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メリーさん家の三姉妹  作者: 玉名 くじら


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50/98

50 逸材そうそういないでしょ


 今日はコミケらしい。


 昨晩、ティナ経由で美晴さんから応援要請がきたが、正直この暑い中参加するのは嫌だったので、お断りのメッセージを送った。

 何回か脅しのようなメッセージが届いたが、既読スルーした。

 ティナなら怒り狂って、うちまで来そうなもんだが、既に現地入りしているらしい。

 ガチ勢は怖いね。


 そして今日、うちのリビングにはなぜか天嶺さんがいた。

 「コミケ行くわよ」

 「「えぇ……」」

 俺とアイリさんが、嫌という意思表示のために、わざとため息を吐いた。


 「なんでそんな嫌そうな顔するのよ。せっかく衣装作ってきて……って、アンジュちゃんは?」

 そういえば、さっきまでいたはずなのに。


 「エレナ、アンジュは?」

 「え、知らないけど……」

 嫌な予感がする。

 そして、いつものようにメッセージが届いた。

 ビッグサイトが写っている。

 マジか。

 そして、そこにはティナと美晴さんがいた。

 謀ったなあいつら。

 アンジュがいたら、来ざるを得ないからな。

 よくそんな悪知恵思いついたよ。


 それと、同時に環と操がうちに来た。

 「待ってたわよ、妹ちゃんたち!」

 「天嶺さんの頼みなら断れませんよ」

 「一生ついていきますよ」

 「ありがとうー」

 天嶺さんと一体いつそんなに仲良くなったのだろうか。

 いくら仲よくても連帯保証人のサインだけはするなよ?


 って、天嶺さんの家の方がおっきいから、それはないか。

 例のおじいちゃんは市議会議員だと聞くしな。

 「じゃあ、行くわよー」

 「「おー」」

 環と操が一緒になってはしゃぐ。

 エレナは少し気圧されている。

 そして、目につくやたらでかいバッグ。

 嫌な予感しかしない。



 そして、コミケ会場。

 天嶺さんが人数分のチケットを買っていたらしい。

 「ほら、アンタの分」

 「あ、ありがとうございます」

 だが、チケットだけではなく、カバンまで渡された。どういうことだ?


 「じゃあ、三十分後、あそこのエリアで集合ね。アンタ、逃げるんじゃないわよ」

 「いや、その前にアンジュを……」

 「だいじょーぶ」

 いつの間にかいたアンジュ。


 「あ、あれ? ティナたちといたんじゃ」

 「流石に成人向けのコーナーへはつれて行けませんからね」

 一緒にいたのは、ティナの友人の柚木さんだった。


 「あ、なんか、すいません」

 「気にすることはない。われは既に買い終わっただけ故」

 「は、はぁ……」

 ここで気になるのが、俺の悪い癖。


 「柚木さんはどんなジャンルが好きなんですか?」

 「よくぞ聞いてくれた。われはBLが好きでな、男同士が汗まみれで駆け引きするのが──」

 聞かなきゃよかった。


 「ストップ」

 「なんだ」

 「子供の前なんで」

 「むう。そうだな」

 分かってくれて何よりだよ。

 

 「びーえるってなーに?」

 「アンジュは知らなくていいことだよー」

 「えー。アンジュもしりたい! へたれそううけー、のーないへんかんふぃるたー、やまなしいみなしおちなしー」

 「おい、お前」

 「ま、待て! われは何も教えてないし、ここまで連れてきただけだぞ! あと、流石に『お前』はやめてくれ、明日香と呼べ」

 唐突な名前呼びの強制……。


 「ああすいません。柚木さん」

 「ま、まぁいいか……」

 では、アンジュの言葉は別の誰かが教えたな。見つけ次第、とっちめてやる。


 「アンジュー、今の言葉は忘れていいんだぞー」

 「うゆ?」

 どうしてそこで首を傾げるんだ。

 よくない言葉ばっかり覚えて……。


 そういえば、他のみんなの声が聞こえないな。

 周りを見回すと、誰もいなかった。

 「他のお連れさん方は、先に行ってしまったぞ?」

 「マジか」

 「われが見ているから、ほら、それ。着替えるんだろう?」

 「あ、ああ」

 気乗りしないが、仕方ない。


 その時、天嶺さんが、急いで戻ってきた。

 まだ普通の格好だ。

 「忘れてた。ほらアンジュちゃんも」

 「もしかして、アンジュにも何かさせるんですか?」

 「当たり前でしょ? 見なさいよ! こんな素敵な逸材そうそういないでしょ」

 「ええ。全くもって同意見です」

 天嶺さんは人を見る目があるな。


 アンジュは何のことか分からずにキョロキョロと見回していた。

 「プールの時も思ったが、親バカであるな」

 そんなことを呟いてしまったがために、天嶺さんにロックオンされてしまった。


 「あら、アナタ新顔ね」

 「われは、柚木明日香と申す」

 「へー……。あたいは高尾天嶺。アナタ、ツインテールなのね。ふーん……」

 妙に仰々しい挨拶を交わす。

 天嶺さんは、明日香を上から下へ、前から後ろからと、どこぞのファッションデザイナーのように眺め回す。


 「用意しておいて良かったわ。アナタも一緒に来なさい」

 「へ?」

 キャラを忘れた素っ頓狂な声を出して引っ張られていった。


 アンジュもなぜか、やれやれといった感じであとをついていった。

 あれじゃ、どっちが保護者か分からないな。

 

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