87 わ、悪くないわね
そうして、ケーキを食べ終わり、積み木遊びもひと段落したのか、アンジュと天ちゃんはテレビを見たいと言いだした。
なので、アンジュの持っているDVDを見ることにした。
『ピュアっと⭐︎キュアエイジング♡ 睡眠不足はお肌の大敵! 眠ってダイエット大作戦!!』
一応、早寝早起きしましょうって話なんだけど、夢の中で睡眠不足で増加する各種ホルモンが敵になっている。
なお、最後は全員でホルモンを焼きながらビールを飲んで大団円という、社会人にも刺さる内容となり、なんと興行収入が十億越えという、いろんな意味でとんでも作品となっている。
俺とティナが座り、その上にアンジュと天ちゃんが座っている。
そして、ティナが爆弾発言をした。
「なんかこうしていると、家族みたいよね」
そして、その発言をちょうど帰ってきたエレナが聞いてしまったようだ。
「なっ……ななな、なあっ!」
参考書の入ったかばんを床に落とし、うろたえている。
「あらエレナちゃんお帰り」
「お帰りじゃないわよ。え、え? 何? てかその子誰?」
いろんな情報が一斉に来たのか、パニクるエレナ。
「いでそら」
「あ、ご丁寧にどうも。エレナです」
二人で頭を下げている。
頭を上げると、「アンジュのお友達ね」と理解したのだが、部屋の中を改めて見回す。
「それにケーキ食べたでしょ」
「冷蔵庫にエレナの分しまってあるぞ」
「え、ほんと?」
エレナはちょろいなぁ。
「って、今回はそんなんで騙されないわよ」
お、珍しい。
「か、家族ってどういうことよー」
珍しく意味の分からない理由でパニクっている。
そしたら天ちゃんを下ろして、真ん中にエレナを座らせた。
その横に再度天ちゃんを抱っこしてその横に座る。
「こういうことよ」
なぜか顔を真っ赤にしたエレナは俺に寄りかかる。暑いな。
「わ、悪くないわね」
俺の膝の上にいるアンジュが振り返り、じーっと見ていた。
「どうしたアンジュ」
「なんでもない」
「そっか」
そして、そのまま映画を見る。
ホント夢の中だからってはちゃめちゃな作品だよ。まとめて機関車で轢いたぞ。
しかもそれで、『イテテ……』で済むんだもんな。
そして、映画が終わると、天ちゃんが拍手していた。
エレナとティナはなんとも微妙な表情をしていた。まぁ分かる。
そして、アンジュがいなかった。
おかしいな。膝の上にはしっかりと重さを感じていたのだが……。
なぜか俺の膝の上にはたぬきのぬいぐるみが置かれていた。
しかも少し不機嫌な表情をしていた。
忍者にでもなったのかな?
いや、そんなことより、アンジュを迎えに行かねば。
早速スマホを確認。
馬に乗った武将の銅像の前で自撮りしてもらった画像だ。
「これは熊谷駅ね」
「よく分かったな」
「うん。よくパパと機関車乗りに行くから分かるわよ」
今日はティナの意外な面を見るな。
しかし、女子大生が機関車が好きとは、なかなかに思いつかないな。
そして来ました熊谷駅。
車で行こうとしたら、電車に乗るのが趣味というティナの要望で電車で向かった。
そして、アンジュはというと、カフェで待っていた。
「あちゅかったから」
だよな。九月でもまだまだ暑いよなこの街。
そして、今回は天ちゃんが初参戦だ。
いつもは家族と遠出らしいが、今回はティナが保護者だから大丈夫だろう。
来る前に連絡を入れてたもんな。『帰りはわたしが送ってきますね→』と送っていたらしい。
貞子さんから『ティナちゃんから送ってくれるって連絡きたから大丈夫よ→』と来た。
でも熊谷まで行くことは言ってないんだろうな。
「おー」
天ちゃんも新鮮なのか興奮しっぱなしだ。
そして、エレナ。
「登利平……五家宝……」
「じゃあ帰るか」
「待ちなさい」「待って」
ティナとエレナから同時に止められた。
「なんだよ」
「今日は機関車乗れるのよ。乗らないでどうするのよ!」
それを聞いて、エレナが何か言おうとしたのをやめた。
「乗ってもいいけど、どこまで行くんだよ」
「秩父よ」
さっそくエレナがスマホを取り出して検索を始めた。
そして小さく頷くと、にっこり笑顔になって黙ってしまった。何を調べたんだろうな。
「あんじゅもきしゃのりたい」
「そらもじゃんがじゃんがまるのりたい」
そんな名前じゃないだろうに。
アンジュもなぜか微妙な顔をしている。だよな。
俺とアンジュは頷きあった。
そして、機関車にみんなで乗ることになった。
いつもなら俺に支払わせようとするティナだが、自分が乗りたいと言い出したからなのか、全員分をティナが出してくれた。
というか、乗る気満々だったらしく、予約していたらしい。
乗車の三十分前までなら予約出来るようだけど、多分乗らないなんて言ったらなんて言われただろうか。
「じゃあ行くわよ!」
そうして乗り込む。
俺の横にアンジュ。
向かいにはエレナと天ちゃん。
そして、ティナは反対側で一眼カメラで風景を撮っていた。ガチやんけ。




