【22】昼食が水一口の上司を心配したら、査問が始まりました。〜やさしい巨人の答えはマイペース〜
チャールズがズタボロに負けたビーチバレーの後の昼食。
ウェイターが注文を取りに来ると――
ベックのオーダーは、「Tボーンステーキ! でっかいやつな!」
カリスタのオーダーは、「私はフルーツサラダを。ドレッシングは別添えでお願いします」
ヴィヴィアンのオーダーは、「ホテルオリジナルハンバーガー! ポテトも付けて!」
チャールズのオーダーは、「……同じでいいです……」
心が折れていて、メニューを選ぶ気力もないチャールズ。
イーサンのオーダーは、「私はミネラルウォーターを」
この時点でチャールズは、注文内容を処理する余力が全くなかった。
なぜなら、チャールズの心の中は、
(座れた……) (もう座れてる……) (ハンバーガー……来る……) (午後は昼寝……絶対昼寝……)
で占められていたからだ。
そして、料理が揃う。
ベックの前に、Tボーンステーキ。
カリスタの前に、美しいフルーツサラダ。
ヴィヴィアンとチャールズの前に、ハンバーガーとポテト。
イーサンの前に――
ミネラルウォーターだけ。
チャールズは疲労も忘れ、一瞬思った。
(……え……?)
そして、みんなで昼食が始まる。
真っ昼間からTボーンステーキを食べている巨人ベックは、ワハハと笑って言った。
「潮風を受けて食べると、100倍美味いな!」
カリスタも、14種類のフルーツ入りサラダを食べながら微笑む。
「ええ、本当に! 瑞々しいわ」
ヴィヴィアンはホテルオリジナルハンバーガーを豪快に食べながら言った。
「午後はサーフィンしない!?」
もう、ビーチバレーの負けを忘れて次の勝負へ移る元FBI。
チャールズは心の中で、頑なに決意する。
(もう……!! ヴィヴィアンは黙っててよ!! 俺は午後は昼寝するッ!!)
そして、チャールズもホテルオリジナルハンバーガーに齧りつこうとして、気付く。
イーサンの前には、水だけ。
チャールズの折れた心が反応しだす。
(待って! 待って! 待って! 誰も何とも思わないの!? チーフ、水しか飲んでないよ!?
……食べづらい……!! せめて、ポテトくらいつまんで下さいよ、チーフ……!!)
すると、イーサンの低音ボイスが響いた。
「ハーパー、どうした? 食べないのか?」
チャールズはヤケクソになってハンバーガーに齧りつきながら思った。
(その言葉、そっくりチーフにお返しします!!)
そして、昼食後。
チャールズはこっそりベックに訊いた。
「ベック! チーフ、水しか飲んでないよ!? 何で!?」
ベックはあっけらかんと答える。
「ん? あいつは昔から、マイペースだからな!」
マイペースで済ませられる、心も大きな巨人。
だが、チャールズの不審は募るばかりだ。
「でも、水だよ!? 水!! しかも、一口しか飲んでないの!! おかしいだろう!? チーフの身体が心配じゃないの!?
マイペースの範囲じゃない!! 水一口は昼食じゃない!! マイペースで片付けていい現象じゃない!!」
ベックはうーんと考えると、大声で言った。
「……そうか! イーサン! チャーリーがお前の体調を心配してるぞ!」
意訳が酷すぎて、チャールズの心が悲鳴を上げる。
(ギャーー!! ベック! 何を言ってるんだよ!! 俺はこっそり聞いたんだよ!! 本人に公開しないで!!)
スッと現れたイーサンは、「なぜ?」と一言。
「……あの水……水が……」
しどろもどろになるチャールズに、イーサンが告げる。
「俺の体調に、気になる点があったか? その根拠を聞かせて欲しい。 では、ホテルの部屋に戻ろう」
イーサンの視点は――
部下が、自分の体調異変を察知した可能性がある。
根拠を確認する必要がある。
誤認なら、正す必要がある。
落ち着いた場所で聞く。
以上。
またもや、チャールズの心が悲鳴を上げる。
(……終わった……! 何で海まで来て、チーフに査問されるんだよ……俺!! 俺はただ、水しか飲まないのが不思議で、心配だっただけなのに!!)
イーサンの部屋にて。
イーサンは立ったまま言った。
「座れ。 まず、君が異変だと判断した要素を、時系列で説明しろ」
チャールズは心の中で即答する。
(時系列!? 昼ごはんが水だった!! 以上です!!)
だが、言葉には出来ない――
だから、査問は終わらない――
〜fin〜
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