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メリーさん家の三姉妹  作者: 玉名 くじら


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33/100

33 ゆーはんは、はんばーぐがいい


 「もう、アンジュダメだぞー、また勝手に抜け出してー」

 「ごめんちゃい」


 今日も転移したアンジュを迎えにきた。

 近場で良かったが、まさかアニメショップとはな。


 アンジュが今回気になったのは、キュアキュアとかいう魔砲少女ものの衣装だった。

 魔法ではなく魔砲なのは、拳に溜めた魔力の玉を発射する、どこかの格闘冒険漫画みたいな戦い方をするからだ。公式でもそう謳っている。


 よくアンジュが「はーーーーーーー!」とポーズを取っていて、俺がよくやられた役をしている。


 そんなアンジュも、やはりコスプレしたくなったのだろう。

 今回は店舗名を教えてくれたから良かった。

 フリフリの衣装が入った袋を抱えながら歩くアンジュ。


 だが、途中で立ち止まったので、何か気になるものでもあったのかと、アンジュの見上げる方を見る。

 そこは主に同人誌を扱うショップだ。

 大人のお友達向けの本も多く、アンジュには十四年くらい早い。


 「ほら、いくぞー」

 やんわりと言うが、中に入ろうとするので、慌てて止めようとすると、ちょうどお店のドアが開いて中に入ってしまった。


 出てくるお客さんの足をすり抜けるようにして、スタスタと向かってしまう。

 早く確保しなければ……。


 お客さんが多く、俺はすり抜けるのがやっと。

 アンジュはスイスイと泳ぐように間を抜けていった。


 「ダメだぞ、アンジュ」

 「ざんねんー」


 そして、やっと捕まえたのは、大人向けの区画の入口だった。

 間一髪だった。


 そのまま抱きかかえて、お店を出ようと、踵を返したら、後ろから声をかけられた。


 「あら、あなた」

 振り返ると、そこにはティナがいた。

 絶対にこういうところにはいないであろう人物だ。


 「なんで、ここに?」

 「薄い本買いに来てるだけよ」

 「うしゅいほん? えほん?」

 違うぞアンジュ。似て非なるものだ。


 「そういうのに興味ないと思ってた」

 「あるわよ。わたしをなんだと思ってんの?」


 いけすかない、鼻持ちならない天才かな?

 こんなこと言ったら確実に殺されるだろうな。

 もちろん言わないし、ここ最近のティナを見ると、少し印象も変わってきてるしな。


 「まぁ、場違いだから出るよ」

 アンジュは尚も、中へ入ろうともがく。


 「流石にアンジュちゃんを中に入れるわけにはいかないわね。少し待ってて」

 そう言ってティナは一般向けコーナーで何冊か取って、レジへ向かった。


 一瞬見えたポイント残高がもう少しで六桁に届きそうなんだが、何をどれだけ買えばそんなに貯まるのか。


 そして、使わずに貯める派なんだというのが分かったが、定期的にポイントカードが変わるから、早く使った方がいいぞ?

 俺それで32000ポイント失効したし。


 そんなことを思い出していたら、会計が終わったらしい。

 「カフェでも行きましょ」

 「お、おう」


 そこは、やはりオシャレなカフェだった。

 アンジュはキラキラした目でメニューを見ていた。


 「何でも頼んでいいわよ」

 「なんでも?」

 「ええ。でも、食べ切れる分だけよ?」

 「わかったー」

 「あなたも。奢るわよ」

 「あ、ああ。ありがと」

 正直何を考えてるか分からない。


 だがまぁ、お言葉に甘えはするが、そこまで図々しくもないので、カフェオレだけ頼むことにした。


 「えっとねー」

 アンジュが頼んだのは、桃のボンブ、シャインマスカットのロールケーキ、夏いちごのミルフィーユ、オレンジジュースだ。

 夕飯食べれなくなるな。


 ちなみにティナはメガ盛りのパフェを頼んでいた。

 またしても、ティナのイメージが壊れた。


 店員さんが、奥へ引っ込んだと同時にティナは薄い本を取り出し、アンジュに渡した。


 「おー! きちゅねしゃん! たぬきしゃん!」

 それは、キツネとタヌキのキャラクターの本だった。

 他には犬だったり、猫だったりとちゃんとアンジュ向けの本だった。

 ただ、このちいさくてかわいいのは、内容的にアンジュには早いんじゃないだろうか?


 「喜んでくれて何よりよ」

 「ふふっ」と目を細めて微笑むティナ。

 俺の中のイメージ像が壊れていく。


 流石にここで大人向けの薄い本を読むほど、常識がないわけではないようで、分厚い参考書を読んでいた。

 そして、アンジュはそっちに興味を惹かれたらしい。


 「あら、気になるの?」

 「うん!」

 「いや、こんなの分かんないって」


 知恵熱出したら、どうしよう。

 俺は直前までそう思っていた。


 「にーぱいるーとけーぶんのえむー」

 「「は?」」

 これには流石のティナも驚いたようだ。

 すかさず、「こっちは?」なんて指し示した。


 「よん!」

 長いfみたいの書いてあるのに、どうして4なのかは分からない。

 そもそも専攻が違うからな。

 ここまでのは分からない。


 「アンジュちゃん天才よ」

 「えっへん!」

 「ねぇ、この子……」

 「いや、やらんぞ」

 「…………ま、まだ何も言ってないじゃない」


 そんなことを話していたら、頼んだものが来たようだ。

 アンジュは嬉しそうにケーキを頬張っていた。


 「アンジュちゃん美味しい?」

 「はなまるー」

 「あら、良かったわ」

 そして、俺に向き直ったアンジュは、Vサインをして笑った。


 「ゆーはんは、はんばーぐがいいー」

 どうやら、アンジュ的にはまだまだ食べ物の方がいいようだ。

 

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