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メリーさん家の三姉妹  作者: 玉名 くじら


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82/102

82 ちょうど良かったです


 長かった。

 高速使えば早いと思って常磐道を北上し、途中から北関東道に入り、友部IC手前で、エレナがトイレに行きたいと言い出した。


 それまで我慢していたのに、急に我慢できないと言い出した。

 バックミラーを見ると、巡がびっくりした顔をしていた。そりゃそうだろう。


 「分かった。降りるよ」

 もうちょっと行けばパーキングエリアがあったんだけど、なぜか、しきりに降りるよう言う。


 「もう少しだからな」

 「うん」

 心なしか声が弾んでいる気がするのは気のせいだろうか。

 まぁ、笠間市内に行くにはここで降りた方が近いからいいけど。


 そして、道の駅へ入ると、エレナはトイレに行かずにキッチンカーへと向かった。

 「おい、トイレは?」

 「水飲むの我慢してたから大丈夫よ」

 なるほど。モンブランが食べたかったんだな。

 初めから言えばよかったのに。

 もっとも、それに素直に従うかは、エレナの必死さ次第だけどな。


 「亨、お金ちょうだい」

 「はぁ……分かったよ。秋山さんは?」

 「え? じゃ、じゃあ」

 戸惑いながらも頷いた巡。ツッコミより食欲が勝ったかな?


 そうして、三個頼んでベンチに座って食べる。

 「うまっ!」

 俺も思わず声が出てしまった。

 中がアイスになっているのか。これは意外だ。


 食べ終わったので、車へ行こうとすると、いつの間にかいなくなっていたエレナが栗コロッケまで買ってきた。


 アンジュを迎えに行くんだぞ?

 まぁ、エレナと一緒に行くと毎回こうなるんだよな。 


 まぁ、急いだところで、数分の誤差ではあるんだが、その数分が重要だと思うんだ。

 でも、アンジュばっかりかまって、エレナの相手もなかなかしてやれなかったしな。

 それにアンジュのことだ。きっと先に観光して何か食べているに違いない。


 「ほら、食べながらでいいから行くぞ」

 「分かったわよ」

 この時点で、巡はずっと不安そうな顔をしている。気持ちは分かる。


 笠間市内へ入り、駐車場に車を止める。

 「とうとうここまで来てしまいましたね」

 胡乱げな目で俺を見る巡。まぁそうなるわな。


 アンジュから自撮りが送られてきているので、目的の場所へ向かう。

 お店の中のベンチでお腹をさすりながらゆったりしているアンジュがいた。

 小さく『ケプッ』とゲップをしていた。


 「お待たせアンジュ」

 「さきにごちそうさまでした」

 どうやら一人でかなり食べたらしい。


 そして、一番驚いているのは巡だ。

 「えっ!? ええっ!? ええーーーーっ!?」

 「巡、迷惑だから大声出さない」

 「いや、だって……ぐぅ……」

 納得いかないといった顔をしている。

 最初は誰だってそうだよね。


 そんな中、エレナはエレナだった。

 「すいませーん。それぞれ二十個ずつくださーい」

 「はーい」

 今のご時世、値段が安いとはいえ、そんだけ買ったらなぁ……。

 エレナは早速両手に大きな袋を、ホクホク顔で抱えている。


 「亨、鍵貸して」

 「はいよ」

 エレナが車に向かって行くと、巡が俺の袖を引っ張った。


 「おにーさん。どういうことか説明してくれますか?」

 買ったバター焼きを俺に差し出しながら聞いてきた。

 珍しいな。人に物を聞く態度を身につけている。


 俺はそれを受け取って、事情を話した。

 「アンジュはさ、気になるものを見つけたら、こうして飛んじゃうんだ」

 「あー、なるほどですねー…………………………って、そんなんで納得するわけないでしょー」

 だよな。俺もそう思う。


 「だが、事実なんだよ。こうして迎えに行き慣れているのを見てもらえれば……」

 「確かに冷静でしたけど……」

 アンジュを見る巡。当のアンジュはまだお腹をさすっている。


 「これ、なんかのマジックとかじゃないんですよね」

 「そうだな。仮にマジックだとしても種はないな」

 どうしても飲み込めないものを何とか飲み込もうとしていた。そんな表情だ。


 「でも……まぁ、ちょうど良かったです」

 「ん?」

 「御朱印をもらいに行くには、ちょっと遠いなって思ってたんです」

 したたかというか、強いな。エレナの周りってこんなのばっかりだな。


 「じゃあ行くか」

 「はい」

 「アンジュは……」

 「……おなか、いっぱい……」

 どれだけ先に楽しんだのだろうか。

 ベンチから中々降りようとしない。


 仕方ないので、両腕を差し出したアンジュを抱っこして、鳥居の方へ向かうと、エレナが珍しく何も抱えずに戻ってきた。

 …………空を見る。大丈夫。綺麗な青空と白い雲。見事な秋空だ。


 「上なんか見てどうしたのよ」

 「いや、別に……」

 そうして、四人で神社へ入る。


 「おっきなきつねしゃん!」

 稲荷神社だからな。そりゃあいるだろう。

 菊まつり前だからか、今は参拝客もそこまで多くない。


 しかし、バイトをしているからか働いてる人の動きを目で追ってしまう。

 そして、気がつくと巡はいつの間にか御朱印の受付を済ませていた。


 「いつの間に」

 大きな番号札を持っていた。ノート一冊分くらいの大きさだ。


 「ふふん。ここはオマイ○マンシールが貰えるんですよ。それぞれ月ごとに違ってー……」 

 しばらく巡の解説が続いた。


 なんでもビック○マンシールみたいなものがもらえるらしい。

 まだ三種類しか手に入っていないという話から始まり、祀られている神様や地域の歴史まで、簡単ではあるが一つ一つ説明していく。

 これは趣味とかそういうレベルを超えている気がする。


 そして、エレナがげんなりしたところで、気がついたのか、巡は頭を軽く掻いて止めた。

 「ごめんごめん。熱くなっちゃったね。あはは」

 「長すぎよ、もう」

 エレナが腰に手を当てて小さく嘆息した。


 「じゃあ、お参りしましょう」

 「そうだな」「そうね」「おー」

 「ちなみにお参りの仕方は知ってますね?」

 「知ってるわよ」

 話が長くなりそうだったのか、エレナが先に歩き出した。


 賽銭箱の前へ移動してみんなでお参りをした。

 (これからも、平和でありますように)

 こんなもんだろうか。

 横を見ると、三人ともまだ祈っていた。百円に願いを込めすぎだ。


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