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メリーさん家の三姉妹  作者: 玉名 くじら


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26/98

26 ぽかぽか


 空港から、目的の公園は思いの外近かった。

 一時間半ほどで着いた。

 逆に岡山市内からの方が遠かったかもしれない。

 アイリさんには悪いことしたな。


 目的の公園へ着くが、駐車スペースがない。

 遠くの駐車場へ停めて歩いた。

 今回は、アイリさんも乗るだろうということで、三列シートのミニバンを借りたのだが、いつもより車の感覚が分かりづらくて大変だった。


 「あ、お兄ちゃん、アンジュちゃんいないよ?」

 「お姉ちゃんもいないわよ」

 先に降ろしてと言ったエレナと操が公園内で探したのだろう。

 だが、アンジュもアイリさんもいなかった。


 しかし、なぜに梅干し。

 まぁ、見えなくもない……か。

 アイリさんにLINEを送る。

 『←着きました』

 待つこと数分。


 『遅かったわね。今、足湯にいるのよ→』

 足湯……。

 場所が分からないので、電話を掛けた。


 「足湯ってどこです?」

 『もうせっかちね。そこの公園からびゅーんって東に行ったところよ』

 なるほど。分からん。

 仕方ない。地図アプリで調べる。

 街の真ん中辺りにあるので、三人で向かおうとしたのだが……。


 エレナが梅干しを食べようとポーズを取っているのを、操がスマホで撮っていた。

 その後、交代して撮ったりと楽しんでいた。

 ほんと、仲良いよなこの二人。波長が合うんだろうか?


 車を移動し、目的の足湯に着くと、アイリさんとアンジュが仲良く足湯をしていた。

 「ほらほら、みんなも入ったら?」

 随分と長いこと入っていたのか、顔は朱く、肌に汗が滲んでいた。


 確か、スーツケースの中にタオルあったよな。

 入る前にそれを取り出して、足湯へと向かうと、アイリさんがニッコリしながら、手を伸ばした。

 「流石、空気読める男は違うわね」

 やっぱり、拭くもの用意してなかったんだな。


 「お兄ちゃん……」「亨……」

 なんでそんな生暖かい目で見るんだよ。

 お前らも何も持たずに足入れてるけど、どうするつもりだったんだ?


 「やっぱり温泉はいいわね」

 アイリさんがリラックスしながら言う。

 「足湯でも結構ポカポカしますよね」

 「そうね」

 「ぽかぽかー」

 アンジュの頭をポンポンと撫でると、俺に寄りかかって猫のようにスリスリしてきた。


 「亨……」

 足湯に入っているのに、なんでこんな寒い思いしなきゃいけないんだ。

 凍てつくような視線と、責めるような視線が俺を貫く。


 「亨ちゃんは無自覚たらしよねぇ」

 とんでもないことを言うアイリさん。

 一体俺のどこが『無自覚たらし』だと言うのか……。


 だが、そんなアイリさんにも『凍てつく波動』が波及したのだろう。ブルブルと震えている。

 「そ、そうだわ、温泉! 旅館取っておいたわよ」

 その瞬間、俺に向けられていた冬の寒さは、春の陽だまりのように変わった。

 まぁ、女子は温泉好きだもんな。


 「でも、その前に観光しましょうか」

 アイリさんが主導権を握っていく。

 やはり、スーツ姿の時は仕事モードが含まれるらしい。


 でも、思いっきり、スーツのパンツを持ち上げているのでシワができている。

 帰ったらアイロンがけは必須だな。

 普段は、雑に縛ったポニーテールとつんつるてんのジャージだからな。靴下も互い違い。目やにもついている。

 本当に同一人物なのか毎回疑っている。


 どこの旅館を予約したのかは分からないが、観光してまわる。

 アイリさんは昭和レトロなものに惹かれたのか、昔の映画ポスターとかパチンコに目を奪われていた。

 操とアンジュもそれなりに興味を持っていたが、エレナは退屈そうだった。

 「エレナはあんまりこういうの興味ないんだな」

 「まぁ、実家とかその周りにいっぱいあったから」

 メリーさん家の実家がどんなのか気になるわ。


 そして次は、オルゴール館へ向かった。

 アイリさんは分かった振りして、うんうん頷いていたが、アンジュは目を閉じて、静かに音色を聞いていた。

 確かにこの音色は筆舌に尽くし難い。だが、アンジュには一番届いたのだろう。

 しばらくは動こうとはしなかった。


 「エレナはやっぱり興味ない感じ?」

 今度は操がエレナに聞いた。

 操も指を振りながら堪能していたしな。


 「そんなことないわよ。まぁ、いいとは思うわ」

 だが、その後にあったオルゴールのコンサートを聴いてからエレナは興奮気味にあれこれ語ってきた。

 「あれ、凄くない!? わたし感動しちゃった」

 「おとがね、いっぱいできれー」

 アンジュも両手を上げて、精一杯語ってくれた。

 操と顔を見合わせて苦笑してしまった。


 アイリさんはといえば、ちょっとびっくりしてしまった。感動したのか、眦を拭っていた。

 珍しいこともあるもんだと思いながら、意外と三姉妹とも感性は同じなのかもしれないと思った。


 そして、奥にある木のおもちゃやボードゲームを見ると、目の色を変えたアイリさんとエレナが俺をひっぱる。

 やじろべえみたいになった俺は、言われるがまま、みんなとしばらくそのまま遊んだのだった。

 そして、そこを出る頃には薄暗くなっていた。


 「ちょっと遊び過ぎたわね」

 ツヤツヤの肌をしたアイリさんが言う。

 足湯入っていたときよりツヤツヤしている。

 「たのしかったー」

 「よかったな」

 「うん!」

 アンジュはまだまだ遊び盛りだからな。二つおもちゃを買った。


 多分だけど、エレナの方がたくさん遊んでいる絵しか浮かばないのはなんでなんだろうな。

 操も写真が増えて満足らしい。

 思い出を集めるのが好きなんだろう。

 そうして、まずはアイリさんが取ったと言う旅館へと向かった。


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