【14】動物の赤ちゃん動画を観ていたら、軍用犬の言語担当になりました。〜無茶振りが正解する人類側の男
ノックと同時に、音もなくチャールズのオフィスに入って来たイーサンが、一言言った。
「……ハーパー……」
チャーリーが椅子からピョンと跳ねながら、「ハイッ!」と答える。
イーサンは、そんな様子を全く気にすることなく、淡々と告げた。
「君は確か……パンダ、キリン、カバ、そしてカワウソの幼少期の動画を観ているな?」
チャールズが驚きで目を見開いて答える。
「……え!? あ! ハイッ!」
(カワウソを何で知ってるんだろう!? まあ……良いけど……ここが俺のオフィスじゃなかったら、公開処刑だよ……!!)
そんな心の中の疑問を、必死に封じるチャールズ。
イーサンのアイスブルーの瞳が、ギラリと光る。
「そこで、だ。
今、動物管理保護局で保護してあるジャーマン・シェパードは、何語で訓練されたか突き止めて欲しい。
特別な軍用犬はオランダ語で訓練されることが多いが、俺がオランダ語で命令を出しても反応しなかった。
まだ成犬になったばかりだ。
頼む。 失礼」
そして、来た時同様、スッと去るイーサン。
取り残されたチャールズは、心が大混乱だ。
(待って待って待って!! どうしてパンダ、キリン、カバ、カワウソの赤ちゃん動画を観てるからって、ジャーマン・シェパードの軍用犬に繋がるんですか!? チーフ!!
軍用犬なんて、現実で見たことも無いですよ!! オランダ語で駄目!? まず、オランダ語で訓練される理由から教えて下さいよーーー!!)
そうして仕方なく動物管理保護局へ向かったチャールズは、たまたまオランダ語ならドイツ語かな? と思いつき、パソコンで調べて「座れ」と言ったら、犬がお座りした。
イーサンは僅かに口元に笑みを浮かべて言った。
「やはり……ハーパーは有能だな」
ベックはドーナツを食べながら、ワハハと笑う。
「流石“超有能”さまだな!」
「ジャーマン・シェパードだから、ドイツ語って普通は考えないわ! 素晴らしい発想ね!」
カリスタは、そう言って褒めてるようで優雅に刺してくる。
ヴィヴィアンは、元FBI脳が止まらない。
「ねえねえ! クワンティコにも指示言語が分からない軍用犬がいるのよ! 今度行ってみない!?」
チャールズは、ひとり心の中で叫ぶ。
(チーフの無茶振りを、俺がたまたま当ててるだけです!! 俺は犬の言語担当じゃない!! 軍用犬キャリアはいらない!!
出世するなら、テクニカルアナリストとして出世したいだけですよ!! チーフ!!)
だが、そんな願いは最強捜査官には届かない――
〜fin〜
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