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メリーさん家の三姉妹  作者: 玉名 くじら


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45/100

45 おにーちゃはアンジュのもの


           *      


 奥へ行くと、アンジュらしき姿を確認した。

 『らしき』なのは、お面を付けていたからだ。


 よく売っていたなと思うような天狗のお面だ。


 そしてなぜか、「デュア」と言いながら、仮面レーサーのポーズを取っている。

 正直どの作品かは分からないが、何度もアルティママンの掛け声で、ポーズを取っている。

 どうツッコんだものか……。


 「あ、亨さん」

 声のする方へ振り返ると、そこには浴衣姿の萌歌さんと何人かの子供たちがいた。

 白地にピンクの花柄のガーリーな浴衣だ。


 俺の前へ来ると、ニコッと笑った。

 「亨さんの浴衣も素敵ですね」

 「あ、ありがとうございます」

 その時、萌歌さんの近くにいた子供たちが一斉に、俺を見上げてそれぞれ好きなことを言っていた。


 「なんだおまえー」「しぇんしぇいのかれしー?」「びみょう!」「ごじゅってん」

 子供たちから辛辣な評価をいただいた。

 まぁ、子供の言うこと。べ、べべべ……別に気にしてねーし?


 そんな中で一人、黙ったまま俺を睨む子が一人いた。

 「……」


 この子はアンジュから送られてきた画像に写っていて、やたらと距離が近かった子だな。

 なるほど。この子が大地くんか。


 アンジュが「デュア! デュア!」と言いながら、子供たちの方へ向かってきた。


 一体今日のアンジュはどうしてしまったんだろうな。

 やはり、テレビ禁止はやり過ぎたな。

 少し緩和しよう。


 「お、おれ、まけねーから」

 そう言って大地くんは、近づいてきたアンジュにべったりとくっついた。


 ほほう。宣戦布告か。面白い。


 「ひっ……」

 どうやら怖い顔になっていたようだ。

 少し怯えさせてしまったようだ。


 「もう、ダメですよー。わたしがいるじゃないですかっ」

 萌歌さんがプンプンしながら言う。


 「ああ、すいません」

 子供相手に大人げなかったな。萌歌さんの冗談で我に返ったよ。


 「あ、萌歌!」

 呼び捨てで叫んだのは、エレナだ。

 どうやら会議は終わったらしい。

 そしてなぜか俺の腕を掴むエレナ。

 それを見て黒い笑顔になる萌歌さん。なぜだ?


 そして、子供たちが騒ぎ出した。

 「しゅらばー」「ないすぼーと」「ちじょーのもつれー」「ふたまたー」

 そしてなぜかホッとした表情をする大地くん。


 「おにい……」「お兄ちゃん……」

 環と操の呆れた声が聞こえた。


 そして天狗のお面をそっと外したアンジュはこの中で一番の爆弾発言をした。


 「おにーちゃはアンジュのもの」

 「!?」


 大地くんが泣きそうな顔になっている。

 萌歌さんとエレナもなぜか悔しそうな顔をしている。

 せっかく楽しい夏祭りになんて顔しているんだ。


 そして、恐らくだろうが子供たちの保護者だろう。ニヤニヤしながら見ていた。

 分かっているんなら、助けてくれませんかね……。


 その後子供たちと一緒に金魚すくいをすることになったのだが……。


 「あれ、ヤマなんとかさんじゃないですか」

 「今日はヤマナです」

 「あっそ」

 「ちょ、冷たくないですかね」

 「どうせ本名じゃないでしょうし」

 「あはは。じゃあ一回100円だよっ!」

 そう言って無理矢理ポイを渡してきた。やるつもりなかったんだけどな。


 しかし、頑なに頭を隠して……隠して? ねじり鉢巻を巻いてるだけだったわ。

 別に頭頂部が薄い訳じゃなかった。ツノもないしな。

 ここ最近、そういう人多いから疑ってたわ。


 子供たちはよくて二匹くらいだった。

 そんな中で競うように何匹も掬っているのが五人。

 萌歌さん、エレナ、天嶺さん、環、操の五人だ。

 そんなに取ってどうするんだよ。


 「アンジュはいいのか?」

 「だって、おせわできないもん」

 「あー……」


 アンジュは保育園だし、転移しちゃうしな。

 なんならアイリさんとエレナにお世話できる姿が想像出来ない。


 「あ、あの……すいません。その辺で……、あの……聞いてます?」

 ヤマなんとかさんが青い顔して止めていたが、誰も聞く耳を持たずに金魚を黙々と掬っていた。


 そのままミスったフリして戻そうとしていたが、天嶺さんがじーっと見ているので出来なかったらしい。


 素直に、何袋かに分けて入れていた。

 プールの中にはもう、殆ど残っていなかった。

 商売上がったりだな。


 「そんなに取ってどうするんです?」

 この中で一番金魚すくいをやりそうになかった天嶺さんに聞いた。


 「え? うちの池に放つけど?」

 「あ、じゃあわたしのも」「わたしのもどうぞ」「あたしのも」「じゃあ、わたしのもどうぞ」

 他の四人がパンパンの袋を渡した。


 天嶺さんがこれ以上ないくらい引きつった顔をしていた。


 そして、金魚たちがかわいそうだからと、先に家に帰ってしまった。

 生き物優先で行動するのは偉いなって思った。

 でも、あれどうやって持ち帰るんだろうな。


 入り口の方を見ると、高そうな黒塗りの車の前に初老のスーツを着た人がいた。

 その後部座席を開けると、そのまま乗り込んで行った。

 まぁ、飛んだら、金魚が風圧に耐えられないもんな。


 そういえば、アイリさんはどこに行ったんだろうかと思ったら、保護者の人たちと仲良く世間話していた。

 なんだよあの人、コミュ力オバケかよ。


 「そういえば、アンジュはそのお面どうしたんだ?」

 「もらったー」

 「え、誰に?」

 「わかんないけど、だんでーなおじしゃん」

 「そんな怪しい人にホイホイもらっちゃダメだぞ?」

 「うん?」

 なんでそこで首を傾げるんだよ。


 そうしてある程度楽しんだので帰ろうとしたところで、大地くんがアンジュの手を掴んで離さない。


 「ぼんおどり」

 「わすれてた」

 どうやら盆踊りがあるらしい。

 しかし、その単語を聞かなかったら俺もどうしていたか分からないや。


 その後、みんなで下手くそな踊りをして帰ったのだった。


 「エレナは天嶺さんが貰ってくれなかったら、あの金魚どうしてたんだ?」

 「飼えばいいんじゃないの?」

 「誰が世話するんだよ」

 「そんなの決まってるじゃない。亨よ」

 「自分でやらないのかよ」

 「わたしにできると思う?」


 そういうのは堂々と言うべきではないと思う。

 まぁ、うちは親父がアクアリウムやってるからなんとかなるだろうけど……。

 少しはアンジュを見習ってほしい。


 そんなアンジュは疲れたのか、俺の背中の上でぐっすり眠っている。

 しかし、ダンディーなおじさんか。

 また、変な情報が増えてしまった。


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