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メリーさん家の三姉妹  作者: 玉名 くじら


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 若い男女が軽く会釈して席に座る。

 「「よろしくお願いします」」

 一体何が始まるんだろうか?


 「ほな、見ていくとしますか」

 「ふんふん」と言いながら男性と女性を交互に見ていく。

 清麗さんはビールからウイスキーのロックに変え、ちびちび飲みながら見守っていた。

 別にこの人はいなくてもいいんじゃないだろうか。


 そして、結子さんは糸のような目をくっきりと開いた。

 大きく綺麗な目をしていた。

 いつも糸目だから、初めて見たわ。

 開眼したら「おおっ」って声がちらほらあった。


 「では、結果といきましょか」

 ゴクリと生唾を飲み込む二人。


 「まず、お兄さんの方やな。三ヶ月後の火曜日に話しかけてくる女性の誘惑をちゃんと断ることやな。そこで曖昧にしてずるずる行くと破滅するで。あと、少し意志薄弱なところあるなぁ。もう少し自信を持つとええよ。それができればこの先大丈夫や。次はお姉さんな。まぁ、ガチガチに縛るんはいいけど、縛りすぎると軋轢が生じるからほどほどになぁ。せやけど、子供の名前は旦那さんのがええな。子供の将来のためにもなあ」

 なんだこの的確な……占い……いや、恋愛相談……未来予知か?


 それが未来予知なのか、俺にはよく分からない。

 その後も結子さんは、途切れることなくカップルらしき人たちの相談を受けていた。

 お酒を一切飲まずに。


 「お兄さんはまず、ギャンブルをやめときなはれ。彼女さんに隠してる借金が二百万あるやろ」

 「まず、推し活はええと思うんよ。でも生活に影響するほどのめり込むのはアカンで。そのままいったら、逮捕されるかもしれへんえ」

 「お二人さんにアドバイスすることなんてあらへん。それに、サプライズは黙ってた方がええやろ」

 「まず、計画してる独立は考え直しい。そこの立地は良くないなぁ。目減りしてくだけで、二人の仲は悪なるばかりや。せやなぁ。そっち方面は清麗が詳しいですねぇ」

 「おや、お一人さんで。……ふむ。相手がいないとよく見えないんですが、……まぁ、参考まででええなら。…………ふむふむ。告白は早い方がええな。遅くなると、相手の心も離れていきそうや。そして、回りくどい言い方せんと真摯にストレートに言うとよろしいやろ」


 そんな感じで次々とよく分からないアドバイスをしている。

 しかも、怖いくらい的確だ。それが当たっているのかは分からないけれど……。


 「これ、どのくらい正確なんですか?」

 「今んとこ99.9%らしいぞ」

 おっちゃんが普通に言った。

 裁判有罪率かよ。なんか突き詰めて調べていったら、日本で生産されるフッ化水素の純度くらいのパーセンテージが出そうだな。


 「ふぅ……。終わったなぁ」

 「お疲れー」

 清麗さんはずっと飲んでたな。


 「そういえば、結子さん、お金とかもらってませんがいいんですか?」

 「ああ……」

 結子さんはいつもの糸目になってにっこりと微笑んだ。


 「取らへんよ。これは趣味みたいなもんですさかい。お金なんて取れへんて。それに副業禁止やしな」

 「そ、そうなんですか。いつもこんなことを?」

 「ここで飲んでるといつもだよな」

 「ええ。今日は少ない方ですねぇ」 

 簡単に言うけど、すごいことやってるんだが。


 「でも、こんだけいたら売上凄そう」

 まぁ、さっきいた人たちが飲んで食べたりしていったら、商店街全体ではいい商売になるのかな。


 「まぁ、それに休み明けには課長に昇進が決まってますからね。別にお金には困りません」

 「へぇ。おめでとうございます」

 「おおきに。まぁ、何もしてへんのえ。ただ上司が諭旨解雇されて、空いただけですのよ」

 その笑顔はとても意味深だった。


 「亨さんも、おイタはしない方がええですよ」

 一体何があったんですかね……。

 

 そして、じっと俺を見る結子さん。

 「不思議なもんやな」

 「何がです?」

 「亨さんのはこんなに見てるのに全く見えまへん」

 「はぁ」

 「アンジュは?」

 「アンジュはんもよく見えまへん」

 「ざんねんー」

 結子さんが、申し訳なさそうな顔をしていた。


 「酔いもすっかり冷めてしまいました」

 あんだけ飲んで、そんなに時間が経っていないのにな。

 もしかして、結子さんって、お酒飲んでる時の方が、何らかの能力が発揮されるんだろう。

 そして、お酒が切れたら店じまい、と。


 「ほな、帰るとしましょうか」

 「あれ、今日は早いね」

 「夕方からドラマの再放送見るんです」

 「結構おんなじ話ループでやってるのに?」

 「まぁそうなんですけどね」

 そうして結子さんは千鳥足の清麗さんに手を貸しながら帰って行った。


 帰った直後に、結子さんの相談狙いの人たちが来ていたが、今日は終わったと聞くと、みんなトボトボと帰って行った。


 「じゃあ、帰るか」

 「うん」

 アンジュはなぜか、俺に強くしがみついたのだった。


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