14:聖女(天使)
高密度のエネルギーが可視の光となり、熱を持って、魔物うごめく大地へ突き刺さった。
直下の異形の生物は黄金の光に呑み込まれた瞬間に全身を蒸発させ、影も形も残さず消失する。
小さな村の直径ほどの範囲を殲滅した光はすぐに立ち消えるが、またすぐに次の場所へ突き刺さる。
まるで天空を支える無数の光の柱だ。
はいドン、ドン、ドン。
上空に陣取った俺は、村を巨大な結界で覆ってやり、その周囲に神聖力の塊を撃ちまくっていた。
魔物というものを見たのも殺したのも初めてだが、これが面白いように消える、消える。
なかには一撃くらいだったら耐えるものもいるんじゃないかと思っていたが、いらぬ心配だった。デカい個体も小さい個体もぜんぶ溶けるように消えていく。
感触は地に積もっている雪となんら変わらない。
余裕だ。
助けた村へ愛嬌でも振りまいて、さっさと帰ろう。
□■□
ということで戻ってきました、別邸自室。
間違っても誰かに見つからないよう、屋根まで高速急降下、そのあと下の庭園を手入れする庭師や門番の様子をうかがったあと、すばやく窓へ滑り込んだ。
外していた顔隠しを装着して、ひと息つく。
「よし……と」
飛行状態を解除すると、身体を淡く光らせていた余剰エネルギーも消え、髪の色も白から黒へ戻った。
いや、大成功である。
今日はひとまず鍛錬だけの予定だったのだが⋯⋯初めての外出でまさかすぐに「民」を助けることができるとは思わなかった。それもあんなに分かりやすく、劇的な状況で。
俺が今回行った活動は、呪いの公爵令嬢ラシェルとはまったくの無関係に行った。無関係でないと困る。はぁそうですかと思われそうなところだが、これが非常に重要なポイントなのだ。
ラシェルに受肉して大幅に強化された武力と治癒力を十二分に生かし、偽神討伐につなげる今後の「活動方策」とはこれだ。
積極的に「別人」として活動し、社会的地位を得る。
そのための第一歩が魔物退治と、怪我人の治療。
聖者としてでも聖女としてでも、なんでもいい。カアウラス神の名のもとに人々を救済する。
何度も繰り返せば評判と噂は広まっていくはずだ。
民の中に崇める者が出始めるような、とにかく揺るぎない実績と名声を作りあげる。
その過程で人間の協力者も作れたら情報収集なども捗るだろう。
そしてある程度俺の活動が実を結び、名前と影響力が拡大すれば……。
「──教会の方から、私に接触してきてくれるでしょう」
奴らとしても教会未所属の不確定要素を放置するということはないはずだ。必ずなんらかのアクションは起こすはず。
俺は堂々と、教会中枢へ手を伸ばし──カアウラス神の核心へ触れることができるかもしれない。
とまぁ、こんな構想だ。
基本的には辺境の村々をまわって病人を治療する地道なコツコツ活動が主で、魔物は発見次第殲滅という感じになるだろう。
なかなかいい方針だが、教会への接触としては受け身の形。
これひとつに頼り切るにはいささか心もとない。
もうひとつの計画も同時に推し進める予定だ。
簡単に言ってしまえば、「皇立学園」へ入学して神官になるという計画である。神官になれば当然、真正面から教会へ潜入できる。
しかし。
公爵家の腫れ物ラシェルが貴族社会の慣習通りに学園へ行かせてもらえるかは怪しいところ。ユノが目指していたように推薦枠を取ることができれば確実だろう。
⋯⋯あ、そういえば今日助けた村、俺が下界に降臨して初めて受肉した村だった。最初は気づかなかったが、降りてみたらユノがいたのでビックリした。
なんかやたら暗く濁った目をしているし、以前より表情に影が差しまくっていたので、はじめ誰だか分からなかったほどだ。よほど魔物が怖かったのだろう。
適当に白髪美少女スマイルで励ましてやったら、元気を少しは取り戻していたので、まぁ大丈夫だとは思うが。
あとなぜか俺の墓を見せてくれた。孤児時代の俺が土葬されていたのは、村を見下ろせる丘の上。
亡くなった友人に祈ってもらえませんかと言われたんで、いやいやながらもカアウラスへの祈りを捧げてやった。
自分の死を自分で追悼するとは、これいかに。なんのギャグだろうか。
⋯⋯話が脱線した。
それから今後の計画について、もうひとつ。
「聖者・聖女活動」とは別に、正体を隠して教会を訪問――場合によっちゃ襲撃する予定だ。
要人を尋問して有益な情報を引き出したいところだし、高位神官や枢機卿を殺して戦力を削げれば儲けもの。
やらん手はないな。
「やらない手はないですね」
喋り方も板についてきた。これからロールプレイをする機会は増えていくわけだし、このまま演技力は高めていこう。
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