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メリーさん家の三姉妹  作者: 玉名 くじら


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40 れずだ


 今日は近所で夏祭りがあるらしい。

 朝からアンジュがソワソワしていた。


 「今日は先に行くのはダメだぞー。みんなと行こうな」

 「分かったー」

 そう言いつつも、先に転移してしまうのがアンジュなのだが、今日はまだ大丈夫そうだ。

 しかし、やたらとソワソワしている。どうしたんだろうか。


 「どうしたアンジュ?」

 「なちゅまちゅりなら、ゆかた!」

 「持ってないの?」

 「どっかいった」


 俺が片付けた時にあったような記憶はあったのだが、どこにしまったのか全然覚えてない。

 今から引っ張り出して探すのは骨が折れる。

 しかし、アンジュには浴衣を着させてあげたい。


 そう考えていたところで、チャイムが鳴った。

 環か操だろう。

 だが、いつもなら鳴らしながら入ってくる筈が、ドアの開く音がしない。

 となると、違う人だな。

 ティナだとめんどくさい。


 インターホンのカメラで確認すると、手で塞がれているのか真っ暗になっていて分からない。

 「仕方ない」

 アンジュが転移しないよう抱きかかえながら、ドアを開けた。


 そこには天嶺さんが、壁に寄りかかっていた。

 羽を広げたまま、『ゼェゼェ』と肩で息をしていた。

 「あ、天嶺さん?」

 「アイリいる?」

 開口一番それなのか。


 しかし、羽を出したまんまで、こんな疲れてるってことは、飛んできたなこの人。

 ちょっと見てみたかったんだよな。

 しかし、羽を出すからなのか、背中のぱっくり開いたトップスを着ている。


 別に高尾から吉祥寺なんて一本なんだから、電車で来れば、そんなに汗かかなくてすんだんじゃないですかね?

 俺を押し除けるように中へ入ろうとしたところで、アンジュが指をさした。


 「れずだ」

 ……。


 俺の聞き間違いかな?

 アンジュがそんなこと言う訳ないもんな。


 だが、アンジュは目をキラキラとさせて、尚も「れずだ」と、どこぞのボイスロイドみたいな言い方をした。

 そんなアンジュの発言を聞いて、口角を上げた天嶺さん。


 「正解」

 「正解じゃねーよ。アンジュになんてこと教えてんだあんた!」

 これは、今後出禁を考えないといけないな。


 「うるさいわね。別にいいでしょ」

 「よくないに決まってるだろ」

 「別にアンタやアンジュちゃん目当てじゃないんだからいいでしょ」

 「いいわけあるか! 教育に悪いから帰ってくれ」

 「嫌よ。ここまで飛んできたのよ。涼しい部屋に入れて冷たい麦茶くらい出すのが筋でしょう」

 すげぇ。ここまで言い切るって中々だぞ?

 そう思ったが、周りの人物も似たようなもんだと思ったら、少し落ち着いた。


 「さっきまでは、そのつもりだったんだがな」

 「じゃあいいじゃない。アイリいるんでしょ」

 アンジュを抱きかかえたまんまだと、防ぎづらい。


 アンジュは「うおー、うおー」と言いながら楽しんでいる。

 意味が分からなければいいか?

 いや、人のいるところで言ったらまずい。

 「おにい何してんの?」「お兄ちゃん何してるの?」

 俺がタワーディフェンスゲームもとい賊の侵入を防いでいたら環と操が、一番めんどくさい時にやって来た。

 タイミング悪いな。


 「おにいがまた別の女の人と争ってる」

 「お兄ちゃん、浮気は良くないよ?」

 浮気以前に彼女なんていないんだが、不名誉なことを言われている。


 俺の顔を押しながら、天嶺さんは反論した。

 「失礼ね。あたいはアイリ一筋よ」

 「「!!」」

 ほらぁ、変なこと言うから二人ともワクワクし始めてしまったじゃないか。


 「羽が生えてる!」「おっきい!」

 そっちかよ。

 まぁ、うちの妹だしな。ある意味で期待通りだ。


 中へ入ると、天嶺さんの横に環と操が座った。

 未だに羽を広げているため、「触るな」と言われているのに、ずっとさわさわと触っている。

 こいつら怖いもの無しだな。


 「意外とモフモフー」「でも滑らかね」

 「ま、まぁ悪くないわ……ね……」

 そんなに顔を朱らめるなら羽をしまったらいいんだよ。


 「どうぞ」

 「アンタ意外と気が利くわね」

 それは水まんじゅうを一緒に出したからだろうか?

 三人とも一息で食べて、麦茶を同じ角度で飲み干した。

 ダンッとグラスを置いて、再度「アイリは?」と聞いた天嶺さん。


 何でこの人課長なんだろうな。まぁ、ある意味課長っぽくはあるけど……。

 アンジュはハムハムと水まんじゅうを食べている。暫く転移はなさそうだ。


 その時、寝室の扉が開かれると、Tシャツとショートパンツ姿で、寝癖がヤマアラシのアイリさんが起きてきた。

 何度もあくびを繰り返し、少しポッコリしたお腹を掻きながら出てきた。

 まだ寝ぼけてるのか、「んー」しか言わないし、目も開いてない。


 「アイリ!」

 天嶺さんが勢いよく立ち上がると、椅子が揺れた。かろうじて倒れなかったが、この人周りが見えないタイプなんだな。


 「んー、あまねー?」

 「そうよ。天嶺よ」

 アイリさんはまだ夢の中のようで、一緒にソファにポスット座った。


 「おにいの周りって変な人ばっかりだね」

 人……。天狗を人扱いで…………いいのか。まぁ、人型だしな。


 「まぁな」

 「いやぁ、エレナちゃんが見たら怒り狂いそうだなって思ってさ」

 「なんで?」

 「「はぁ」……」

 なんでため息で返すんだよ。答えをくれよ。


 「そういえば、エレナちゃんは?」

 「なんか中学の友達と遊んでくるって」

 「へぇ。そういえば、わたしエレナの友達知らないや」

 「学校違うもんな」

 「でも、結構一緒にいるわよね?」

 「そうだねー」

 そういえば、エレナの友達ってうちに来たことないんだよな。

 本当にいるのか疑ってるくらいだし。


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