【21】獲物を見つけた猛禽類と、審判になりたかった人類の男。〜誰も味方がいないビーチバレー〜
そして、ビーチバレーへ――
まず、イーサンが口を開く。
「では、カリスタ。審判を頼む」
カリスタはにっこり微笑み、「任せて!」と応える。
チャールズは心の中で呟く。
(いいなあ……俺も審判になりたい……!! 心底なりたい!!)
すると、ヴィヴィアンがチャールズに向かって言った。
「じゃあ今年はチャーリーがいるし……ねえ、チャーリー! 私と組まない!? チーフとベックを倒すの!!」
チャールズの心が、即座に悲鳴を上げる。
(止めて止めて止めて!! 元FBIって、どうしてチャレンジしたがるの!? ヴィヴィアンと俺で、ベックとチーフに勝てるわけないじゃん!!)
ベックはニッコニコで言う。
「そりゃあ良い! 楽しそうだな! どうだ、イーサン?」
イーサンは口元に小さな笑みを浮かべて答える。
「良いだろう」
その瞬間、チャールズの背筋に悪寒が走る。
(……チーフが笑ってる……!! 獲物を見つけた猛禽類の余裕だよ……!!
……まあ、でも、サクッと負けて、お昼ごはんだ♪)
心を必死に保つチャールズ。
そして、ビーチバレー開始。
始まりは、「ほらよ!」と普通にふんわり投げてくれる、やさしい巨人ベックから。
すると、ヴィヴィアンが前を見たまま、厳しい声で言った。
「チャーリー! トスして! 私がサーブ打つから!!」
「わ、分かった……! ほらっ!!」
チャールズは怯えながら返事をして、命令通りトスをする。
(怖いよ! ヴィヴィアン!! ベックを見習って!!)
しかし、返って来たのは、本気丸出しのヴィヴィアンの「低い!」という捨て台詞。
そして、舌打ちしながらサーブを打つヴィヴィアン。
すると、そのボールを受けたイーサンが、その場でスッと飛び上がった。
そして、ビーチバレーの柔らかいボールなのに、なぜか高速サーブがチャーリーの顔面に命中した。
イーサンの思考は――
ハーパーとビーチバレーをするのは初めて。
運動反応を見る必要がある。
まずはハーパー側へ返す。
対応を見る。
以上。
しかし、イーサン本人の基礎能力が高すぎて、「軽く返した」つもりが、チャーリーには高速サーブ顔面直撃事件になってしまった。
「……痛い……痛いよ〜!」
そう言って泣きそうになっているチャールズに、ヴィヴィアンからの厳しい指導が入る。
「チャーリー! 顔で止めるのはサッカー! これはビーチバレー! 分かってる!? 真面目にやって!!」
勝敗が掛かると燃え上がる、元FBI魂。
チャールズは言いたかった。
(……もう、もう、やめようよ……ヴィヴィアン!! 君、本気でチーフのあの高速サービスエースに勝てると思ってる!?)
しかし、チームメイトの筈のヴィヴィアンが厳し過ぎた。
ヴィヴィアンが手をパンパン叩きながら、チャールズに向かって来る。
「ほら! チャーリー、立って! 試合続行よ!!」
その刹那――
イーサンが無言でスポーツサングラスを掛けた。
チャールズは絶望する。
(……チーフが本気になった……!! 終わった……!! 終わったよ……!!)
しかし、ベックはワハハと笑っている。
「チャーリー! いい音したなー!」
どの立ち位置でも楽しめる男は強い。
カリスタからは、要らない褒め。
「チャーリー、今のは勇敢だったわ!」
(……誰も味方がいない……!)
チャールズは、更なる絶望へ……。
〜fin〜
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