↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
メリーさん家の三姉妹  作者: 玉名 くじら


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
49/103

49 式はいつなんだ?


 お盆休みまであと少しといったころ─────


 「アイリさんも仕事大変ですね」

 「まぁ、休み前だしねー」

 晩酌の用意をしながら、労うように言った。


 「まぁ、あと少しの辛抱だしね」

 「休み中も電話かかって来たりするんですか?」

 「まぁ、その時はその時ね。まぁ今のところあんまり無いし、原因作ったやつには物理的に退場してもらうわ」

 一気に寒くなった。

 まぁ、こんなんでもメリーさんだしな。


 「しかし、亨ちゃんもあたしの食の好み分かってきたわね」

 「ええ。これくらいしかできませんから」

 「いや、すっごく助かってるのよ?」

 「そうですか?」

 「そうよー。だって、二日酔いにならないし、翌日も胃もたれしないし」

 前は浴びるように飲んでいたからな。

 だが、まぁ大したことはしていないんだけどな。


 「それにしても、料理上手いわよね」

 「前は居酒屋でバイトしてましたからね」

 「いや、それだけでこんなには上手くならないでしょう?」

 「そんなにおだてても、お酒はこれで終わりです」

 「ちぇー」

 俺も学習したからな。気を良くしてお酒をせがむからな。


 料理を出しながら、気になることを聞いた。

 「そういえば、里帰りとかしないんですか?」

 「しないわねー」

 「そうなんですか?」

 「うん。小さい頃にこっち来たから、こっちが実家みたいなもんだし、実家はもう無いし」

 「あ、ごめんなさい」

 「いや、うちの両親が海外回ってるから、家売っちゃったの。基本アメリカにいるし」

 「あ、そうなんですね」

 「うん」

 前にも聞いたな。アメリカで何かやっているって。

 結局よく分からなかったけど。


 「それは、ご両親で?」

 「そうね。たまーにメッセージ届くくらい。まぁ、社会人になったらそんなもんじゃない?」

 「うーん。どうなんですかね」

 そもそもうちは、そんなやりとりしていないからな。

 仲が悪いんじゃなくて、スマホの使い方がよく分からないんだそうだ。

 親父なんて、いまだにガラケーだしな。


 「逆に、亨ちゃんは帰ろうとか思わないの? 一日くらいは大丈夫よ?」

 「いや、環と操がよく来るんで、そういう感じはないですね」

 それに、一日放置しただけで、ひどいことになりそうなのは目に見えているからな。


 「ちなみにどの辺なの?」

 「武蔵境ですね」

 「なんで一人暮らししてたのよ。その距離なら実家から通った方がよくない?」

 「まぁ、一人暮らしに憧れて。でも、家賃を見て行ったら、あそこだけ異様に安くて」

 「あぁ、あの部屋ね。幽霊いたもんね」

 「ん?」

 「いや、事故物件でしょ?」

 初耳なんだが……。


 窓の方を見る。

 向かいには俺が住んでいたアパートがある。

 一気に寒くなった。外はまだ二十八度もあるのに。


 「ちなみにどんな幽霊だったんですか?」

 「知らないわよ。あたし、幽霊見えないし。ただ、いるなーってのは分かるだけで」

 逆に怖い。


 「まぁ、こういう仕事してるとね、そういうのに遭遇する機会も多いっていうか……」

 どうしよう。用意した冷やし中華がいつも以上に冷たく感じる。


 エレナとアンジュは先にご飯を済ませて、お風呂に入っている。

 今、ここにいなくて本当に良かったと思う。


 「そういえば、ご両親に挨拶に行った方がいいわよね?」

 「え、別にいいですよ。環がもう伝えてますし」

 「でもほら、やっぱりお世話になってるし」

 本当は、俺が世話になっているんだけどな。


 そうして、翌日─────

 なぜか、俺の家に来たわけで。


 アイリさんは外出と言ってきたそうだ。

 こんな暑いのに、わざわざスーツ姿でいる。

 そして、意味がわからないのは、エレナは夏服の制服で、アンジュはお出かけ用の礼服を着ている。

 俺もなぜかスーツを用意されていた。

 自分の家に帰るのに、どうしてこんな正装をする必要が……。


 そして、なぜか、親父とお袋の前で、正座で座っているんだが、これは一体……。


 「お義父様、お義母様、いつも亨さんにはお世話になっております。わたくし、海道・メリー・愛理と申します」

 「エレナですわ。お義父様、お義母様」

 「あんじゅでしゅ」

 「まぁまぁご丁寧にどうも。わたしは、亨の母で十和子っていいます」

 「父の寿史(ひさし)です」

 なんで、こんな結婚前の挨拶みたいなことを……。


 「じゃあお寿司でも取ろうか」

 「え、いいんですか?」

 「もちろんだとも。亨がお世話になっていることだしな」

 「わーい。おしゅしだいしゅきー」

 「いっぱいとるからねー」

 一体どうしてこんなことに。しかもこれ夢じゃないんだよな。


 外堀を重機で埋められていく。

 なんなら天守閣までクレーンで崩されてるレベルだ。


 だが、和気藹々としているだけで、全く話が進まない。

 そして、ある程度食べ終わり、お茶を飲んでいるころ、それは起こった。


 親父とお袋が少し下がって、土下座した。

 「こんな息子ですが、末長くよろしくお願いします」

 「ご迷惑をおかけするかもしれませんが、どうかもらってやってください」

 「お義父様、お義母様、頭をあげてください。それはこちらが言うことですよ」

 「だが、こうして来てくれたんです。頭を下げるのは当然でしょう」

 アイリさんもエレナもアンジュも頭を下げている。

 俺一人、この状況についていけない。


 そして、親父は俺に、「少ないけど」と、お札の入った封筒を渡した。

 「親父……」

 「俺に出来ることなんてこれくらいしかないからな」

 「いや……」

 「いいから、受け取っておけ。何かと入り用だろ?」

 いや、だから多すぎるんだって。

 そのまま、頑なに押し付けてきたので、受け取った。

 まぁ、何かあった時用に取っておこう。


 そして、決定的な言葉を聞けないまま、お家訪問は終了した。

 見えなくなるまで、親父とお袋は手を振っていた。


 「ふぅ。ご両親への挨拶ってこれでいいわよね?」

 「俺思うんですけど、絶対に誤解されてると思いますよ?」

 「え、どんな風に?」

 「あれ、結婚の挨拶ですよね? 言葉はありませんでしたけど」

 「またまたー」

 「そんなわけないでしょ」

 「しょ!」

 三人ともただの挨拶だと思っているらしい。


 その後、珍しくお袋から電話があった。

 『式はいつなんだ?』と。

 その後、誤解を解くのにかなりの労力を要したのは言うまでもない。

 そして、なぜか俺がヒモをやっているって話になり、その誤解を解くのにもかなりの時間を要するのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。