【12】楽しく走っていたら、有事に備えろと言われました。〜人類の男 VS 完全体の男〜
お洒落なチャールズは、ちゃんと身体を整えている。
そんなある日。
チャールズは、(今日は定時に上がれた♪ 少し走って♪ プールで泳ごう♪)とウキウキしながら、ランニングマシーンの上で好きな曲を聞きながら走っていた。
すると、突然スピードが爆上がりした。
チャールズが素早くイヤホンを外して叫ぶ。
「何!? 何!? 何!?」
すると、隣から響く低音ボイス。
「……イヤホンをしていると、有事の際にはこうなる。肝に銘じろ」
もちろん、イーサンである。
チャールズは心の中で叫ぶ。
(待って待って待って! 有事とは!? ここはS.A.G.E.のスポーツジム! 職員しかいない! 何ならアメリカで一番平和なスポーツジムですよ!!)
そして、スピードを戻そうとした手首を、イーサンに即座に掴まれる。
イーサンは走りながら、息一つ乱さず淡々と告げる。
「君はなぜ時速7キロで走っている? 君ならば12キロで走れる。 それと……傾斜を1〜2%付けるように。 効率的な有酸素運動だ」
チャールズが心の中で絶叫する。
(痛い! 痛い! 痛い! まず、手首を離して下さいよ! チーフ!! それは犯人を拘束する時のスタイルでは!?
それにね!! 俺は別に有酸素運動とか意識してなくて!! 別に屋外で走る仕事じゃないし! まず、テクニカルアナリストなんで! 今日はちょっと走ろうかな♪ぐらいの気分で走ってるだけなんです!! 人類の男は全員、チーフと同じじゃないですッ!)
すると、イーサンがチャーリーの手首を離して言った。
「よろしい。では、そのまま20キロ走ろう。 俺も付き合う。その後はプールだな」
当然、息一つ乱さず淡々と。
チャールズは心の中で再び絶叫する。
(やだ! やだ! やだ! 時速12キロで20キロって、どんな罰ゲームなんですか……チーフ!! プールって……チーフは絶対に高速バタフライですよね!?)
スポーツジムにいるというのに、大きすぎるバニラシェイク片手に、ベックがワハハと笑う。
「こりゃあ見ものだな!」
チャールズは必死に祈る。
(ベック……!! 助けて! お願い! せめて速度下げてよ!! それか、バニラシェイク一口だけでも……!!)
カリスタは素敵なバッグを肩から掛けて、美しく微笑む。
「まあ、チャーリーって凄いわね! 私はこれからヨガなの」
(ヨガ……!? カリスタ、心底うらやましい!! 男子のヨガっていつ!?)
ヴィヴィアンに至っては、前のめりでチャールズに食いつく。
「私は筋トレ! あ! チャーリー! 今度、筋トレで勝負しない!?」
(もう!! なんで俺と勝負しようとするんだよ、ヴィヴィアン!! 君の方が絶対強いよ!!)
そして、チラッと横を見ると――
体幹を一切ブレさせることなく、走り続けるイーサンがいた。
ただ、静かに。
ただ、粛々と走る、その姿。
絶望。
その単語しか頭に浮かばなかったチャールズは、とにかく必死に走ることしか出来なかった。
そしてチャールズは、この後のプールでの出来事を、まだ知らない――
〜fin〜
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