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メリーさん家の三姉妹  作者: 玉名 くじら


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74/98

74 それじゃ、おもしろくない


 環はティナを見て、眉間にしわを寄せている。

 「どうした?」

 「いや、ちょっと気になって」

 そう言ってカバンから眼鏡と櫛を取り出した。


 「ティナさん、ちょっとこれかけてもらって、前髪七三にして、気難しそうな顔してもらってもいいですか?」

 すごく失礼な提案なのに素直に了承するティナ。


 「え? ええ、いいけど」

 言われるまま眼鏡をかけて、七三にした。

 なんか、漫画描いてた人が大島行って先生になりそうな顔になった。


 「似て……いや、うーん……似て……なくも……うーん」

 そこまでしても似てないんなら似てないんだろうよ。


 「ティアは普段どんな顔して学校に行ってるのよ」

 おかしそうに笑いながら眼鏡を外した。


 「あと環、ナチュラルに失礼」

 「まぁ、偏屈なのは分かってるから。で、あの子って何やってるの。生徒会長?」

 「いや、生徒会長は清華さんって人。めっちゃ優秀。で、わたしが副生徒会長で、ティアは書記ね」

 「え、待って……、え? 環が副生徒会長? 嘘だろ?」

 「お兄……いい加減怒るよ」

 「すまん」


 だって、どう逆立ちしたって、環にそんな役職が務まるとは思えない。

 アンジュは俺が話しに夢中になっている間に、ケーキを引っ張って自分のところに寄せて食べ始めた。

 エレナの片鱗が見える。

 まぁ、アンジュは育ち盛りだから、いっか。

 アンジュの頭を撫でると、ニッコリと返してくれた。なんで、ケーキ一個しかないんだろうな。


 それよりもティナの妹の方が気になる。

 「ところで、そのティアさんってのはどんな人なんだ?」

 「うーん。堅物でポンコツ?」

 ひどい……。


 ティナを見ると、苦笑いしている。

 「大体合ってるわね。空回りしていたり、頭でっかちなところあるし。反発してすごく真面目な格好してるわよ。せっかく自主性を重んじる英愛で、あのスタイルはある意味すごいけど」

 「まぁ、風紀委員ないのに、風紀委員長って言われてますけどね」


 そこまでいくと見てみたい気もする。

 そのティアさんとやらに対する二人の印象が最悪だ。頭でっかちの堅物でポンコツ。

 もう一人の方はどうなんだろうか。

 そう思ったのが顔に出ていたのか、ティナが苦笑しながら口を開いた。


 「あ、ティノの方はそういうのないのよ。わたしに似て素直で……」

 素直……?


 それにしても、ティナ、ティア、ティノって凄い名前だな。

 この前言ってた、バレットだかクラウンだかってのも大体合ってるじゃないか。

 名前も影響あるんじゃないか?


 「その名前ってティナの母親がつけたの?」

 「いや、パパよ」

 まさかの父親!


 「いや、うちのパパってフルネームにすると、クリステルになるのよ。だからおんなじようにつけたのね。ちなみにおじいちゃんはクリスマスなのよ。すごくない? 子供の頃はよく田舎から出てきてサンタの格好を」

 もしかして、本物だったりしないだろうな。


 「さんたしゃん」

 アンジュも気になるようだ。

 今年のクリスマスは頑張らないとな。


 「ちなみにお母さんは?」

 やはり環も気になったようだ。


 「え? お母さん? 普通よ。敦子って名前よ。ゲーム会社でディレクターしてるの」

 名前は普通だけど、職業は凄い。憧れの職業だろ。


 「どんなゲーム作ってんの?」

 「ん? 乙女ゲーとか」

 そう言って、いくつかタイトルをあげる。二つくらいアニメ化したやつもあった。すごいな、マジで。


 何の気なしにスマホで調べた。

 ……これか。ディレクター井出敦子。……井出?

 そう言えばこの前、いとこがいるって言ってたな。アンジュと同じくらいの。

 で、井出さんの家にお邪魔したんだけど、まさかね……。そうそう繋がってるわけがない。


 でも、やっぱり気になる。

 それを聞こうと思って、ふと横を見たら、いつの間にかアンジュがいなかった。


 「あれ、アンジュ?」

 「あら、いつのまに」

 「お兄、スマホに何か来てる?」

 「あ、ああ。すぐ見る」

 なにがトリガーになっただろうか。


 思い当たるのは、『頭でっかちの堅物でポンコツ』、『ゲーム』、『アニメ化』、『サンタさん』だろうか。


 答えは早かった。

 アンジュからは日比谷公園の住所とイベントの情報が送られてきた。


 早速、ティナと環と移動する。

 日比谷公園の近くには永田町や霞ヶ関もあるから、今日のアンジュは皮肉が効いてるなと思ったら違った。


 なんでも、アンジュの好きなアニメの主題歌を歌っているアーティストたちの野外イベントだそうだ。


 「こっちー」

 アンジュは音楽好きだったからな。

 それにこのアニメもかなり長くやっていて、いろんなアーティストが主題歌をやっている。


 ティナと環は速攻で楽しみ始めた。

 アンジュはずっと興奮しっぱなしだ。

 俺はアンジュを肩車して一緒に眺めることにした。


 「これが見たかったんなら、言ってくれれば連れてきたのに」

 「それじゃ、おもしろくない。あと、けーきたべられない」

 堂々と言い切ったアンジュ。


 アンジュ的にはイベントよりケーキなんだな。

 俺のケーキも全部食べてしまったしな。

 …………パティシエを目指すのもいいかもしれない。


 そう思ったところで、頭を叩かれた。

 「いまはおんがく、きく」

 「そうだな」

 俺の好きなアーティストが出てきて、俺もついノリノリになってしまった。

 アンジュはずっと「うおー、うおー」と言っていた。


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