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メリーさん家の三姉妹  作者: 玉名 くじら


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81/99

81 その手があったな


 それはとある休日。

 特に予定もないので、俺とアンジュとエレナの三人でぼーっとテレビを見ていた。


 「暇ね」「ひまー」「暇だなぁ……」


 まぁ、毎回受験勉強しているより、こうして息抜きするのもいいだろう。

 でも、思うんだ。息抜きの方が多い気がするということを。


 アイリさんは知り合いと会ってくると言って出て行ってしまった。

 環は生徒会の仕事があり、操は新しく出来た友人と遊んでくると言っていた。

 あいつも受験生だろうに。


 テレビでは旅行の特集をやっているのだが、ずっとCMばかり流れていた。

 アンジュも退屈そうにしている。


 そんな時、チャイムが鳴った。

 チャイムが鳴っているのに入らないということは、まだうちにそんなに来ていない人物だ。


 俺が出ると、めぐりんこと巡がいた。

 「おはよーございます、おにーさん」

 「ああ、おはよう。ってめぐりんだけか」

 「やはり、めぐりん呼びは照れますね」

 だってそう呼んでいいっていうから。


 「で、秋山さんはエレナに?」

 「まぁ、そうですけど」

 なぜか少しムッとした表情になった巡。


 中へ入ると、エレナの横に座る巡。

 「今日は礼奈とは一緒じゃないの?」

 「なんか家族で出かけるんだって」

 「あー、なるほどねぇ」

 俺とエレナは顔を見合わせた。


 「その手があったな」

 「ねー」

 「え、なになに?」

 巡が訳が分からず困惑していた。


 俺も盲点だったよ。アンジュを迎えにみんなで行っていたけど、みんなで普通にお出かけするという発想に至らなかった。

 これは巡に感謝だな。次回からはそうしよう。

 エレナもそう思ったのか、俺と目が合うと頷いた。


 「おっ! なになに? なんですかー?」

 「なんでもないわよ」

 「ああ」

 「ホントですかー?」

 一体何がそんなに巡の興味を掻き立てたのだろうか。


 「そういえば、巡は家族と出かけなかったの?」

 「うちの親平日休みだから」

 「あ、そうなのね」

 「だから、いつも一人で寺社仏閣巡りしてるよ」

 「へぇ。いいじゃない。面白そうね」

 「面白いし楽しいよ。エレナは行かないの?」

 「んー、考えとく」

 興味はあるんだと思うけど、どこから手をつけたらいいのか分からないって感じがする。


 「そっか」

 巡は無理には誘わないんだな。意外だ。


 「本当はさ、今日行こうと思ったんだけど、ちょっと遠くてさー」

 頬を掻きながらはにかむ巡。

 まぁ、あるよな。計画立てて、気負いすぎて行く前に疲れちゃうの。


 呆れながらエレナが聞いた。

 「一体どこまで行くつもりだったのよ」

 「えへへ。電車でちょっと」

 そのちょっとは絶対に近場ではないだろう。


 そして、テレビでは、茨城県の特集をやっていた。

 『今が旬の栗を使ったモンブランです。見てください、この細さ。うわぁ! (ゴクリ)……では、わたくしも早速いただいてみたいと思います。 !? うわ、なにこれ、濃厚! 栗の味がすごいです! おいしい……』

 「「「「ゴクリ……」」」」

 三人がテレビにかじり付いた。


 『そしてこちらはなんと、シュークリームですね、栗のペーストと丸ごとの栗が入っています。では、こちらも失礼して……。うわぁ、なにこれぇ。うんまあ!』

 「「「「ごっくん……」」」」

 女子はスイーツ好きだもんな。


 そして、そうなれば次の動きも読めるというもので。

 「亨、今すぐ行きましょう」

 「あ、あちきも連れてってほしいです」

 エレナと巡が俺の前に来て、せがんだ。


 そして、アンジュの声がしないなと思ったら、既にいなかった。

 「あ、あれ……アンジュちゃんがいませんが……」

 トイレの方やキッチンまで見に行っている。偉いな……。

 結局見つからず、戻ってきた巡がキョロキョロとするが、どうしたもんか。


 「じゃあ……迎え行ってくるか」

 「待って、わたしも行くわ」

 「いやでも、秋山さんは?」

 「あっ、そっか……」

 俺とエレナで巡を見る。


 「な、なんですか」

 珍しく戸惑っている。

 流石に迎えに行くから帰ってくれなんて言えないし、そもそもアンジュがいないのに、迎えに行くと言って納得するだろうか。


 俺とエレナは互いに顔を見合わせると、小さく頷いた。

 「仕方ないな」

 「仕方ないわね」

 「えっ、えっ!?」


 戸締まりをして、駐車場へ向かう。

 「あ、あの……アンジュちゃん一人でいいんですか?」

 その質問はもっともだ。だが──


 「今からアンジュを迎えに行きます」

 「はあ?」

 その反応はもっともだろう。俺だって言っていてよく分からないし。


 「まぁ、行けばわかるよ」

 「?????」

 なんかこういう反応久しぶりだな。

 エレナが颯爽と助手席に乗ると、巡は不審そうな顔のまま後部座席へ乗った。


 「いいか、エレナ。まず目的地に向かう。だから道の駅やサービスエリアは後だからな」

 「でも、トイレ休憩くらいはいいんじゃないの?」

 「…………まぁ、長くならないようにな」

 「なんか、よく分からないけど、慣れてますね」

 「まぁな」

 ずっと疑っているが、これが正常な反応だよな。


 巡はずっとマンションを見上げていた。

 いないはずのアンジュを探すように。


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