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メリーさん家の三姉妹  作者: 玉名 くじら


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21/104

21 おっきなイカさん→


 ここ最近、うちの妹達がよく来る。

 もちろん会いに来るのはアンジュになんだけど。

 まぁ、アンジュかわいいしな。


 今日は休日だが、塾には行かないらしい。

 まぁ、前からそんなマメに行ってなかったけど、堂々と行かないと宣言するとは思わなかった。

 操が来るまで、エレナはソファの上で二度寝しようとしていたくらいだ。

 操が来て、速攻で起き上がったが、髪の毛がところどころ跳ねていた。


 「亨ー、直してー」

 「はいはい。分かったから」

 「お兄ちゃん、お母さんだね……」

 操が苦笑いをしていたが、これがここでの通常だ。

 そんな下の妹である操は、エレナとは違う中学なのだが、塾が一緒で、話も合うとのことで、ここ最近はほぼ毎日来ている。


 なんで操がここ最近、ほぼ毎日来ているのかというと、以前環と一緒に香川でうどんと骨付鳥を食べたからだ。

 そして、環は速攻で操にバラした。


 そんな訳で、アンジュが転移するところと、転移先でグルメが食べたいと言うことで、こうしてエレナと一緒にスマホの画像を見せている。

 エレナは完全に旅行気分で見せてるな。


 だが、アンジュは、誰かが目を離した隙にしか転移しないのだ。

 それに、アンジュは別に食べ物が食べたくて転移してるんじゃない。

 興味が出たものに惹かれているだけなんだ。


 ただ、その全てに転移するかといえば違うから、その法則が分からなくて困っている。

 分かれば、もう少しやりようがあると言うもので。

 だから、画像を見せたところで意味はないんだ。

 「アンジュちゃん、これはどう?」

 「アンジュ、これなんて美味しそうじゃない?」

 うどん、そば、ラーメン、ステーキ、寿司、ジンギスカン、パフェ、かき氷といろんな画像を見せていたが、「おー」と、目をキラキラさせるだけだった。


 そんな操は、エレナとスマホを交互に見た後、何かを話し始めた。

 アンジュはその全部に大きく頷いていた。

 その仕草がとてもかわいい。

 まぁ、あの調子なら大丈夫だろう。


 なので、俺は洗濯物を干すことにした。

 まさか、二回も洗濯機を回すことになるとは思わなかった。

 何が悲しくて、休日の朝から他人の洗濯物を干さなきゃならないんだ。


 まぁ、アイリさんとエレナにやらせると、とんでもない干し方するからな。

 エレナなんて、シャツを肩と裾を止めるとか、どうやったらそんな干し方になるのか、本当に教えて欲しい。

 しかし、アイリさんよ……、穴の空いたストッキングばかりなのはどうしてなんですかね……。


 干し終えて、カゴを持って中へ入ると、アンジュも一緒にスマホを覗いていた。

 さっきよりアンジュの好奇心が増している気がする。


 「これなにー」

 「これはプラモニュメントね」

 「これはー」

 「スイカのオブジェね」

 「これはー」

 「どこでもドアね」

 どうやら今度は、一緒にオブジェを見ているらしい。


 操は変なもの集める癖あるんだよな。

 変わったものは撮るし、なんならそんなのばっかり検索している。


 「ねー亨、お腹すいた。なんかお菓子ない?」

 相変わらずナチュラルにお菓子を要求してくるな。

 まぁ、用意してあるんだけどさ。


 俺はキッチンでジュースとケーキを用意して戻ると、エレナと操が慌てていた。

 操は分かるが、なんでエレナまで。


 「どうした?」

 「あ、お兄ちゃん、目を離したすきにいなくなっちゃったの。もしかして……」

 「そうだな。で、なんでエレナはそんなに慌ててるんだ?」 

 「ケーキ…………」

 「帰ってからな」

 「うん……」

 急ぎ行かないといけないからな。


 「で、なんの画像見てたんだ?」

 「分かんない……」

 操はただただ困惑していた。まぁ、実際いなくなったらそりゃあ狼狽えるよな。


 それに、エレナはケーキで困惑していたとは思えない。

 普通なら食べてから行こうと言うはずだ。

 それが、心ここに在らずといった様子。


 「操、借りるな」

 操にスマホを借りて、画像をスワイプしていく。

 よくもまあ、こんなにオブジェの画像を集めたなぁ。

 これ全部トリガーになる可能性があるが……。

 さて、どれに一番惹かれたのだろうか。


 見ている最中に、俺のスマホが鳴った。

 今日はLINEでメッセージが来たようだ。

 『おっきなイカさん→』

 『←分かった。危ないことしないで待ってるんだぞ』

 『分かったー→』


 さて、場所は分かった。

 スマホで時間を調べる。今回は五時間弱かかるな。

 早速移動開始だ。


 「待って」「待ってよ」

 俺が出かけようとしたところで、止められた。

 「なんだ?」

 「え、どこ?」

 操が不安げな顔で聞いてきた。


 「能登半島だな。おっきなイカのオブジェがあるから」

 それに、前に環も言っていた。

 恐らくだが、ずっと頭の中にあったのだろう。


 「え、ホントに行くの?」

 意外なことに、いつも行くと言うエレナが及び腰だ。どうしたんだろうか?


 「どうした?」

 「その、襲われない?」

 「は?」「へ?」

 「なんでそんな顔するのよ。いや、ほら、大きなイカだと捕らえられて……」

 可愛いところもあるもんだ。


 「な、なんでそんなニヤニヤしてんのよ」

 「いや、かわいいなって」

 「うん。エレナ、そういう気持ちずっと持っててね」

 「???」


 まさか、大きなイカに捕まると思ってたなんて、そんなメルヘン思考なところ嫌いじゃない。

 あとで、そんな感じの絵本を見つけて買ってやろう。きっと喜ぶはずだ。


 ということで来ましたよ、金沢駅。

 めっちゃかっこいいよな、この鼓門。

 しばらく見ていたいが、先にアンジュを迎えに行くのが先決だ。

 そして、いつものようにレンタカーを借りると、操がなんとも言えない顔をしていた。


 「どうした?」

 「手慣れてない?」

 「よく言われる」

 「そうなんだ……」

 エレナなんてもう助手席に乗っているからな。


 「あっ、ずるい」

 「ふふん」

 「おい、なんで運転席に乗るんだよ」

 「いや、わたしも前がいいなって」

 操のアホ毛がピンと立った。


 「運転出来ないだろ」

 「オートマだからいけるかなって」

 「免許ないだろ」

 「そうでした」

 どこまで本気か分からない。おでこをペシッと叩いて後ろに乗り込む操。

 だが、アホ毛がシュンと萎れていた。

 表情は明るいが、アホ毛は正直だ。


 レンタカー屋さんの人は、終始不安そうな顔をしている。

 すごく申し訳ない気持ちになる。


 「じゃあ、行くぞ」

 「うん」「はーい」

 走り始めて数分。駅で買ったお菓子をエレナが食べ始める。


 「ねぇ、エレナ」

 「なぁに?」

 「あんなに駅弁食べたのによく入るね」

 「操、そこじゃない」

 「え?」

 そんな感じで一路能登半島を目指す。


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