシルが必死にイーサンに向かって訴える。
「でも……このカバ……じゃなくて、チャーリーは大人しくて良い子なんです!」
(セシル……!! ありがとう……!!)
涙を堪えるカバチャーリー。
しかし、イーサンの厳しい声は続く。
「成る程。
君はカバという個体に名前を付ける程、心を開いてしまった、と。
君のボスは誰だ?」
カバチャーリーが、心の中で悲鳴を上げる。
(止めて! 止めて! 止めて! 俺にフルーツくれたセシルを詰めないで!!
詰めるなら、俺の見えないところでやって下さいよ! チーフ!
あと、個体って言わないで!!)
セシルがポツリと答える。
「……チーフです……」
その姿に、いたたまれなくなるカバチャーリー。
(セシル、泣きそう……!! セシル、ごめんな!
……ここの沼から離れよう……)
チャプンと音がした刹那――
ノールックで麻酔銃を撃って来るイーサン。
カバチャーリー、心の中で絶叫。
(怖い! 怖い! 怖い! せめて……セシルを遠ざけるとか、他に方法ありますよね!?
なぜ、突然撃ってくるんですか……チーフ!!)
そして、イーサンはセシルに一言告げた。
「戻れ」
セシルは小さく「……はい……」と答えると、トボトボと歩き出す。
(……セシル、マジでごめん! そして、チーフ怖い……!!
あれ……? 眠くなってきた……)
そうして、カバチャーリーがウトウトしだす。
イーサンはチラリとカバチャーリーに視線を向け、低く言った。
「カバになったからといって、油断するな。 ハーパー」
(……チーフ……待って……。 俺って知っててやってたんですか……?
……ぐーぐー……)
翌朝――
朝食のテーブルにて。
ベックがワハハと陽気に笑って言う。
「おいおい! チャーリー! カフェオレとクロワッサン1個しか食べないとか、大学生の女の子か!?」
無邪気な巨人の前には、極太ソーセージ三本。
イングリッシュマフィン、甘々パンケーキ三段重ねまで置かれている。
カリスタがやさしく微笑む。
「そんな朝もあるわ」
その前には、ロイヤルミルクティーとスコーンとフルーツ。
ヴィヴィアンも明るく言った。
「……なんか寝不足みたいね? 良かったら相談乗るから!」
その前には、スクランブルエッグとカリカリベーコン。
甘くないパンケーキ一枚。
「……えーと……」
そう言いながらチャールズが顔を上げると、地元警察と一緒にいるイーサンを発見。
チャールズが思わず声を上げる。
「チーフ……! 何してるの!?」
イーサンを知り尽くしているやさしい巨人ベックが、今度は少し自慢げにワハハと笑った。
「それがなあ! 昨夜、強盗を捕まえたんだとよ!
相手はマシンガン持ってたらしいけど、イーサンがノールックで命中させたって、地元警察は大騒ぎだ!
まあ、イーサンの相手にならないよな! 強盗なんて!」
イーサンの右腕で、やはりイーサンを知り尽くしている、優雅な行動力はゴリラのカリスタも美しく微笑む。
「たかが、強盗だものね」
ヴィヴィアンは――
「しかも、ちゃんと動脈を外してたの! 生け捕りにしたのよ!? ノールックで! 凄くない!?」
弾道に食いつく元FBI。
チャールズの手がブルブルと震える。
(あれは……正夢……!! でも、俺はカバの赤ちゃんだったんですよ……!! チーフ!!)
イーサンに伝えるところは、そこじゃない。
〜fin〜
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