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メリーさん家の三姉妹  作者: 玉名 くじら


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05 呪いより深刻な問題


 「実は、わたし達はメリーの一族なんですが」

 「はい。それは聞いております」

 「そうですか。でしたら話が早いですね。私たちの呪いは百発百中です。誤射しても死なせてしまいますので、ターゲットの確認は慎重に行う必要があります」

 エレナさんはできそうだけど、アイリさんは無理そうだな。


 「ただ、稀に呪いの通じない相手がいます」

 「………」

 「そう。うちのパパのような人です」

 あ、エレナさんはパパ呼びなんですね。なんかギャップ萌えに通じるものがあるな。


 「まぁ、うちのパパも誤射だったそうですが……」

 怖っ……。

 そんな精度でやってたのか……。


 エレナさんが、軽く咳払いしてから、話を続けた。

 「そして、あなたにも通じなかった。この意味がお分かりですか?」

 「?」


 分からない。まさか、結婚なんて話じゃないだろうな?

 目の前には高校生だか中学生くらいの少女と、幼稚園か保育園に通っているであろう幼女だ。

 俺はロリコンではないし、そもそも年下は範囲外だ。

 アイリさんに至っては論外だ。


 「では、そこから先は愚姉に説明してもらいましょう。ほら」

 「はい…」

 なんか不憫になってきた。

 床で正座したまま語るアイリさん。


 「あのね、呪いだけじゃ食べていけないの」

 見た目と相まって悲壮感がすごい。なんというか世知辛いな。

 それからアイリさんは語った。


 自分の収入で二人を育てていると。仕事の合間にメリー一族の宿命も背負っていると。

 仕事で遅くなることもあり、まともに食事も作ってあげられない。

 エレナさんは料理が下手だと。

 ここまで聞いて嫌な予感がしてきた。


 「お願い。うちの家事をしてほしいの。あ、なんなら学費も出すし、ここに住めばいいわ」

 「いや、そんな…」

 「そうね。そうしてもらえると助かるわ」

 エレナさんが立ち上がり、隣の部屋の引き戸を開けると、ガシャガシャといろんなものが溢れてきた。


 「ね?」

 『ね?』じゃないよ。もしかして、ここにあったもの全部詰め込んだのか?

 幾ら何でもできなすぎだろう。


 「それに安心していいわ。愚姉は給料だけはいいから」

 「そ…そうね。営業成績はずっと上の方ね」

 どうやらアイリさんは生命保険の営業をしているようだ。

 人を呪い殺してるような存在が保険売るとかギャグかな?


 どう断ろうか? そう思っていたら、アンジュちゃんがトテトテと近づいてきて、俺の足にしがみ付いて見上げた。天使かな?


 そして、ぐぅと腹の虫が鳴り、困ったような顔をする。

 こんな幼い子をこんなところに住ませるわけにはいかないな。


 「はぁ。分かりましたよ。食材は好きに使っていいんですね?」

 「助かるわ」

 「ありがとう。私たち家事とかできなくて困ってたから」

 二人とも日常生活に難があるんだな。


 まぁ、呪い殺されないだけマシか。もしかしたらちゃんとできなかったらそうなる可能性もあるのだが。

 俺は台所へ入った瞬間にやっぱり帰った方が良かったと今更ながらに後悔した。

 そして冷蔵庫を開けると脱臭剤と酒しか入っていなかった。


 俺は自分のアパートへ向かい、急いで米を炊いて、おにぎりとおかずを作った。

 タッパーに詰め、再度メリーさんの家へ向かった。

 三人が食べている間に、まず台所の掃除をした。

 一体どんだけ放置したらこんな黒ずみがつくんだ……。


 その後、脱衣所、お風呂、トイレ、隣の部屋と掃除していった。

 台所が一番やばかった。他の部屋はものが溢れているだけだから、まだマシだった。


 アイリさんが、「それは捨てないで!」と顔にご飯粒つけながらしがみ付いてきたが、ゴムがユルユルなパンツとか穴の空いたストッキングなんか捨ててしまえ!


 ………よくやったな俺。全てが終わる頃には外は真っ暗になっていた。

 全身汗だくだ。そんな俺にしがみつこうとするアンジュちゃん。臭いから近寄っちゃダメだぞ?


 「予想以上だわ。まさかこんな綺麗になるなんて……」

 エレナさんきっちりしてそうな見た目してるのにな。


 そして、そんな部屋を見て満足そうにしながら、『プシュ』と缶ビールを開けるアイリさん。

 「おい」

 「あ、ごめん。つい……飲む?」

 「飲みたいところだが、俺まだ十八だぞ?」

 「別に気にしなくてもいいのに」

 おい、社会人。そんなんでいいのか?


 「じゃあ俺帰るから」

 「どこに?」

 「いや、アパート」

 「あぁ……」

 「かえっちゃ、や」

 アンジュちゃんが俺のズボンを引っ張る。

 アンジュちゃんの目線に合わせるように座る。


 「ごめんな。俺は帰らないと」

 「大丈夫よ。さっき片付けてもらったから、一部屋空いたし」

 「いや、女の人が住むところに男一人入り込んだらダメだろ」

 「あ、そこは気にしなくて大丈夫よ。何か危害を加えようとしたら触れたところが爆散するから」

 全然大丈夫じゃない。寧ろより距離をとりたくなったんだが。


 「とりあえず帰るよ」

 「あ、帰る前に連絡先……知ってたわ。じゃ、また連絡するわ」

 エレナさんがアンジュちゃんを抱っこして、こともなげに言う。

 そういえば静かだなと思っていたら、アイリさんはソファでだらしなく寝落ちしていた。

 本当にこの家大丈夫なんだろうか?

 

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