51 亨、巫女になる
「あら、アナタ結構似合うのね。ふーん……。ね、ねぇ、付き合わない?」
唐突に爆弾発言をしたのはティナだ。
場の空気によるものか、それとも彼女自身の性癖によるものなのか……。
鼻息荒く、目をぐるぐる回しながらそんなことを言う。
「い、一生わたしのために女装してほしいの」
そんな、『俺のために毎日味噌汁作ってくれ』のノリで言われてもな。
エレナがめちゃくちゃ恨みがましい目で見ている。
違うキャラやった方が良かったんじゃなかろうか。
同じ金髪だしな。
「あたいの目に狂いは無かったわね」
「天嶺さん、グッジョブです。はぁはぁ……」
「ふふん。でしょう? いやー、前から似合うんじゃないかと思ってね」
そう言うのは射命◯文のコスプレをした天嶺さんだ。
堂々と自身の黒い羽を出している。
周りの人たちも、「あれ、完成度高いな」「いくら掛かってるんだ?」「この暑いのによくやるな」「なぁ、動かなかったか?」「凄いギミックだ。重くないのかな?」「手作りにしては凝ってるなぁ」、などと言われていたが、本物だ。
「いいんですか? それ出しちゃって」
「こういう機会でもないと、人前で出せないし、何より開放感あるのよね。まぁ、黒いから日差しが熱いんだけどさ、そこはレイヤーの意地っていうか……」
「はあ……」
俺にはよく分からない感覚だ。
持っているカメラもやたら年代物だ。
「おい、あのカメラって」「マジで現存したんか」「まさかレプリカだろ?」「いや、あそこまでこだわらないだろ、普通」
どうやら持っている古いカメラは、知る人ぞ知るものらしい。
俺にはただの古いカメラにしか見えない。
そして、その横でスカートの端を握ってプルプル震えているのは、明日香だ。
天嶺さんの予備なんだろう。姫海棠○たての衣装を着ている。
意外と似合っている。
ちなみに羽はない。
「わ、われは普段は男装で、刀剣乱○とか文豪の方をやっているのだ。女装は初めてで……」
女子が女装って訳分かんねぇな。
「ほら、これ持って」
「うわ、なっつ」
素の反応をした明日香。持たされたのはガラケーだった。
しかし、だんだんと慣れてきたのか、少し不遜な感じがいい味を出している。
だが、それも束の間。
「おお! 明日香殿。まさかコスプレをしているとは。いやはや似合いますな」
「意外よね。明日香はそういうの興味ないと思ってたし」
桃原さんと柿沼さんが買い終わってきたのだろう。
「また新顔ね」
その言い方よ……。
「どうもどうも。あっしは桃原紗季。趣味は百合です」
そう言って敬礼する紗季。
「あたいは柿沼玲奈。機械いじりが趣味だから、そういう系のばっかり買ってるの。あと、それに近しいやつとかも」
手をワキワキさせながら言うのは玲奈。
この人が一番やばい人だったわ。
一人称以外はまともな話し方なのに、性癖はやばい…………やばい。
何がって、やれモビルスーツの造形がどうのこうの。
四肢だけ機械で武装するのが、うんたらかんたら。
足とキャタピラならどっちがいいかとか。
一切興味ないと、ただの呪文だ。
アンジュは離しておかないと、またぞろ静岡とかお台場に転移してしまう。
「あら、あなたあたいと一人称同じなのね。親近感を感じるわ」
「あたいもです」
急に握手して、和気藹々と話し出した。
ここにいる人って、こういうのが普通なんだろうか?
天嶺さんは紗季と薄い本を読みながら何かを語っていた。
「で、環と操のは……なんだ?」
「宇佐見○子」
「マエリベリー・○ーン」
「マニアックだな」
「ね」
「でも、わたしのは『メリー』とも呼ばれているから、名実ともに、家族とも言えるわけで」
「あっ、ずるい」
天嶺さんのチョイスが謎だが、まぁ、二人は傍観者っぽいところあるから、これなんかな?
「ウイッグ暑くない?」
「「あつい」」
だよな。
「おにいは暑くないの?」
「あつい」
「しかし、よく着たよねそれ」
「うん。でも凄く似合ってる」
そう言いながらスマホで連写している妹たち。
でもどこか言葉を選ぶように言うのは、さっきから俺に張り付いて写真を撮りまくっているティナのせいだろう。
まさか、ティナがローアングラーだとは思わなかったよ。
だが、残念だな。
俺はドロワーズを履いているからな。決して見えないだろう。
まぁ、わざとなのか敢えてなのか、通気性の悪い生地を使っているので、張り付いて可動域が狭くなってるんだ。
アームカバーも通気性悪いし、肩を出してるから、日差しが焼けるように痛い。
それにアンジュを抱いているから大変だ。
そんなアンジュは霧雨○理沙のコスプレをしている。
「アンジュちゃんはほんとそっくりだよね」
「うん。金髪だし、髪の毛ふわふわだし」
「良かったなアンジュ」
「うん! ますぱ!」
天嶺さんお手製のミニ八卦炉を持って、手を突き出している。かわいい。
「でも、もっと似合ってるのはエレナよね」
「うん。ツンデレっぽいところがそっくり」
「あ、ありがと……」
エレナは少し恥ずかしがって赤くなり、縮こまっている。
そんなエレナはアリス・マーガト○イドのコスプレだ。
「アンジュちゃんもエレナも着るだけでそっくりになるなんてずるい!」
環がよく分からない怒り方をする。
「まぁ、それを言ったらお兄ちゃんもよね」
「うん」
操とエレナが俺を見る。
「まさか、ここまで似合うなんて」
「意外だよね」
「普段からムダ毛の処理してるから腋も違和感ないし」
エレナは俺のことよく見てるな。
「まさかおにいが○麗霊夢似合うなんて」
「まさかお兄ちゃんが博○霊夢をやるなんて」
「まさか亨が博麗○夢になりきるなんてね」
「あなたが博麗霊○の衣装が似合うなんて……はぁはぁ。腋! 腋見せて!」
「なぁ、栗栖が壊れているんだが、保護者はどうした?」
保護者であろう、桃原さん、柿沼さん、柚木さんは天嶺さんと何か熱く語り合っていた。
あそこだけ、蜃気楼が見える。
「そういえば、お姉ちゃんは?」
「あそこにいるだろ?」
アイリさんは、○雲紫の格好だ。ドレスの方な。
日傘をさして、釣り用の小さな椅子に座ってぐったりしている。
「天嶺ー、あついー。手袋とっていいー?」
「ダメよ」
「うあー」
アイリさんはご愁傷様だな。
その後、同じコスプレをした人と何やら意気投合して話し合っているんだが、あれ本物っぽいんだよな。




