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メリーさん家の三姉妹  作者: 玉名 くじら


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47/100

47 一生答えは出ないぞ


 「なぁ」

 「なに?」「どしたの?」

 「最近よく来るなって思って」

 そう。夏休み期間中、環と操はよくうちに来るようになった。


 別に俺の家じゃなくて、アイリさんの家なのだ。

 まぁ、家のことは俺が全部やっているから、勘違いしてもおかしくはないんだろうが。


 そして、七月も終わり、八月に入ってすぐの今日、ここで宿題をやっている。

 「それ家でやればいいじゃん」

 「いや、わかんないところあったら、おにいに聞けばいいし」

 「そうそう。なんなら代わりにやってもらっても」

 「あ、それいいわね」

 エレナもしれっと混ざる。


 「いやいや、字が違うだろ?」

 「真似てよ」「真似ればいいんじゃない?」

 うちの妹は……。まったく。


 エレナはというと……。

 「わたしは亨の字に似せてるから問題ないわよね」

 「問題ありだろ……って嘘だろおい」

 本当に俺っぽい字を書いている。すごいな。努力の方向性間違ってるわ。

 ただ、よく見ると、『口』の書き方とかは惜しい。


 「お兄ちゃんって、男の人の割には綺麗な字書くよね」

 「ね。誰に似たんだろうね」

 うちの女性陣は字が汚いからな。

 ちなみに親父は書道が趣味だが、ボールペンとかだとミミズがのたうちまくったような字になる。


 「で、なんでこんな時期に宿題やってるんだ?」

 「本当は初日に片付けようって思ったんだけど、遊んじゃって」

 「右に同じ」

 「前に同じ」


 まぁ、やらずに最終日迎えるよりはいいか。

 仕方ない。手伝ってやるか。

 高校生なら、夏休み明けに実力テストって流れになるけど、中学生ならそこまで影響ないだろう。

 それにアンジュもこっちに興味津々なので、今日は大丈夫そうだ。


 「で、何を手伝えばいいんだ?」

 「読書感想文」

 「右に同じ」

 「前に同じ」

 「それは自分でやれ」

 「「「えー」」」

 ダメな方向にシンクロするのはやめろ。


 「えーじゃねーよ。書いてあればいいんだよあれ」

 「本読むのがめんどい」

 「あ、わかるー」

 「漫画じゃだめ?」

 「漫画でもいいだろ。ラノベで出てるやつ漫画で読んで書いたらいいんじゃないか? しらんけど」

 「急に突き放すのやめてよ」

 「まぁ、大丈夫だろ。俺ん時もいたし」

 その後呼び出しくらったことは黙っておこう。


 その後、問題を解いていく方は順調に進んでいった。

 「あ、ここちがう」

 「え? あ、ほんとだ」

 何故か環の宿題をアンジュが眺めていた。

 アンジュは理系が強いんだなー。って、この歳で分かるのも怖いんだけどな。


 「はー。結構終わったねー」

 「ホントねー」

 「手首いたいねー」

 「折れてるかもー」

 「まさかー」

 操とエレナは殆ど終わったようだ。

 まぁ、殆ど俺が解いて答え写してるだけだからな。

 一番大変なのは漢字をただ書いていくやつだろう。あれは苦行だよ。


 で、一番びっくりしたのは、途中からやってきたティナだ。

 アンジュのことで聞きたいことがあると言ってやってきたが、宿題があるから後な? と言ったら、環の方を見てくれることになった。

 そして、無事に終わったのだった。

 ただ書いてくだけでも時間かかるのに、よく終わったよ。


 そして、ティナの興味はというと、壁に貼られたアンジュの絵だ。

 特に興味を示したのは『キュアマーダーがボコボコにする絵』と『謎の数式』だ。

 ちなみにあの後もいくつか増えている。


 『キュアスレイヤーが飛び蹴り』、『キュアエイジング五人衆がぼっこぼこにした敵の前でにっこりしている様子』、『俺の似顔絵』、『天狗のおじさん』だ。

 俺の似顔絵描いてくれた時は嬉しかったなぁ。


 「これ、アンジュちゃんが書いたの?」

 「そー」

 ティナの横でニッコリしながら答える。


 「こ、これはなぁに?」

 「きゅあきゅあー」

 「そ、そう……。なにをしているところなの?」

 「ぼこぼこにしてるー」

 「そ、そっかぁ……」

 な? 教育に悪いだろ?


 「で、これは?」

 それはアンジュが描いた謎の数式だ。

 「これは……一般相対論? 嘘…………。え、そんな……ここは測地線方程式……」

 最近、違う数式も描いてたんだよな。

 てっきり『(v⋅∇)v』って顔文字の部分があったから、可愛くて描いてるんだと思ったよ。

 俺の参考書見てたしな。


 ティナはそれを見て、その場に固まってしまった。

 アンジュは暇なのか、クレヨンで絵を描いていた。


 「ダメだわ。わたしには分からないわ」

 「栗栖でも分からないことあるんだな」

 「当たり前でしょう?」

 その時、アンジュがティナの服をクイクイと引っ張った。


 「あげりゅ」

 「あら、ありがとう」

 それは二枚あり、一枚はティナの似顔絵だった。


 「わぁ。大切にするわね」

 「ん」

 「で、こっちは……!?」

 よく分からない数式が描いてあった。


 「ホイーラー=ドウィット方程式…………」

 「なにそれ?」

 「あんたも一応理工学部よね?」

 「創造の方な」

 アンジュを迎えに行ってるから、ちょっと追いつけてないってのもあるんだけどな。


 「はぁ……まぁいいわ。これももらっても……あ、いや、これとこれ借りてもいい?」

 「アンジュがいいって言うなら」

 「アンジュちゃん。これ借りてもいーい?」

 「んー……」

 珍しく即答しないアンジュ。


 「そりぇ、とちゅーでかきまちがったからだめ」

 「だって」

 「いや、一つの可能性として……」

 「でも、これはあってるから、いー」

 最後に渡したやつか。


 「あ、ありがとう」

 そう言って、足早に帰って行ったティナ。

 そういえば、静かだなと思ってテーブルの方に振り返ると、三人とも何やら相談していた。


 「どうしたんだ?」

 「これ、自由研究に使ったらいいかなって」

 「いいけど、一生答え出ないぞ」

 「「「え……」」」

 残りの自由研究と読書感想文は自分でやるんだぞ?

 そこまで面倒は見きれないからな。

 結局、その二つは最終日間近まで手をつけずに俺に泣きついてくるのだった。


 その日の夜。

 俺はちょっと気になってアンジュに聞いた。

 「あの数式ってなんなんだ?」

 「すーしき?」

 「ほら、これ」

 首を傾げるので、指で指し示した。


 「ちがう。あれざひょー。あっちはちず」

 「どういうこと?」

 「あれできないとおでかけできない」

 ふんすと満足顔で答えたアンジュ。


 「アンジュは将来大物になるな」

 「せーたかくなる?」

 「んー。多分な」

 これは将来どうなるのか、非常に楽しみだと思ったのだった。

 そして、その成長を近くで見ていたいと願ってしまった。


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