【2】チーフの善意、チャーリーの非常事態。〜初めての差し入れコーヒー〜
ある日の午後――
イーサンがスッと音もなく、デスクにコーヒーを置いた。
「どうぞ」
イーサンにとっては、いつも通りのコーヒーの差し入れ。
部下が疲れている。
コーヒーが必要。
置いた。
以上。
それだけだ。
だが、初めて差し入れのコーヒーを貰ったチャールズの心は騒がし過ぎた――
(これは……差し入れ?
それとも何かの確認?
試されてる!?
飲んだ方がいいのか?
まだ待つべきなのか?
あ、ベックが飲んだ!
よし、飲んでいいんだ!
……って、カリスタがまだ飲んでない!!
どうする!?
上流階級的には待つの!?
それとも現場的には飲むの!?
俺はどうしたら!?)
すると、チャールズの横でベックが「お、ありがとな!」と普通に言って、ゴクゴク飲み出した。
カリスタは優雅に「まあ、ありがとう、チーフ」と言って、飲むタイミングまで綺麗だ。
ヴィヴィアンは必要なら飲むし、いらなければ置く。
ヴィヴィアンは――
今は手にしていない。
また、チャールズの心が騒がしくなる。
(正解はどれ!?)
すると、イーサンの低い声がした。
「冷めるぞ」
一拍置いて。
「……瞳孔が開いてるな。
何か言いたいことでも?」
イーサンにとっては、瞳孔が開いている。
イコール。
緊張、恐怖、動揺、何か隠している可能性。
だから確認しただけ、だが――
チャールズは心で悲鳴を上げる。
(……部下の瞳孔見ないで下さいよ!!
コーヒー飲むか迷ってただけです!!
俺の馬鹿!!
さっさと飲めば良かった!!
何か言いたいこと?
あります!!
でも言えません!!)
そして、「いえっ!いただきます!」と勢い良く飲んで――
むせた。
そうして、心底思った。
(差し入れ一つで寿命が縮んだ……!)と。
〜fin〜
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