とある語り部の話
よお、また会ったな。
ん? あなた誰って……? ……そうか。よかったなあ!
待て待て。怪しい奴じゃないって!
あー、そうだな……オレは昔、キミが覚えてないくらいの頃に一度話したことがあってな。
同い年くらいだろって……?
……まあそう思う奴もいるよな。うん。いいんだ。
言ったとおり、オレは怪しい奴じゃない。自分から声をかけたんだ。怪しかったら、そんなことしないだろ? 納得した? ……それはそれで心配になるな。
そんで? こんなところで何してるんだい、お嬢さん。
人を待ってる? ははっ、本当に待ち人が好きだな。あ、いやこっちの話。
オレ? オレは、そうだな……。やっと、今回は送れそうなんだ。
なにを、って……全部、いや。オレの人生を、かな……?
待て! 変な勧誘じゃないって! 話! 話をしよう! ……ったく、今回のは随分疑り深いな。いや、なんでもない。
オレはね、ある伝承が本当だったのかを見届けたくてこの国に来たんだ。
そう。あの『ハトレアのしずく』の話。お嬢さんも知ってるだろ? この辺りじゃよく聞くはずだぜ。びっくりしたよ、『封印の塔』なんてものが出来てるんだから。
ん? 昔からあった? ああ、そうだよな。そっか……。
お嬢さんはあの物語、どう思う?
あの少年や……封印された竜とその少女は、あれで、良かったと思うか……?
痛って! なに、なにす……泣いてねぇよ!
あのなあ、オレは感傷的にならないタイプなの。だからそんな……そんな苦しそうな顔しないでくれよ。頼むから。別に、思い出せないならそれでいいんだ。
あの日からずいぶん経ったから。それに、この後もたぶん、もう少し時間がかかるから。だからその先生の元にしばらくいた方がいい。今日のこともきっと忘れる。
いつか思い出せたときに聞かせてくれよ。さっきの答え。
それまで、オレは忘れないでいられるからさ。
どこ行くのって? もう少し、戦ってくる。自分自身とな。
それまで、「また」。




