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メリーさん家の三姉妹  作者: 玉名 くじら


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78/98

78 そうやって自分を外そうとしないの


 それは、四人が珍しく集まっていた午後のことである。

 いつもならば、アイリさんはお馬さんかボートなんかを見にいっている。

 エレナも塾に行っているか、どこかで買い食いしている。

 俺もアンジュをお迎えに行っている。

 なので、こうして休日に四人が集まるのは久しぶりかもしれない。


 そんな中、アイリさんが神妙な顔をしてノートパソコンとにらめっこしていた。

 普段ならば、休みの日は仕事は絶対にしないと、社用携帯すら会社に置きっぱなしにするくらいなのだ。

 まぁ、それで会社が回っているんだからすごいことではあるんだけどね。

 イレギュラー対応とかどうしているのか気にはなるのだが……。


 そんなアイリさんが、わざわざ普段使っていないノートパソコンを使っているのだ。

 ふと、空を見る。九月だからな、いつ雨が降るとも分からない。

 いまのところ、綺麗な青空だ。


 しかし、あんなににらめっこするなんて、余程の難件なんだろう。

 そっと、淹れたお茶を置くと、すぐにそれを見た。


 「あら、ありがとう」

 「いえ、休日まで仕事なんて大変ですね」

 「え?」

 目をパシパシと瞬いている。

 そして、ケラケラと笑うと、手を胸の前で小さく振った。


 「いやねぇ、私が家に仕事持ち込むわけないでしょう」

 「そ、そうですか」

 じゃあ、一体何なんだろうか。

 馬券を買うわけはないだろう。アイリさんは現地で見て確認して買うのが好きみたいだからな。

 だからか、地方のレースはほとんど手を出していない。


 「いや、ね。ふるさと納税をね、見ていたのよ」

 「ふるさと納税?」

 それを聞いて、エレナはソファから立ち上がり、椅子に座った。

 アンジュも床で積み木で遊んでいたが、その手を止めて、椅子に登っていた。


 「ほら、亨ちゃんも座って座って」

 「ええ」

 なんか家族会議が始まる雰囲気がある。

 外様の俺がいていいのかは謎だが。


 「それで、お姉ちゃん。ふるさと納税って聞いたけど?」

 「うん」

 ノートパソコンを見えやすい位置に動かした。

 そこにはポータルサイトが表示されていたが、俺は見逃さなかった。

 検索履歴が全部お酒だった。


 「それでね、今まではエレナとアンジュに一個ずつ何か買っていて、残った金額でお酒にしていたんだけど」

 アイリさんほどの稼ぎなら売るほどもらえそうだな。


 「やっぱり、家族で決めた方がいいかなって」

 「でしたら、エレナとアンジュと三人で決めた方がいいんじゃないですか?」

 なぜか三人が同じタイミングでため息を吐いた。


 「あのね、亨ちゃんもうちの家族なのよ? 亨ちゃんがいないとうち回らないもの」

 「ですけど」

 そう言ったところで、俺の口唇に人差し指を当てた。


 「もう。自覚ないんだから。いい? 亨ちゃんは家族なんだから、そうやって自分を外そうとしないの」

 エレナとアンジュも頷いている。

 なんか、心がぽかぽかとしてくるが、できれば、エレナは何か食べながら頷かないで欲しかった。


 「ありがとうございます。でも、それはアイリさんの稼いだものですからね。俺が好き勝手に決めるわけにはいきません」

 「…………」

 「なので、アイリさんが家族を思って決めてくれた方がいいかなって。それに対して、意見を求められれば答えますよ」

 「じゃあ、ちょうどいいわね。みんなが欲しいものを、選べばいいのよ。ね?」

 「え、うん」「あい?」

 エレナとアンジュも戸惑っている。


 「ほらほら。あたしだと全部お酒になっちゃうわよ」

 「ホントお酒好きですね」

 「いや、まぁ……うん。そうね」

 ほんの少し愁いを帯びた表情をしていた。


 「いつか、亨ちゃんと一緒にお酒飲みたいわね」

 「俺まだ十八ですよ? 誕生日迎えてもまだ一年ありますよ」

 「そう。じゃあ、二十歳の誕生日になったら飲みましょうよ」

 「ええ、まぁ……はい。それでいいなら」

 「じゃあ決まりね。……だったら、記念のお酒にしましょう。その日に開けるようなやつ」

 「アイリさん……」

 そう言うと、エレナとアンジュも表情を変えた。


 「いいなー。わたしもそういうのがいいかも」

 「アンジュもー」

 「じゃあ、尚のこと、みんなで選びましょ」

 「そうね。…………お姉ちゃんの寄付額だとシャインマスカットどれくらい食べられるの?」

 「一箱は確実ね」

 「買いに行った方がもっと食べられそう」


 それを言ったら身も蓋もないんだよなぁ。

 更に言えば、アンジュを迎えに行ったついでに食べて買ってくるから、よほど変わったものじゃないと満足できない可能性もある。


 「そういえば、さっきお姉ちゃんが言ってたけど、亨の誕生日っていつなの?」

 画面から顔を上げると、俺の顔を見てエレナが言った。


 「ん? 俺?」

 「そう」

 「10月11日」

 「え?」

 エレナは大きく目を見開いた。


 「な、何だよ」

 「わたしと三日違いなのね」

 「そうなの?」

 「エレナは10月8日よね」

 「ちょ、お姉ちゃん、わたしが言うつもりだったのに」

 「ふふふふー。あ、あたしは4月2日ね」

 なんかアイリさんは誕生日早そうな気はしてた。

 そんな中で、アンジュだけがキョロキョロとしていた。


 「どうしたアンジュ」

 「たんじょーびってなーに?」

 「んー、そうね。ケーキ食べる日よ」

 「じゃあ、きょう!」

 「それは違うだろ」

 ついつい、突っ込んでしまった。アイリさんの方を見ると苦笑いしていた。

 それに、ケーキ食べる度に歳取ってたら、今頃百歳近いだろう。


 「アンジュは1月30日ね」

 なるほど。じゃあ、その日はちゃんと覚えていないといけないな。


 「それにしても亨が11日ってことは、わたしの方がお姉ちゃんね」

 「俺の方が年上だぞ」

 「そこはノッてよね、もう」

 エレナは片方の頬を膨らませて睨んだ。


 「じゃあ、あたしからのプレゼントってことで」

 そう言って、ノートパソコンを軽く叩いた。

 随分と高額なプレゼントだな。


 「ぷれぜんとってなーに」

 「そうね、好意や感謝の気持ちを物にして贈ることね」

 「あんじゅもらってない」

 「あ、あげたわよ」「ちゃ、ちゃんとあげたでしょ」

 アイリさんとエレナが大慌てで立ち上がった。

 そして、何をあげたのかを言った。

 エレナはぬいぐるみやバッグを。

 アイリさんはコートとか服だった。


 「えへへ、わしゅれてた」

 そんなアンジュは何かを期待するように俺を見た。


 「ちゃんと用意しておくからな」

 「うん!」

 「あ、わたしのは?」

 エレナも一緒になって言う。


 「もちろん用意するさ。肉……だよな」

 「バカー!」

 なぜか腹を思いっきり殴られてしまった。

 ……何故だ。ちゃんと誕生日の料理を言ったはずなのに。


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