30 プールに行く前に
折角、スイカのビーチボールを買ったんだ。
プールへ行こうというのは自然の流れだろう。
そして、そんな情報は筒抜けになっているというもの。
朝から、うちには妹の環と操と萌歌さんがいた。
環と操は涼しげな格好だが、萌歌さんは肩出しのワンピースだ。
「なんでいるんだ?」
「エレナに連絡貰ったから」
「そうなんだ」
そんなエレナはソファの上で棒アイスを食べている。
既に三本目だ。
「えっと、萌歌さんも?」
「え、ええ……まぁ」
なんでそんなうろたえる必要があるんだ?
「で、アンジュちゃんは?」
「先に行ってる」
「そ、そうなんだ……」
「で、どこなの?」
「分かんない」
「え?」
「プール行くって話したら、先に行っちゃった」
「すごい行動力ね」
「な」
「スマホにGPSつけたらいいんじゃないですか?」
「それがですね、毎回オフになっちゃうんですよ」
不思議なんだよな。あれ毎回オンにしてるのに、オフになっちゃうんだよ。
ということで、早速アンジュから来たヒントの画像を見る。
この辺だとサ○ーランドかよ○うりランドだろう。
さて、どっちかな。
「んー? これ森の中?」
「二枚目来たわよ」
そこには、寄り添う○カチュウと○ーブイを背に、アンジュが写っていた。
もしかして、目的ってこっちなんじゃないだろうか?
しかし、今までと違って、誰かが撮っている。一体誰だ?
親切な一般人だろうか?
その後も、何枚も連投されてきた。
場所は分かるんだが、この写真を撮っている人物の方が気になってきた。
そして、多分これがラストなのであろう。
そこには栗栖ティナが写っていた。
これも自撮りじゃないから、複数人いるのだろうか。
何はともあれ、急いで行かないといけない。
ということで、やって来ました。
プールの前にこっちへ来るとは思わなかった。
早速チケットを買って、中に入ると、仁王立ちしたティナとアンジュがいた。
どうしてアンジュも仁王立ちしているのかは分からないが、堂に入っている。
その周りにはティナの友人であろうか、随分とオタクっぽさのある友人が三人いた。
ティナ自体、結構目を引く見た目をしているのに、ほかの三人もなかなかに個性的だ。
一人目は、ゆるくウェーブした髪をお団子にまとめ、眼鏡をかけた女性だ。こんな暑い日に、わざわざ白衣まで羽織っている。確か桃原とか言ってたかな。
二人目は、黒髪パッツンで、こんな場所に似つかわしくないエンジニアベストを着た女性だ。柿沼とか言ってたかな。
三人目は、オーバーサイズのトレーナーとハーフパンツで、髪の毛をツインテールにした女性だ。柚木と言ったかな?
三人とも美人なのに、特徴的すぎる格好だ。
「ちゃんと見てないとダメじゃない」
「すまん」
「おにーちゃ、わるくない」
アンジュが駆け寄って、俺の足にしがみついた。
それを見て、ティナは嘆息して肩を竦めた。
「事情は知らないけど、ちゃんと見てなさいよ」
「あ、ああ」
そんな様子を見て、エレナ、環、操、萌歌さんが苦い顔をしていた。
「くっ……、また亨を狙う女が」
「どうしておにいの近くにはこんなに女の人が増えるの?」
「というか、お兄ちゃんがしっかり言えばいいだけの話なんだけどね」
「ライバルが多い……」
全部聞こえているぞ。そもそもティナたち四人とは、ほぼ初対面だ。
それに、後ろの三人に至っては、俺など視界に入っていない。○ケモンしか見ていないぞ?
というか、ライバル以前にそんな相手はいないんだが?
「で、あなたこれからどうすんの?」
すごい冷めた感じで、ティナが聞いてきた。
「え? 家族でプールだけど」
「あら、奇遇ね。わたしたちもなの」
「え?」
「何よ。ダメなの?」
「いや、別にいいんだけど……」
「じゃあいいじゃない。何かあるの?」
「折角チケット買ったんだから、少し見て回りたい」
「……………………」
何でそんな目で見てくるんだよ。他の三人だって、気にせずに奥へ行っちゃったぞ?
そんなやりとりをしていたからなのか、エレナたちも奥の方へ我先に行ってしまった。
俺とティナで顔を見合わせてしまった。
「まぁいいわ。わたしももう少し見たいと思ってたし」
「そ、そうか」
「それに、わたしもその子、気になるし」
「え?」
そういえば、ずっとアンジュがしがみついたままだった。
そんなアンジュは俺から離れて、ティナを見上げた。
ティナが首を傾げると、アンジュはとんでもないことを口にした。
「おねーしゃま」
「ちょ!」
「あら」
「おま、なんてこと教えるんだ」
「わたしじゃないわよ」
エレナが聞いたら、怒り狂いそうだ。
そうして、しばらく園内を見て回ったのだが、エレナ、環、操は意外と社交性があるのか、あの風変わりな三人と打ち解けていた。
そんな様子をティナも驚いて見ていた。
「意外だわ」
そう言えば、アイリさんどこ行ったんだろうな。
俺はそう思いながら、外に出ると、アイリさんはベンチに座ってソフトクリームを食べていた。
お酒を飲んでいないだけ偉いと褒めるべきだろうか?
「あ、ずるい!」
早速エレナが反応したが、アイリさんは涼やかだ。
「お金あげるから、自分で買って来なさい」
「うん!」
お金もらって、走って売店へと向かった。
来年高校生なのに、あれでいいんだろうか?
現役高校生の環と来年高校生の操も俺に向かって、両手を差し出していた。




