↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
メリーさん家の三姉妹  作者: 玉名 くじら


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
62/99

62 かわいいですよね


 「全く。夏休みだというのに、研究室に籠って何をやっているんだね?」

 そう言うのはこの研究室の主で、教授である平成美だ。


 「ホイーラー=ドウィット方程式にコラッツ予想……こっちはポアンカレ予想……なんでこんな数式を……しかもクレヨンで描くなんて、随分とエキセントリックなことをしているね」


 机に手をついて、覗き込むようにして見ている教授。

 アンジュちゃんが描いた数式の紙と、その姿が相まって、いかにも研究者らしく見える。


 「わざわざそれを清書する。暑さでおかしくなったのかい?」

 おかしいのは教授の方だと思う。


 顔を上げて教授を見る。

 椅子の上に乗っかっている。

 そう。小さいのだ。

 改めて上から下まで見る。数秒で事足りる。


 「な、なんだ? どうした?」

 そう。大学教授だと言うのに、見た目も大きさも小学生なのだ。

 それなのに、二人の子持ちだと言うじゃないか。

しかも、子供は高校1年生と中学3年生。

 これが、経産婦に見えるだろうか?


 「な、なぁ、栗栖……なんとか言ってくれ」

 「あ、ああ。すいません。教授が今日も小学生やってるなって思いまして」

 「だから、それはやめろと言っているだろう」


 教授が板書すると下の方にしか書かないので見えない。

 最近は脚立が置いてあるが、脚立が邪魔で見えない。

 と、まぁ一癖も二癖もある人物である。


 「まぁいいや。で、これはなんなんだ?」

 「もらいました」

 「そうか。もらったのか…………え? だ、誰に?」


 言っていいものなんだろうか。

 アンジュちゃんと教授。どっちの背が高いのか。

 あ、そっちじゃないわね。


 「く、クレヨンで描くなんて……でも、これは確かに……」

 教授も数式を見ていく。


 「これ、あってるんじゃ……」

 「それを今、確認してます」

 まぁ、確認してそれがあってるかの確証は持てないんだけどね。


 そんな時、二人しかいない部屋で、私の腰のあたりを引っ張る感覚があった。

 「あら、アンジュちゃん」

 なぜかアンジュちゃんがいた。


 「ま、待ってくれ、え? いつから? いや、どこから入ってきて……」

 教授が狼狽えているが、今はどうでもいい。


 「今日はどうしたのー?」

 「かけたからあげりゅ」

 そう言って手渡してくれたのは、またもや謎の数式。


 「ありがとー」

 「こんかいはじしんさく」

 「あら、ほんと。よく描けてるわねー」

 ついつい頭を撫でてしまう。


 「あの栗栖が……」

 信じられないと言った顔でわたしを見る教授。

 教授とはもう少し話し合う必要があるわね。


 そして、教授が机に乗っかって、アンジュちゃんの描いた数式を見る。

 「!?」

 全く。机に乗るなんて行儀が悪い。

 まぁ、身長が低くて、椅子からだと見えないんでしょうけど……。


 しかし、教授も研究者ね。

 アンジュちゃんより数式を優先するなんて。

 まぁ、わたしは逆なんだけれどね。


 そして、少しすると、研究室のドアがノックされた。

 「ん? 桃原あたりかな? どうぞー」

 「失礼しまーす」

 入ってきたのは宇慶亨。アンジュちゃんのお迎え係で、一番の謎の人物である。

 「おにーちゃ」

 「また勝手にきてー」

 「え? え? ええええ?」

 教授が小学生らしい驚き方をしている。


 「ご迷惑をおかけしました」

 「ちました」

 そう言って、あっさりと出て行った。

 いや、『逃げるように』が正しいだろう。


 「え……、あ……、ど、どゆことー……?」

 素になると小学生の反応になる教授。


 「たまに渡しに来るんです。『できたー』って。かわいいですよね」

 「いや、かわいいと言うか、何一つとして理解できないんだが……」

 まぁ、アンジュちゃんや彼のことを考えると、黙っていた方がいいのかもしれない。


 「そもそもわたしが入ってきた時には栗栖しかいなかっただろう?」

 「……………………」

 「なんで黙っているんだ?」

 転移することなんて言えるわけがない。


 「もしかして誘拐してきたのか?」

 「ばっ……そ、そんなことするわけないでしょう!」

 「じゃあ、どうしてなんだ?」

 「それは……」

 「それに。あの彼だ。ここにいるのが分かっているようなそぶりだったぞ?」

 「まぁ、そうですね。ここの生徒ですし」

 そこで教授は少し考えるそぶりをして言った。


 「では、彼に聞こう。どこの学部で名前はなんと言うんだい?」

 教えてもいいが、楽しみが減る気がしたので、紙をまとめてバッグにしまう。


 「ちょ」

 「お疲れ様でした」

 急いで部屋を出る。

 出ると同時に紗季がいた。


 「お、ティナ殿どうしたのですかな?」

 「教授の相手してあげて」

 「え?」

 「ま、待ちなさい……って、桃原! あー、邪魔! ちょ、あー!」


 うまいこと紗季が邪魔になったようだ。

 教授の力では押しのけることも出来ないだろう。

 わたしはアンジュちゃんに会うため、亨に連絡をした。


 『←隠してあげたんだから、感謝なさい』

 だが、既読スルーされたので、わたしはこっそり入れておいたGPSで彼の場所へと向かったのだった。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。