08 迎えに来たはずなのに
その後、エレナさんは移動販売でアイスを購入した。
「カッチカチと評判のこれ、食べてみたかったのよねー」
本当にアンジュちゃんを迎えに行くんだよな?
どう見ても観光に行くノリだ。
仙台を超えてからはトンネルが多いからか寝てしまった。
俺なんて心配で心配で気が気じゃない。
エレナさんの寝顔を見ても全然気が休まらない。
今頃アンジュちゃんは泣いてるかもしれないのだから。
あれからアンジュちゃんからは連絡がない。
駅を出たら確認すべきだろう。
八戸を過ぎた辺りでエレナさんを起こす。
「んにゃ…」
この残念美人な感じは姉のアイリさん譲りなんだろう。
二度寝しそうになったところをほっぺたを叩いて起こす。
「ちょ、起きてるわよ。止めなさいよ」
「そう言いながら目を閉じるな。もう着くぞ?」
「ん……」
「だから、寝るなって」
結局新青森に着く寸前まで起きなかった。
「んー…。流石青森。寒いわね」
伸びをしながら言うエレナさん。
じゃあ早速レンタカーを借りに行くか。
「ねぇ、軽は狭いし、何かあったら怖いからもっと大きいのにして」
もう既に怖いことが起きているんだが?
一刻を争うのにこの余裕はどこから来るんだ?
ただまぁ、軽は不安がある。
かと言って大きいのは逆に怖い。
「はぁ…。ヤリスでいいか?」
「まぁ、我慢するわ」
マジでどこから目線なんだこいつ。
ぶっちゃけ、レンタカー屋さんの店員さんの俺を見る目が不審者を見る目だ。
まぁ、平々凡々な俺と見た目だけは美少女なエレナさんの二人とだと、怪しいことしてるようにしか見えないだろう。
そして、レンタカーに乗る前に初心者マークをつけると、不安そうな表情は増した。
軽く頭を下げて車道に出るまで、硬い表情のままだった。
俺そんなに信用ないんだろうか?
エレナさんが助手席でアンジュちゃんと連絡を取り合っていた。
「アンジュ大丈夫?」
『だいじょーぶー。今ラーメンたべてりゅー』
「なっ、ずるいわ」
「あんだけ食べてまだ食べるんか」
「だって美味しそうなんだもん」
見た目と違ってよく食べるな。
暫くやり取りしていたが、伸びるからとアンジュから一方的に切られた。
しょんぼりするかと思ったら、速攻で検索を始めるエレナさん。流石です。
青森駅から車で北上する。
まさか、初めての運転がこんな長距離になるなんて。
「少し気ぃ抜きなさいよ。肩に力入りすぎよ」
「仕方ないだろ? 免許取ってから初なんだから」
「事故んないでよね」
「あ、ああ」
心配してくれるんだな。
「事故ったら美味しいもの食べられなくなるからね」
「……」
マジで旅行気分で来ているんじゃないだろうか?
「あ、そうだ。これUSBで音楽聴けるわよね。これ繋いで……と、ほい」
エレナさんがスマホを操作すると、スピーカーから音楽が流れた。
マジで旅行気分で来ているんじゃないだろうか。
──車で走ること一時間半。
「まだこんな雪残ってるんだな」
「アンジュ大丈夫かしら?」
アンジュのいるであろう場所へ近づくと、かなりの数の雪だるまが見えてきた。
まさか免許とって初めての運転が雪の残る道を走ることになるとは思わなかった。
凄い神経を使うし、肩もカチカチだ。
「あ、あれじゃない?」
「なんで雪だるま作ってるんだ?」
「だって、暇でしょ?」
「暇だからってそんな……」
車を降りると、俺とエレナさんに気づいたのか、両手を広げて近づいてきた。
なんとか昼過ぎについて良かった。
これが夕方とか夜中だったらと思うとぞっとする。
「アンジュ!」
エレナさんが声を掛ける。
なんだかんだあったが、やっぱり妹思いのいいお姉さんじゃないか。
アンジュちゃんは、エレナさんを過ぎて、俺の足に抱きついた。
「おにーちゃ!」
「…………」
エレナさんが振り返り、信じられないって顔をしている。
多分今までの行いがバレてるんじゃないですかね?
俺は、アンジュちゃんを抱き上げた。
「遅くなってごめんなー」
「待ってたー」
その後、アンジュちゃんがいたであろうラーメン屋さんに事情を聞かれたが、どう説明したものか。
軽く叱られた後に、ラーメン代金を支払って、元来た道を戻ろうと車に乗り込んだ。
「なぁ、アンジュちゃんはチャイルドシートじゃないとダメなんじゃないか?」
「分かんないわ」
これ捕まらないだろうか?




