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メリーさん家の三姉妹  作者: 玉名 くじら


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64/100

64 ここはわがはいの聖域じゃ


 「おー、かわいいのぉ」

 「うゆ」

 とある神社の奥。

 そこではアンジュがとある女性に抱っこされていた。


 その女性は、白銀の長い髪をしていたが、見る角度によっては虹色に輝いていた。


 そして、服装はというと巫女装束にも披帛にも見える、一言では形容しがたい。

 どこかVtuberか、アニメやゲームのキャラクターを思わせるような、コスプレめいた衣装を着ていた。


 そして、一番の特徴はツノがあることだろう。

 両方の耳の少し上に立派な角があった。

 そんな角にはアクセサリーがつけられていた。


 だが、アンジュの興味はそこではない。

 「どらごんしゃん」

 「おお。そうじゃぞそうじゃぞ。ドラゴンさんじゃぞー」

 ニコニコとアンジュとお話しをしていた。


 ちなみに部屋の中は豪華かと言われたら、全然違う。

 つい先ほどまでやっていたであろうPS5とテレビ。画面は『ーPAUSEー』と表示されていた。


 壁にはアイアンラックが置かれ、そこにはアクリルケースに入ったフィギュアが飾られていた。

 他にはアニメのタペストリーだが、どれもこれも似たような見た目をしていた。


 そして、テーブルの上にはお菓子とジュースが置かれていた。

 アンジュはくぴくぴと喉を鳴らしながら飲んでいる。


 「しかし、こうも簡単に見つかってしまうとはなー」

 「アンジュ、みちゅけるのとくい!」

 「そっかそっか。ゆっくりしていっていいんじゃぞ」

 「あい」

 嬉しそうにアンジュを抱っこするドラゴンさん。


 その時、一人の巫女さんが入ってきた。

 「龍姫さまー、お客さんですよー」

 「逢佳か。あと、龍姫さまは堅い。いつものように呼んで欲しいぞ」

 「人前ですよ?」

 「今更じゃろ」

 「で、誰なんじゃ? このわがはいに用があると言うのは」

 「その子の保護者さんです」

 「え?」


           *      


 時は少し遡り──

 俺はアンジュのヒントを元に神社へとやってきた。


 随分と広い敷地だ。

 境内へ入ると、急に風が吹き、音が静かになった気がした。


 「あの、すいません」

 俺は社務所にいた巫女さんに声をかけた。

 「はい。どうかしましたか?」

 「えっと……」

 なんと言ったものだろうか。


 「御朱印ですか? お祓いですか? あ、もしかして巫女の募集ですか? いやぁ、最近人手が足りなくて困ってたんです」

 「いや、どれも違います。というか、俺は男なんで巫女さんは無理です」

 どこをどう見たら女性に見えるんだろうか?


 「え……?」

 しげしげと俺を見る巫女さん。

 「またまたご冗談を」

 ケラケラと笑う巫女さん。


 「あ、でも服装は確かにそうですね。オタクならそういう格好してもおかしくないなと思いましたが…………ほんとに男性なんですよね?」

 「今まで間違えられたことないんですけど」

 「またまたぁ……」

 手をひらひら振る巫女さん。


 「でも……まぁ、あなたなら……」

 ダメだ。話が進まない。

 そこで、俺はスマホを見せた。


 「この子の保護者なんですけど、来てませんか?」

 「あ、はい。来てます」

 俺とアイリさんとエレナが一緒に写っている写真でよかった。すぐに理解してくれたようだ。

 でも、さっきのやりとりを見ると、分かっているのか怪しい気もする。


 「では……その子はうちの神様と一緒にいましてー、会うには正装する必要があります」

 「あ、そうなんですね」


 簡単に頷いた俺もバカだった。

 袴も松葉色、白色、浅黄色とかだと思ってた。まさか緋袴とはね。参ったよ。

 まぁ、袴の色が違うだけだ。

 だが、どうにも様子がおかしい。


 「こちらがお守りで、交通安全、家内安全、学業成就、商売繁盛…………」

 「あの……」

 「どうかしましたか?」

 「俺、バイトするって言ってませんよね」

 「あ、そうでした」

 もしかして既成事実化するつもりだったな。


 そうして、敷地の奥へ行く。

 といっても、社務所から自宅エリアを通っていった最奥だ。


 「龍姫さまー、お客さんですよー」

 「逢佳か。あと、龍姫さまは堅い。いつものように呼んで欲しいぞ」

 この人、逢佳って名前なのか。まぁ今更だな。

 しかし、龍姫様とは。


 「人前ですよ?」

 「今更じゃろ」

 「で、誰なんじゃ? このわがはいに用があると言うのは」

 「その子の保護者さんです」

 「え?」


 そうして案内されて、入ると、見事なツノを生やしたコスプレイヤーさんにアンジュが抱っこされていた。

 それも、かなり趣味性の高い部屋だ。


 「おにーちゃ」

 「え?」

 何でそこで疑問形?

 龍姫さま(笑)と呼ばれた女性は、俺を胡乱げな目で見る。


 「おにい……ちゃん?」

 「俺、そんなに女性っぽく見えます?」

 「むしろ、男っぽさあるか?」

 「ですよね!」

 逢佳さんが、両方の拳を握って、ふんすと鼻息荒く言った。


 「まぁ、ボーイッシュではあるが……嘘じゃろ?」

 髪の毛も伸びたしな。少し……切るか。


 「というか、ここは……」

 とてとてと歩いてきたアンジュを抱っこして辺りを見回す。


 「ここはわがはいの聖域じゃ」

 聖域ねぇ。


 「またくる」

 アンジュがバイバイと手を振った。


 「おう。いつでも待ってるぞ。お菓子も用意しておこう」

 「ええ。あなたもいつでもバイト待ってますよ」

 どこか、噛み合わないまま、帰路についた。


 「なあアンジュ」

 「どちたの?」

 「俺、そんなに女っぽく見える?」

 「うゆ? おにーちゃはおにーちゃ」

 「だよな」

 「うん!」

 よく分からないが、まぁいいだろう。


 だが、なぜかその後、自宅へバイトの合格通知がご丁寧にも封書で届いた。

 応募してないのに。


 「え、なに? 亨バイトすんの?」

 「いや、応募してないんだけどなぁ」

 「?」

 エレナが不審そうな顔をしたが、用意したデザートの方に興味を奪われたのだった。


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