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メリーさん家の三姉妹  作者: 玉名 くじら


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27 また連れてってあげる


 「え、ここ!?」

 「おー」

 「アイリさん、ここで合ってます?」

 「合ってるわよ。たまたま一部屋残ってたのよ。ラッキーよね」

 「お姉ちゃん…………好き……」

 「アイリさん……いえ、アイリ様。一生着いていきます!」

 「もう大げさねぇ。ほらほら入りましょう」

 エレナと操が、本日泊まる旅館を見て、はしゃいでいた。

 文字通りはしゃいでいる。二人とも手を握って飛び跳ねて、くるくる回っている。

 アンジュもその真ん中で両手を上げて飛び跳ねている。


 よくもまぁ、こんな高価そうな旅館を……。

 アイリさんは俺の方を見てドヤ顔をする。

 今回はそのままいい気分にしておいてあげよう。

 俺は深く頭を下げた。

 「ちょ、やめてよ、もう。そこまで天狗になってないわよ」

 「あ、そうなんですね。すいません」

 「そうよ。あいつみたいにそこまで傲慢じゃないもの」

 どうやら天狗の知り合いもいるみたいだ。


 中へ入るが、本当にここで合っているのか。ちゃんと予約が取れているのか半信半疑だった。

 部屋の鍵を渡されるその直前まで俺はずっと疑っていた。

 だが、やっぱりスーツを着ていて、お酒を飲んでいない時のアイリさんはちゃんとしているらしい。


 「ごめんなさい」

 部屋に入り、その広さと豪華さを目の当たりにして、良心の呵責に耐えかねて、謝ってしまった。

 「な、何よ。どうしたのよ」

 「いや、こんなすごい部屋を」

 「気にしないで。あたし稼いでるし、このくらいは余裕よ」

 俺の学費までポーンと出しちゃうくらいだしな。…………あれ、俺本当にヒモなんじゃないか?


 そんな俺のダウナーな気分を余所に、エレナとアンジュと操はずっと興奮しっぱなしだった。

 部屋の隅から隅まで見て興奮していた。

 そりゃあ、こんな部屋見せられたらそうなるよな。


 「あ、そういえば、仕事はもう大丈夫なんですか?」

 「大丈夫大丈夫。むしろあたし一人だけだったからスムーズに終わってね。帰る前にボートレースか競輪見に行こうと思ってたところで電話かかってきたから、丁度良かったわ」

 「そ、そうですか」

 その趣味さえなければ完璧なのにな。

 俺も知らなかったんだけど、アイリさん、営業部長代理なんだってな。すげえや!

 そりゃあ、部屋にも半露天風呂がついてるわけだ。


 温泉に入り、夕食をいただく。

 「あたしお姉ちゃんの妹で良かった」

 「アンジュもよかったー」

 まぁ、こんな豪華すぎる料理を見たら、そう言うよな。


 なぜか、操は恐縮しっぱなしだった。

 「あら、操ちゃんどうしたの?」

 「いや、こんな豪華なのいいのかなって」

 「気にしないで。ほら、冷めちゃうわよ」

 「は、はい。ありがとうございます」

 「亨ちゃんもご苦労様。ほら」

 「あっはい…………って、ナチュラルにお酒を飲ませようとするな」

 自然な流れで徳利を出すから、俺もお猪口を持ちかけてしまった。危ない危ない。


 「あたしだけ飲むのもなんか違うかなって」

 「俺まだ未成年ですよ?」

 「あ、そうだったわ」

 そんなに大人びて見えるだろうか?


 そして、豪華すぎる夕食を終えると、エレナと操は半露天風呂に入り浸っていた。

 アイリさんはビール缶を二本立て続けに開けていた。これは良くない。

 アンジュは俺とテレビを見ていた。

 流石に今日は移動しないだろう。

 それにご当地の番組って気になるもんな。


 そして、俺が半露天風呂に入れるようになるのは、日を跨ぐ直前だった。


 翌日、俺と操とエレナがアイリさんに深々と頭を下げる。

 多分、自分の力では泊まれないであろう旅館だ。

 「ちょ、やめてよ。そんなに喜んでくれたんなら、また連れてってあげるから。ね、アンジュ?」

 「おー」

 アンジュは分かってませんよ、アイリさん。


 旅館を出て、昨日行けなかった場所へ向かう。

 多分だけど、アンジュの本当の目的はここだったんじゃないかと疑ってる。


 アンジュとエレナがカゴいっぱいに駄菓子を入れていた。

 アンジュが両手でカゴを差し出すもんだから、受け取って空のカゴを渡してしまった。

 ダッシュでお菓子コーナーに戻っていった。


 「はい」

 「いっぱい買ったな」

 「いや、なんでアンジュにカゴを渡したのに、わたしにはくれないのよ」

 「十分だろ?」

 「まだよ」

 そう言って、二カゴ持って戻っていった。


 「エレナってなんであんなに食べて太らないの?」

 操が若干引きながらそんなことを言うが、俺も言われるまで気づかなかったよ。

 しかし、アイリさん。射的上手ですね。全弾命中じゃないですか。


 その次に寄ったところでは、鉄道模型がありアイリさんとアンジュがこれまた齧りつくようにハマっていた。

 やはり旅行好きだと、鉄道とか好きなんだろうか。

 エレナと操は終始、温泉むすめの看板を撮っていた。


 そして、からくり時計を見に行った。

 時間が来ると、中から人形が出てきた。

 これはすごいのだが、なかなかにシュールだ。


 アンジュだけが「おー! おー!」と楽しんでいる。

 やたら静かだなと思ったら、操は動画を撮っていた。

 アイリさんとエレナは、呆然と見ていた。


 「夏休みの宿題あれでいいんじゃない?」

 「お姉ちゃん、中学の宿題で工作はないわよ」

 「あら、そうなの?」

 もう夏休みの話している。少し気が早いんじゃないだろうか。

 しかし、これ初めての家族旅行なんじゃないだろうか。

 そう思った時、アンジュが振り返り、少し意味深な微笑みを向けていた。


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