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メリーさん家の三姉妹  作者: 玉名 くじら


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60 それはそれ、これはこれ


 今日は保育園の親子お出かけ会だ。

 なんでもアンジュの通う保育園では季節ごとに一回イベントがあるらしい。

 アイリさんは仕事。エレナは塾だ。

 ということで俺がアンジュの保護者として参加している。


 今日はとある子供向けの遊園地に来ている。

 主にメリーゴーランドやコーヒーカップなどの小さいお子さん向けの乗り物だ。


 アイリさんの影響で絶叫マシン大好きなアンジュにはかなり物足りないらしい。

 だからだろうか、コーヒーカップを最後までずっとくるくると回していた。

 なんなら停止しても回していた。


 そうして、数少ない絶叫マシンに乗せられ、アンジュの興奮度と反比例するように俺はどんどんと萎れていった。

 戻さなかっただけ褒めてほしい。

 夏だというのに、とても寒い。


 他の保護者さんたちに「大変ですね」と言われ、愛想笑いするしかなかった。


 しかし、一番疑問に思うべきは保育士である萌歌さんの格好だろう。

 他の保育士さんは動きやすい格好にピンクや黄色のエプロンをつけているのに、萌歌さんは完全武装の勝負服だった。


 きっと気になっている保護者さんがいるのだろう。

 だけど、そうなると浮気になってしまうので、自粛してほしいところだ。


 「亨さん楽しんでますか?」

 「あ、はい」

 アンジュを気にかけてくれているんだろう。結構声をかけてくれる。


 「はいジュース。アンジュちゃんもどうぞ」

 「ありがとー」

 転移しないか心配なんだろう。


 でもどうしてだろうな。他の保護者さんたちの見守るような生暖かい視線は。

 夏だからかな? そう思って空を見上げた。雲ひとつない快晴だ。熱中症には気をつけないと。


 「では、そろそろお時間ですね」

 そう言って萌歌さんは他の保育士さんと合図を送り、園児・保護者一同を集めた。


 「では、今日のメインイベントのキュアキュアショーを観覧します」

 「「「「「わぁい」」」」」

 園児たちが飛び跳ねて喜んでいる。保護者さんたちも拍手している。


 そう。今日のメインはこれだ。

 キュアキュアショー。

 アンジュたちのような小さな子供から定年間近の大きなお友達まで幅広く親しまれ、支持されている作品だ。


 前作『ぷいっとキュアキュア』の続編で『ぷいっと☆キュアエイジング♡』という作品だ。

 なんでも今回は大人の女性も取り込みたいとのことで、抗酸化作用を題材にしているらしい。


 俺の知っている知識はこれだ。


 エイジングリコピン。

 赤い衣装でメガネをかけている。少しお硬めの学級委員っぽい感じで、その見た目通りリーダーだ。


 エイジングアントシアニン。

 紫の衣装で一番お嬢様感が強い。裏のリーダーとも影のリーダーとも言われ、よく赤を差し置いて指揮している。


 エイジングカテキン。

 緑の衣装で、どこかふくよかだ。でもどこか芯の強さを秘めていて、唯一飛び道具である大きなハンマーを使う。


 エイジングフラボノイド。

 黄色の衣装で、一番スレンダー。男と噂されている。カレー担当となぜか戦隊ヒーローの要素も取り入れている。


 エイジングクロロフィル。

 ピンクの衣装で、一番ほんわかしているが、いつも身につけているお人形を貶されるとバーサーカー化する。


 未だに思う。本当に子供向けの作品なのかと……。


 入り口やアーチ。ポスターには可愛いイラストが描かれているが、作品を見るといつも驚かされる。

 一見かわいいのに、中身が妙に殺伐としている作品だ。

 ま○マギやがっこう○らし! みたいな雰囲気が少しある。


 みんなに続いて、イベントスペースへと入る。

 予想以上に大きなステージの前にはキッズベンチがあり、後ろは階段状のベンチになっている。


 だが、もっと早くに突っ込むべきだったな。

 園児たちは皆、キュアキュアの衣装を着ている。女子だけでなく男子も。

 なんなら保護者の方も半数以上はそういった感じの服を着ている。

 なんなら本当に衣装を着ている。


 ちなみにアンジュはエイジングカテキンの衣装を着ている。

 そして、アンジュと仲のいいお友達が俺を指差して糾弾した。


 「なんで、きてないんだ!」

 真っ先に言ったのは、大地くんだ。紫の衣装を着ている。

 その後、翔太くん、真凛ちゃん、天(そら)ちゃん、海斗くんと一緒になってよく分からないことを言い出した。


 「あんちおきしだんと、かいいんきそく!」

 「だいさんじょー」

 「いかなるりゆうがあってもさんかしゅる」

 「だいはちじょー」

 「かいいんはおなじこころざしをもちゅものとして、おなじこすちゅーむをちゃくよーしゅる!」

 よくもそんな長いセリフを……規則を言えたな。


 「いや、着なくてもいいんじゃないかな?」

 「だいいちじょー」

 「うたがってはいけない!」

 一番最初に『第一条、疑ってはいけない』が来るのはどういうことなんだろうか。


 「ほ、ほら、第二条だと、『みんなで仲良く楽しむこと』ってあるじゃん。ね? 別に着なくても」

 「「「「「「それはそれ、これはこれ」」」」」」

 サラウンドで言われてしまった。


 そして振り返ると、萌歌さんが衣装を持っていた。

 エイジングクロロフィルの衣装を。萌歌さんが着ている衣装と同じだ。


 「いや……」

 「聞きましたよ。コミケで霊夢のコスプレしたそうじゃないですか」

 「あ、いや……、あれはなりゆきで」

 「どうして、わたしを呼んでくれなかったんです?」


 黒い笑顔で俺に迫ってくる萌歌さん。

 気まずくて視線をずらすと、他の保育士さんも、着ていない保護者さんに衣装を着るよう迫っていた。

 一体、キュアキュアショーの何がそうさせるのだろうか?


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