【13】動物の赤ちゃん動画を一分観たらやってくる悪夢。〜カルガモチャーリーと、お巡りさんのイーサン〜
激務に疲れたチャールズが、カルガモの親子が道路を渡る動画と、やさしいお巡りさんの動画で心を癒した後に訪れる悪夢――
突然、イーサンの厳しい声が鳴り響く。
「俺が弾よけになろう! 君は真っ直ぐに、最短距離で渡れ! 後ろの子供達にも目を配れ! 最後尾は特に! 列を乱すな!」
(チーフ!? なぜ、制服警官になってるんですか!?
って……!! あれ!? 俺、カルガモの親になってる!!)
「ぐずぐずするな! 君は真っ直ぐに歩け! 後ろの子供達に悪影響が出る! 隊列を維持しろ!」
カルガモチャーリーのこめかみに、怒りの青筋が立つ。
(チーフ!! まず、カルガモを知ってます!? 俺たち、よちよち歩くんです!! 最短距離とか隊列維持とか無理!! しかも、後ろの子たち、生まれたて!!
弾よけじゃなくて、交通整理が欲しいんです!! 「カルガモ通ってま〜す」って言ってくれる、鋭いやさしさじゃなくて、丸いやさしいお巡りさんを呼んで下さい!!)
そして、カルガモチャーリーが子供達と通りを渡り切ると……
イーサンは小さく頷き、一言言った。
「よし。良い渡河だった」
カルガモチャーリーは再び、心の中で怒りの叫びを上げる。
(渡河!? 道路横断です!! 戦場じゃないです!!)
そうして目覚めたチャーリー……。
(あー……怖かった……!! 夢にまで出てこないで下さいよ! チーフ!)
そう思いつつ、プンプンしながらコーヒーを淹れていると――
ドーナツをバクバク食べながら、ベックがワハハと笑う。
「なんだよ〜! 幽霊見たみたいな顔して! お得意のウインクでもしてみろ!」
チャールズは心の中で、首を縦にブンブンと振る。
(幽霊……確かに……!! それくらい怖かったよ……ベック!)
カリスタはにっこり微笑んで言った。
「あら? お肌艶々ね? 仮眠でもしたの?」
(肌が艶々とか、そんな褒め言葉いらない!! 仮眠したよ!! 悪夢のね……!!)
ヴィヴィアンは姉御肌丸出しで、やさしく告げる。
「何よ? 言ってみて? 話聞くわよ?」
その一瞬の油断が命取りになるとも知らずに――
チャールズが、小さな声でポツリと漏らしてしまう。
「実は……夢にチーフが出て来て……」
だが、目の前の無邪気な巨人は、今日も大声で言う。
「お前、イーサン大好きだな! おーい! イーサン! チャーリーがお前の夢を見たってよ!」
青ざめるチャールズに、イーサンの右腕ゆえか、カリスタが嬉しそうに聞いてくる。
「あら、素敵! 夢の中のチーフって、どんな感じ?」
ヴィヴィアンに至っては、好奇心の塊だ。
「詳しく!!」
と一言。
すると、どこからともなく低音の声が響いた。
「……ハーパー……俺のオフィスへ」
絶望しかない状況に、心の中で絶叫するチャールズ。
(終わった……!! 俺が口を割るまで尋問される……!! でも、話せない内容なんですよ!! チーフ!!)
チャールズがイーサンのオフィスに入った途端、全てのブラインドは下ろされた――
〜fin〜
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