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メリーさん家の三姉妹  作者: 玉名 くじら


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04 どうやら俺はお人好しらしい


 まぁ、死ななかっただけヨシとするか。

 正直、もうこの人とあんまり関わりたくないんだよな。


 そこで、俺は重大な事を思い出した。

 洗面所へ行き、洗濯機の中を開けた。

 そこにはぐっしょり濡れたままの服が入っていた。干すのを忘れていた。


 「あの…すいません。干すの忘れてて」

 「あ、いーよいーよ。着替えないとだし。そのまま貰ってくわ。ビニール袋とかある?」

 「あ、はい」

 そうして、メリーさんは俺のジャージを着たまま、袋に濡れたスーツと下着を入れて、そのまま出ていった。

 正直、ジャージ一着失うのは痛いが仕方ない。

 この後、講義あるんだよな。……めちゃくちゃ眠い。


           *     

 

 何とか眠気と戦い帰ってきた。もうこの時間にもなると眠気も飛んでいるわけで。

 幸いにもバイトがない日で良かった。


 自宅のアパートの前へ着くと、道路の反対側から大声で声をかけられた。

 「とーおーるちゃーん!」

 呼ぶならせめてちゃん付けはやめてほしい。


 声のする方へ向くと、スーツ姿のメリーさんが腕をブンブン振っていた。

 気がつかないフリして部屋に入ってしまおうか。


 そのままアパートへ向かって歩き出すと、慌ててメリーさんが走ってきて俺の腕を掴んだ。

 「ちょ、ちょっ! ちょっ! 待って、待ってよ!」

 「えぇ、なんですかぁ」

 「いや、迷惑かけちゃったし」

 「そんなんいいですから」

 なぜか俺の腕を握る力が強くなる。


 「……説明してほしいんだけど」

 ほらね。やっぱり問題ごとしか持ってこないなこの人。


 逃げようとするが、ずるずると引っ張られる。この人力強いな。

 寝てないから力が入らないと思いたい。


 普通ならドキドキするシーンかもしれないが、初対面でゲロ吐きかけられて呪い殺されそうになった相手に何をドキドキする要素があろうか。


 しかし、俺は一体どこへ連れていかれるのだろうか?

 別に黒いミニバンもない。

 道路をそのまま水平移動する。そこはうちのアパートの前に立つマンションだ。


 「もしかして」

 「まさかお向かいさんだとは思わなかったわ」

 引っ越した方がいいだろうか? でもこんな時期に安くていい物件が見つかるわけがない。

 そのまま腕をがっちりと抱きしめられたままエレベーターに乗る。


 四階で止まった。

 そのまま有無を言わさずに歩かされる。

 「409号室……」

 「た、たまたまよ。たまたま」

 表札には『409 海道』と記載されていた。


 「妹に説明してほしいのよ」

 「できたんじゃないんですか?」

 「…………………………」

 俺の質問をスルーし、黙って扉を開けるメリーさん。


 ドアを開けると、ドタドタと走ってくる音が聞こえた。

 そのままポスッと俺の足元にしがみつく幼女。ふわふわの金髪でメリーさんと同じ青い目だ。

 この子がメリーさんに鬼のように連絡を入れていたのだろうか?


 そんな幼女は俺を見上げて不思議そうに首を傾げていた。

 「ただいまアンジュ」

 そう言って抱きかかえるメリーさん。


 「おかえりなさい」

 それは人を殺せそうなほど冷たい声だった。

 そんな声を発する少女はセーラー服姿だった。中学生か高校生だろうか?


 「た、ただいまー」

 俺の後ろに隠れるメリーさん。

 そしてそれを見て、特に何をするでもなく踵を返して奥へ引っ込んでいった。


 「悪いんだけど、代わりに説明しては…」

 「まぁ腹括りますよ」

 別に何あったわけじゃないからな。


 リビングへと入ると、セーラー服姿の少女はお茶を淹れていて、テーブルの上に置いていた。

 そして、俺にソファへ座るよう促した。


 そして幼女をアイリさんから奪い取ると、床を指し示した。

 アイリさんは黙ってそこに正座したのを見てから、自分もソファへと座った。


 「あの…」

 「話は聞いています。この度はうちの愚姉がとんだ失礼をいたしました。どうお詫びしても許されることではございません」

 深々と頭を下げる少女。幼女も一緒にぺこりと頭を下げた。

 多分、何も分かってないんだろうな。


 「申し遅れました。わたしは次女の海道・メリー・江麗奈。今後はエレナで結構です。そしてこっちが三女の安珠(アンジュ)

 「あ、はい。ご丁寧にどうも。俺は…」

 「存じておりますよ。宇慶亨さん」

 そこでやっと、うっすらと笑顔を見せてくれた。

 だが、ここで俺は思った。俺が説明する必要なくない? と。


 「あの…」

 「はい。なんですか?」

 「メリーさんに」

 「あぁ、それのことはアイリとでも呼んでください。メリーだと全員になってしまいますので」

 相手は俺より年下だと思うのだが、この威圧感と迫力。ついつい敬語になってしまうのは仕方がない。

 この迫力をアイリさんに微塵も感じなかったのは、きっと腹の中に置いてきたんだろうな。

 通りでエレナさんの迫力が二倍な訳だ。


 「あ、はい。じゃあ、その…アイリさんに説明するよう言われて連れてこられたんですが、俺が説明する必要ないのでは?」

 「ええ。説明は不要です。別の件でお呼びしました」

 もう、『別の件』と言われた時点で不穏な感じしかしない。

 だって、ずっと冷笑を浮かべたまんまなんだもん。

 美少女のあの笑顔って夢に出そうなくらい怖いな。


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