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メリーさん家の三姉妹  作者: 玉名 くじら


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06 最初のお迎え


 「待ってたわ」

 「はい……」

 まさか勝手に手続きされてるとは思わなかった。

 別に向かいなんだからいいと思うんだが。


 今日も俺はこの家で家事代行みたいなことをやっている。

 そのせいか、アンジュちゃんは俺にめっちゃ懐いている。汚部屋を部屋に変えたからかな?

 あとはちゃんとご飯作って一緒に食べているからだろうか。


 ちなみに今日は元凶のアイリさんはいない。仕事らしく、抱えてる案件が大詰めらしい。大変だな。

 ちなみに俺にゲロを吐きかけたのは、別の大きな取引でライバルに持って行かれて、飲まなきゃやってらんなくなったとか。

 それは社会人の仕事なのか怪異としての仕事かまでは聞いていなかった。なんせライバルが八尺様って言うじゃないか。

 できるなら関わりたくはない。


 エレナさんから改めて、なぜ同居してほしいのかの理由を言われた。

 アンジュちゃんのお世話をしてほしいと。いやいや、俺大学生なんですよ?

 「でもアンジュもあなたを気に入ってしまったから」

 そんなんで、『はいよろこんで』なんて言えないぞ?


 だが、含みのある言い方をするから何かあるのかもしれない。

 だって彼女達はあのメリーさんなんだからな。

 黙っていればフランス人形の如く整った顔立ちで美人だ。

 二人とも性格はあれだが……。


 「俺大学生なんですけど」

 「どうせ勉強しないで遊んでるんでしょ?」

 心外だな。ちゃんとやってる方だと思うぞ。

 というか、世間一般の認識ではモラトリアムを謳歌してる認識なんだな。


 そして、エレナさんとアンジュちゃんの連絡先を半ば強制的に教えられた。

 というか、アンジュちゃんもスマホ持ってるんだな。まぁ、メリーさんだし当たり前か。

 まぁ、生活費コミコミで学費まで援助してくれるとかどんだけ稼いでるんだよ。


 バイトしなくていいのはいいけど、裏があるんじゃないだろうかとずっと疑っていた。

 そして、それはある意味当たっていたのだった。

 俺はこの後、ずっと振り回されることになるんだからな。


 「じゃあ私、塾あるから」

 あ、そうかエレナさん今年受験だっけ。

 しかし、塾に通う怪異とは。

 まぁ、言われなきゃ気づかんし、言われても冗談にしか思えないけどな。


 ちなみに天使のアンジュちゃんはテレビを見ていた。

 「……………」

 エレナさんが俺の顔を覗き込む。美少女にまじまじと見られると照れるな。

 「あなた大学、どこ?」

 「え? 早稲林だけど」

 「あら。頭いいのね」

 目をキラキラと輝かせるエレナ。


 「じゃあ私に勉強教えてよ」

 「えぇ……。ちなみにどのくらいできるの?」

 「赤点は回避してるわ」

 そこは誇るとこじゃない。

 あんだけ俺に言っといて、その成績は許し難い。


 「ちなみにどこ狙ってるの?」

 「英愛」

 「あそこ偏差値くっそ高いだろ。無理じゃね?」

 「だってあそこ制服かわいいんだもん。乃木坂みたいな衣装だし」

 確かにあそこだけ頭一つ抜けてるんだよな。


 「でもエレナさんの頭じゃ……」

 「そこであなたよ。期待してるわ」

 期待されてもなぁ。

 「まぁ、考えといてよ」

 「まぁいいけど」

 しかし、たった数日で懐かれたもんだな。


 「じゃ、行ってくるから。アンジュいい子にして……あれ?」

 さっきまでテレビを見ていたはずのアンジュちゃんがいない。

 「どこ行った?」

 その瞬間俺のスマホが鳴った。【アンジュ】と表示されていたので、スピーカーにする。


 「はいもしもし」

 『あーあー! ここどこー!』

 互いに顔を見合わせた。

 パニクっているのだろう。大きな泣き声で電話をかけてきた。


 『あーあー! あ、あたしえっと、たしか…め、メリーさん。ここどこー! おにーちゃーん!』

 こんなときにわざわざお約束ごと言わなくてもいいのに。


 「お、落ち着いてアンジュ。そこに何が見えるの?」

 エレナさんも焦っている。

 だが、この現象に心当たりがあるようだ。


 『えー、かいだーん。あと、海ー。青いおにぎりー』

 何を言ってるか分からないが、ふとテレビを見ると青森県でバス旅してる番組が放送されていた。


 「もしかして、龍飛崎……」

 なんでそんなところに……。

 「いいアンジュ? 変なところ行っちゃダメよ?」

 『わかったー』

 「でも、風とか強いだろ?」

 「そうね。アンジュ近くに何かある?」

 『うーん……あ、ラーメン』

 「じゃあそこから離れないでね」

 『うん!』

 そこで電話が切れた。


 「誰かに着いていかないように言わなくて良かったのか?」

 「あ…。ま、まぁアンジュはあなた以外には懐いてないし……」

 そこからのエレナさんは早かった。

 自分の部屋へ戻ると私服へと着替え、小さなチェストから厚みのある封筒を取り出し、俺の胸に押し付けた。


 「これは?」

 「こういうことを予測して置いてあるお金よ」

 中を開くと沢山の渋沢さんがいた。こんにちは。


 「って、まてまて。なんでこんなに…」

 「うちの姉が働いてるのはこういうのが理由よ。ほら、早く行きましょ。新幹線の中で話すから」

 「あ、あぁ…」

 アンジュちゃんがどうしてあんな遠いところに行ってしまったのかは分からないが、早く行ってあげた方がいいだろう。


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