【10】動物の赤ちゃん動画を一分観たらやってくる悪夢。〜チャーリーパンダと、飼育員イーサン〜
チャールズの癒しは、動物の赤ちゃん動画。
自称『情報の海を泳ぐマーメイド』チャールズにとっては、貴重な時間だ。
だが、その日は違った――
パンダの赤ちゃん動画を一分観たら、悪夢はやって来た。
「君はパンダなのに、なぜ白黒じゃない?」
その厳しい声。
聞き間違える筈もない、イーサンの声だ。
だが、イーサンはいつもの黒スーツではなく、動物園の飼育員のような服装だった。
だが、その鋭い眼差しは、決してただの飼育員ではないと告げてくる。
チャールズは、コロンとした自分の身体を見てみる。
(……あれ!? 本当だ!! 俺、パンダになってる……!! しかも!! これって超珍しいアルビノのパンダちゃん❤️)
すると、またもやイーサンが厳しい声で言った。
「答えない……成る程」
チャールズは慌てて考える。
(違いますッ!! 答えますよッ!! チーフは俺に、最速で答えを求め過ぎなんです!!
って……通じない!! そうだよ!! 俺はパンダで、チーフは人間だもの!! 声帯が違う!!
……ん? ジェスチャー!! ジェスチャーで!!
……え、えーと……アルビノ種かな? なーんて♪)
再び、イーサンから発せられる厳しい声。
「この個体は、自己認識に混乱が見られる」
チャールズは必死にジェスチャーする。
(個体って言わないでください!! 俺です!! チーフ!!)
すると、イーサンの片眉が僅かに上がった。
「ほう……どうぞ」
そして、スッと差し出される最高級の笹。
しかし――
チャールズは心の中で悲鳴を上げる。
(待って待って待って! 笹は無理!! たぶん俺は今、パンダちゃんかも知れないけど、味覚的に無理!! 何なら朝はフレンチトーストだったんです!! チーフ!!)
その刹那――
イーサンのアイスブルーの瞳が、ギラリと光った。
「笹を食べないアルビノ種のパンダか……。 報告しよう」
チャールズはもう、心の中で悲鳴を上げてはいない。
絶叫していた。
(待って待って待って! 報告って誰に!? どこに!? 止めて! まず俺を“笹を食べないアルビノ種のパンダ”って公式化しないで下さいよ! チーフ!! 俺はテクニカルアナリストです!! あなたの部下! ね!?)
そして、ふと夢から覚めたチャールズは洗面所に駆け込み、鏡を見てホッと息を吐いた。
(……良かった!! 俺は人間だ……!!)
まず、そこが着地点な不憫なチャールズは――
黙っていればイケメンである。
〜fin〜
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