31 プールってこういうのだっけ?
早速みんなでプール側の施設へ行き、中へ入る。
男は俺だけだし、着替えも楽なので、ものの数分で更衣室を出た。
待つこと十分。着替えるだけでそんなに時間かかるのだろうか?
そして、みんなで出て来た。
出て来たのだが、ティナたち四人は出て来て速攻でプールの方へと向かっていった。
まぁ、そんなに接点ないしな。
ただ、アンジュだけはとてとてと後ろをついていった。
その後を保育士である萌歌さんが面倒を見ながらついていった。
「足元気をつけてくださいねー」
「分かったー」
「ふむ。波の出るプールかぁ……」
「うおー、ぐーるぐるー」
「そうね。ぐるぐるね」
あの三人なんだかんだ言って、意思疎通できてるなぁ。
よく見たら、環と操は大学生三人と何やら話しながらスライダーの方へ歩いていった。
「あのスライダーの接合部が気になるわ」
「波の周期と減衰率が気になるわ」
「そんなことより、あの上からなら可愛い子見放題ぞよ?」
「大学生ってすごーい」
「これが大学生……」
環と操よ……。それは参考にならないタイプの大学生だぞ?
って、柚木さんや、ドラマの影響か知りませんが、プールサイドで数式を書くのはやめてください。結局、溢れた水で消されてるし。
そして残ったのはこの二人。アイリさんとエレナだ。
アイリさんはなかなかすごいな。今回いた中で唯一出ている人だ。
どこが? なんて聞くのは野暮だろう。もう少しビールを控えた方がいいかもしれないな。
そして、エレナはない胸を張り出していた。
「その体勢辛くないか?」
「つらい」
「ほら、バカやってないで、泳ぐぞ?」
「うん。あ、お姉ちゃんは?」
「あー、気にしないで? 波の出るプールを逆走すれば痩せそうだから」
「そ、そう……がんばって……」
流石のエレナもドン引きだ。
そんなアイリさんは浮き輪をつけた子供達に当たりまくって、速攻で流されていた。
「ちなみに、エレナは泳げるのか?」
「それよりも前にわたしの水着について何か言うことはないのかしら?」
「うん?」
普通の水着だよな。ストライプの。
「ストライプだな」
「亨って男よね?」
「そうだけど」
「信じらんない」
目を大きく開いて、憤慨している。だって、水着って二パターンしかないだろ?
それの何を評価するというのか。どうせ泳ぐための服だろうに。
「ま、まぁいいわ……。ほら、行くわよ」
「お、おう」
人が多いからだろうか、俺の手を掴んでずんずん進んでいく。
そんなエレナは暑いからだろうか。顔が真っ赤になっていた。
「波の出るプールか」
「もし、流されそうになったら捕まるからね?」
「え?」
「ね?」
「お、おう……」
なんかよく分からない圧があった。
そして、中へ入ろうとすると、ティナグループの一人の柿沼さんが流されて来た。
そのまま俺たちの足元に引っかかった。
「だ、大丈夫ですか?」
「うん。ちょっと、波の出るところの構造が気になって……」
「そ、そうですか」
額につけたゴーグルがなぜか、エンジニアっぽく見えた。
髪の毛も両方ツノにしていたしな。
ただ、恋愛には縁遠そうだなと思ってしまった。
「不思議な人ね」
「ホントにな」
そして、奥へ行くほど、波の圧がすごい。
エレナは手を掴むんじゃなくて、俺の体にしがみついてきた。
動きづらくてかなわないが、ここで俺が体勢を崩すと危ないからな。なんとか耐える。
だが、なぜだろうか。周りから怨嗟の視線をぶつけられるのは。
波の衝撃より、そっちの衝撃の方が強かった。
「えへへ……」
この状況で楽しめるエレナはすごいなぁ……。
そして、しばらくして波が止まった。
おそらく休憩時間なんだろう。
浅瀬の方へ戻ると、仰向けで柿沼さんが寝ていた。
「負けたわ」
「そ、そうですか」
まぁ、どこか満足そうにしているしいいか。
しかし、エレナは離れないようにしているからなのか、ずっと手を繋いでいる。
「エレナ大丈夫か?」
「え、何が?」
「顔赤いから、日差しも強いし、熱中症になってないか?」
「だ、大丈夫よ! 問題ないわ」
なぜか、そう言って手を離したエレナは、ずんずんと先へ行ってしまった。
「おい、離れると危ないぞ」
「じゃーあー、捕まえてごらんなさい」
そう言って軽く舌を出して早歩きで行ってしまった。
走らないのは偉いな、と思いながら俺も後をついて行った。
しかし、意外とエレナの歩く速度が速い。
なんだかんだいって、スタイルはいいからな。
俺と違って足のコンパスが長いから、本気出したエレナにどんどん離されていく。
そして、そのまま階段を登っていく。
気がつけば、スライダーのてっぺんにいた。
エレナ高いところ好きだって聞いてたしな。
「おやおや、ティナ殿の友人の亨殿とその彼女さんではないですか」
そこには、ティナの友人の桃原さんがいた。
なんでこんな、いかにもな喋り方なんだ……。
「あ、はい。亨でいいですよ」
「え、エレナでしゅ……」
噛んだので、エレナの方を見ると、顔が真っ赤になって、下を向いていた。
大丈夫か? ホント熱中症じゃないよな?
「おほほほほほ。ご馳走様です。あっしは、桃原紗季って言います。よしなに」
「は、はうぅ……」
エレナが両手を頬に当てて、クネクネと動いていた。
マジで、大丈夫だろうか?
「エレナ殿は大変であるな」
「だよな。大丈夫か? 熱あるか? だるくないか? 降りたら冷たいもの買ってやるからな」
「ばか……」
「もう、これ以上は食べられませんな」
そう言うくせに、お腹ではなく、口元を覆っていた。




