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メリーさん家の三姉妹  作者: 玉名 くじら


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86/99

86 わたしのネーミングセンスにケチつけるの?


 今日は意外な訪問者が来た。

 「きたー」

 「おー、いらっしゃいー」


 天ちゃんが来た。もちろん、貞子さんとか小夜子さんと一緒にではない。一人で来た。

 それも玄関からではない。

 気がつけばテレビの前にいた。


 「いでそら、ぶじとーちゃっく!」

 キュアキュアの決めポーズを取っている。かわいい。

 対するアンジュは違う魔法少女の作品のポーズを取っていた。

 最近思う。本当にアンジュはキュアキュアが好きなのかと。


 あれ、魔法じゃなくて魔砲だしな。ドラゴ○ボールに近い。一時期回想シーンも長かったしな。

 炎上して元に戻ったんだよなあ。そんなことをしみじみと思い出していたら、アンジュと天ちゃんが俺の足元にいた。


 「どうしたの?」

 「そらちゃんとあしょぶ」

 「そらも」

 「あれだして」

 前に岡山行った時に買った積み木を出してあげた。なかなかに独創的な作品を作っている。


 さて、貞子さんにLINEで天ちゃんが来ていることを知らせると、仕事中だったらしく、そのまま預かってくれと返信が来た。

 家電量販店勤務だしね。休日に仕事はかき入れ時だし、仕方ないな。了解と送ると、『助かる』と絵文字で返信があった。


 帰りはどうするかね。

 それを考えようとしたら、後ろに気配があったので振り返ると、ティナがいた。

 せめてチャイムは鳴らしてほしい。


 「なんでナチュラルにいるんだよ」

 「いいじゃない別に。ほら」

 手にはケーキ屋さんに寄ったのだろうか小箱を持っていた。


 「ありがとう。今何か作らないとって思ったから助かるよ」

 「買いに行かないで作るって発想はアンタらしいわね。で、誰か他に……」

 ローテーブルの方を見るティナ。


 「あら天ちゃんもいるのね」

 「ん? 今なんて?」

 「え? だからアンジュちゃんと天ちゃんが積み木で遊んでるんでしょ?」

 「いや、なんで天ちゃんの名前知ってんの?」

 「いとこなんだから知ってるの当たり前でしょ」

 マジか。ティナの言っていた、母方のいとこって天ちゃんだったのか。

 これ、ティナも普通じゃない可能性出てきたな。


 「貞子さんか小夜子ちゃんはいないの?」

 「一人で来たらしい」

 「あら」

 その『あら』に含まれる情報を開示してくれないかな。

 知ってるのか知らないのかで話変わるから。


 でもティナは教えてくれずに、テーブルに小箱を置くと、アンジュと天ちゃんの方へ近づいた。

 「何やってるのー」

 「ちゅみき!」「しゅくらっぷあんどびるど!」

 天ちゃんは可愛らしく『積み木』と言ったのに、アンジュは一体どこでそんな単語を覚えてきたのか。


 「あらそうなのー」

 小さい子供相手だと、人が変わるよな。

 二人の相手はティナに任せて、俺は飲み物の用意をした。

 天ちゃんの飲み物は、アンジュの好きな『ほぼ牛乳のコーヒー牛乳』でいいだろう。

 ティナはなんでもいいな。


 そうして用意すると、ティナが微笑ましく見ている前で二人の作品が完成していた。

 「わーすごーい。これはなあに?」

 「とちょー」「つーてんかく」

 なかなかに渋い作品だ。


 「こっちはー?」

 「あててー」

 天ちゃんが自信満々にそう言った。

 なんだろうな。


 「うーん。むずかしいなー」

 「ひんとおてら」

 「お寺? じゃーほにゃらか寺」

 「せいかーい」「え?」

 天ちゃんは両手を上げて喜ぶが、アンジュは真顔で驚いた。


 「待て」

 「何よ」

 「その『ほにゃらか寺』ってなんだよ」

 「フィーリング?」

 何かの設定じゃないのかよ。

 れからというもの、二人は面白がって作った作品を名付けさせるアンジュと天ちゃん。


 「ホゲホゲタワー」「ぴゅんぴゅん丸」「じゃんがじゃんが丸」「ちょっちょっぺー号」「ばきゅんばきゅん砲」

 ひどい……。


 俺の主観だけど、西東京タワー、機関車、船、F1、ハンマー投げの人だと思う。確証はないけど。

 これにはアンジュも苦笑い。天ちゃんは満面の笑顔。


 もしかしていつもこうしているんだろうか。

 天ちゃんに合わせて言っているんだろう。

 まぁ、ちょうどいいのでおやつタイムだ。


 「お茶の用意できたぞ」

 「わーい」「ありがとー」「早いわね」

 そうして四人でおやつタイムだ。

 アンジュと天ちゃんが食べている間にさっきのネーミングの理由を聞いた。


 「あれって天ちゃんに合わせてるの?」

 「何を?」

 「あの、なんだっけぱみゅぱみゅ丸みたいの」

 「よくそれ噛まずに言えたわね。って、わたしのネーミングセンスにケチつけるの?」

 「…………ん?」

 「ティナねーちゃはねー、すごいおなまえちゅけるの。かっこいいー」

 「えへへ。でしょう?」

 どうやらマジらしい。壊滅的だな。

 天ちゃんはいつものことらしく、なぜか誇らしげだ。


 そして、アンジュも納得したのか、諦めたのかは分からないが、一緒になって「かっこいー」とどこか棒読みにも聞こえる感じで言った。

 そこは素直に『変』とか『微妙』って言っていいんだぞ。

 決して俺がそう思っているわけではなくて……。

 そう思っていたら、ティナが手を小さく振って前に乗り出してきた。


 「さっきの、なんだっけばみゅばみゅ丸だっけ? あれいいわね」

 今まで見た中で一番明るい顔でサムズアップしたティナ。

 やはり、ティナも普通じゃなかったな。


 俺は食べていたケーキの味が分からなくなってしまった。


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