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メリーさん家の三姉妹  作者: 玉名 くじら


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58 めぐりんって言われてる?


 『ピンポーン』

 チャイムが鳴った。

 チャイムが鳴って入ってこない場合、それは宅配便の配達員か勧誘のサラリーマン。

 そして、環、操、ティナ、天嶺さん以外の人物だ。


 俺は今、朝ごはんの後の食器を洗っている最中だった。

 珍しくエレナが出るようだ。

 インターホンを確認すればいいのに、何も考えてなかったのだろう。

 そのままドアを開けたが、すぐに『バンッ!』と閉める音がした。


 「どうした? 変な宗教の勧誘でもあったのか?」

 「それより最悪よ」

 尚もドアはガチャガチャと回され、インターホンを連打しながらドアをバンバンと叩かれていた。


 「開けろー。お前はほーいされているうっ!」

 なんとも間の抜けた少女の声がした。

 聞いたことないのに、聞いたことのある声だった。

 俺もインターホンで画像を見てくれば良かったが、今更だ。


 「おい、開けてやれよ」

 「いいの?」

 何で俺の許可がいるんだ?

 「怒らない?」

 借金でもしたのか?


 「いいから。ご近所さん迷惑だし」

 「そうよね」

 諦めてドアノブから手を離すと、勢いよく開かれた。


 「もう、何で閉めるのよ!」

 「そうよ。電話も出ないし」

 そう言って、ドアの前にいるのは二人の少女。


 一人はボーイッシュな感じで、ショートカットに小麦色の肌で、Tシャツの上に薄緑のYシャツを着ており、下はハーフパンツを履いていた。


 もう一人は絶対に日焼けしたくないのか、白い長袖のカーディガンと薄黄色のワンピースを着た少女だ。つば広の帽子がドアに当たっていた。


 そして、エレナの後ろにいた俺を見て指をさした。

 「あっ! エレナの彼氏!」

 「女装してないの初めて見た」

 「待って。礼奈は見てるの?」

 「うん。コミケで女装してた」

 一体どういうことなんだ……。


 エレナは顔に手を当てて呻いていた。

 その後、エレナと礼奈に質問しまくりのボーイッシュな子を宥めながら、中へ入った。


 中へ入ると、部屋の中を目を輝かせて見回していた。

 「へー、これがエレナの家。片付いてるじゃん」

 「何が汚部屋よ。…………もしかして、他の部屋は酷いの?」

 「お姉ちゃんの部屋だけは、何回片付けても酷いから入らない方がいいわ」

 「お、おう……」「そ、そう……」

 顔が引きつっているが、別にアイリさんの部屋はそこまでじゃない。


 ただ、スーツとか普段着とかが脱ぎ散らかしてあるだけだ。

 俺が回収して洗濯したり、クリーニングに出したりしている。

 いつもポイント五倍の日に持って行っているので、アプリのポイントはかなりおいしい。

 あとはまぁ、寝相が悪くて、ベッドマットレスごと床に落ちているくらいだろうか。


 「この子は妹さん?」

 ボーイッシュな子が問うと、エレナが答えた。

 「アンジュよ」

 「おー。アンジュ!」

 「きゃあ、かわいい!」「やっぱり天使よね」

 なんだ。見る目があるじゃないか。そうだろうそうだろう。うちのアンジュはかわいい天使だろう。


 「あちきは秋山巡。よろしくねアンジュちゃん」

 「おー」

 「あーくしは冬室礼奈。コミケで会ったわよね」

 「ひちゃちぶり!」

 「かわいい」

 そこで、少し前に見た夢を思い出した。

 夢特有の独特な流れだったが、そこで見た少女と見た目も名前も一緒だった。


 「秋山……巡さん?」

 「そうですよ。どうかしましたか? 惚れちゃいましたか?」

 「ちょ、ばか」

 「いや、ちょっと気になることがあって」

 「へー、なんですか?」

 「めぐりんって言われてる?」

 「「「めぐ……りん……?」」」

 「あ、いや……」

 「なんですかーそれー。新たな誘い文句ですかー? すいませーん。エレナのコレを奪うつもりはなくてーモガモガ……」

 エレナが慌てて巡の口を塞いだ。もう殆ど言い切ったろ。


 そして、勢いよく振り払った。

 「まぁ、初対面で言われてびっくりしましたけど、その呼び方いいですね。お兄さんならそう言ってもいいですよー」

 マジか。

 ちょっと目眩がした。けど大丈夫。何とかよろけるだけで済んだ。


 「だ、大丈夫ですか?」

 「あ、ああ」

 アンジュがとてとてと近づいてきて足にしがみついた。


 「だいしょーぶ?」

 「ああ。大丈夫だぞ」

 アンジュの頭を撫でると、目を閉じてぐるぐる声を鳴らした。猫みたいだ。


 「なるほど。エレナの最大のライバルは妹ちゃんだったか」

 「ね。言った通りでしょ?」

 「ちょ、ちょっと」

 エレナも大変だな。俺が彼氏だなんて言われて。

 エレナほどの見た目ならもっといい男と付き合えるとは思うんだけどな。

 …………なぜか、それを想像して、嫌な気分になってしまった。


 「それで、今日はどうしたのよ。急に来るなんて」

 エレナがやれやれといった感じで言った。


 「ん? やー……」

 「そ、そうね……」

 歯切れ悪そうに言う。


 「え、何? 何よ?」

 「ほら、エレナって宿題やってなさそうな気がするから、一緒にどうかなーって」

 「ほら、大学生(の彼氏)がいるから、宿題捗るかなって……ねぇ」


 なるほど。宿題を一緒にやろうってことで、来たんだな。

 だが、うちのエレナは最近、やることはやっているからな。


 自由研究と読書感想文以外は終わっている。

 もっとも、読書感想文は読むまでは終わっている。で、書き始めて三行で止まっている。

 なんでも、途中で飽きたらしい。これは最終日までそのまんまの可能性があるから発破をかけないといけない。

 自由研究なんて何するか決まってすらいない。


 そして、これがエレナの悪いところ。

 我慢できずに、ニマニマと笑いを堪えきれずにいる。


 「なぁにその顔ー」

 「あ、もしかして、既に手取り足取り教えてもらったのね」

 まぁ、大体合ってる。


 「あ、赤くなったー」

 「言いなさいよー」

 どうして赤くなる必要があるんだ?

 そして、その目線の矛先は俺に向いた。


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